女性差別とは、女性であることを理由に、権利、機会、待遇、社会参加などで不利益を受けることをいいます。明示的に女性を排除する扱いだけでなく、一見すると性別に中立な制度や慣行であっても、結果として女性に大きな不利益を与える場合があります。こうした差別は「間接差別」と呼ばれます。
1.女性差別の意味
女性差別は、性別に基づいて女性を不利に扱うことです。たとえば、女性であることを理由に採用や昇進で不利益を受けること、妊娠や出産を理由に退職を迫られること、家庭内の役割を一方的に女性に負わせること、政治や意思決定の場から女性が排除されやすいことなどが含まれます。
女性差別には、直接差別と間接差別があります。直接差別は、「女性は採用しない」「女性は管理職にしない」といったように、性別を理由に明確に異なる扱いをする場合です。間接差別は、表面上は性別と関係のない条件であっても、実際には一方の性に不利益を及ぼし、合理的な理由がない場合を指します。
たとえば、業務上の必要性が乏しいにもかかわらず、募集や昇進の条件として身長、体重、体力、全国転勤の経験などを求めると、女性が結果的に排除されやすくなることがあります。本人の能力や職務内容と関係の薄い条件が、不平等を温存する仕組みとして働く場合、単なる個別の不利益ではなく、構造的な差別として考える必要があります。
2.制度・法律との関係
日本国憲法第14条は、法の下の平等を定め、性別による差別を禁止しています。男女共同参画社会基本法は、男女の個人としての尊厳が重んじられること、男女が性別による差別的取扱いを受けないこと、個人として能力を発揮する機会が確保されることを基本理念に掲げています。
雇用分野では、男女雇用機会均等法が、募集・採用、配置、昇進、教育訓練、福利厚生、定年・退職・解雇などについて、性別を理由とする差別的取扱いを禁止しています。同法は、厚生労働省令で定める一定の間接差別についても、合理的な理由がない場合に禁止しています。
女性差別に関する国際的な基準としては、女子差別撤廃条約があります。同条約は、女性に対するあらゆる差別の撤廃を基本理念とし、政治的・公的活動、教育、雇用、保健、経済的・社会的活動、家庭生活など幅広い分野での平等を求めています。日本は1985年に同条約を締結しました。
女性差別への対応は、雇用法制だけで完結するものではありません。配偶者暴力防止法、困難な問題を抱える女性への支援に関する法律、育児・介護休業法、女性活躍推進法なども、女性が置かれやすい不利益や困難に対応する制度として関係します。
3.人権上の論点
女性差別の人権上の論点は、女性が個人として尊重されず、性別によって役割や生き方を制限される点にあります。差別は、明確な排除や侮辱として現れるだけではありません。「女性は補助的な仕事に向いている」「育児は母親が中心に担うべきだ」「女性は責任ある仕事を続けにくい」といった固定観念が、採用、評価、昇進、賃金、家庭内役割、社会参加に影響を与えることがあります。
間接差別が問題になるのは、不利益が見えにくいからです。制度や条件が形式上は同じであっても、過去の慣行、家事・育児負担の偏り、職場文化、長時間労働を前提にした評価制度などが重なると、女性が能力を発揮しにくい状況が生まれます。この場合、単に「本人の選択」や「努力不足」と見るだけでは、差別の構造を見落とすことになります。
女性差別は、女性だけの問題ではありません。性別によって役割を固定する社会では、男性も育児や介護に関わりにくくなり、性的少数者も既存の性別規範から外れる存在として排除されやすくなります。女性差別をなくすことは、性別にかかわらず、誰もが能力、意思、生活状況に応じて学び、働き、社会に参加できる条件を整えることにつながります。