子どもの権利とは、子どもが一人の人間として尊重され、安全に育ち、学び、休み、自分に関わることについて意見を表すための権利をいいます。子どもは保護される存在であると同時に、権利を持つ主体でもあります。子どもの最善の利益や意見表明権は、子どもの権利を考えるうえで中心となる考え方です。
1.子どもの権利の意味
子どもの権利は、子どもが健康に生き、安心して成長し、教育を受け、遊び、休み、暴力や差別から守られ、自分に関わることについて意見を表すための権利です。子どもは大人に比べて生活上の力が弱く、家庭、学校、施設、地域、インターネット上で不利益を受けても、自分だけで状況を変えることが難しい場合があります。そのため、子どもには発達段階に応じた特別な保護と支援が必要になります。
ただし、子どもの権利は、子どもを単に「守られる対象」として扱うだけの考え方ではありません。子ども自身の意思、感じ方、考え方を尊重し、年齢や発達の程度に応じて社会の中で意見を述べ、参加できる存在として扱うことが含まれます。
子どもの最善の利益とは、子どもに関することを決めるときに、その子どもにとって何が最もよいかを第一に考える原則です。大人、学校、行政、裁判所、福祉機関などが子どもに関わる判断をするとき、単に大人側の都合や制度運用のしやすさを優先するのではなく、子どもの安全、発達、生活、意思を踏まえる必要があります。
意見表明権とは、子どもが自分に関係する事柄について自由に意見を表し、その意見が年齢や成熟度に応じて考慮される権利です。これは、大人の決定に子どもが必ず従うだけの存在ではないことを示しています。家庭、学校、児童福祉、医療、司法、行政手続などで、子どもの声をどのように聴き、どのように反映するかが課題になります。
2.制度・法律との関係
子どもの権利に関する国際的な基準として、児童の権利に関する条約があります。一般には子どもの権利条約と呼ばれます。この条約は、18歳未満の子どもを権利の主体として位置づけ、差別の禁止、子どもの最善の利益、生命・生存・発達への権利、意見表明権を基本的な原則として整理しています。
日本では、1994年に子どもの権利条約を締結しました。国内法では、こども基本法が子どもの権利を考えるうえで重要です。同法は、すべてのこどもについて、個人として尊重され、基本的人権が保障され、差別的取扱いを受けないようにすることを基本理念に掲げています。年齢や発達の程度に応じて、自分に直接関係するすべての事項について意見を表明する機会が確保されることも定めています。
児童虐待防止法、児童福祉法、教育基本法、学校教育法、いじめ防止対策推進法、少年法、民法の親権に関する規定なども、子どもの権利と関係します。虐待、いじめ、不登校、体罰、貧困、障害、外国につながる子ども、社会的養護、ヤングケアラーなど、子どもをめぐる課題は複数の制度にまたがります。
子どもの権利を制度として考える場合、単に法律の名前を知るだけでは足りません。相談窓口、学校での対応、児童相談所、自治体の子ども施策、家庭裁判所、福祉サービス、医療機関などが、子どもの安全と意思をどのように守るかが実際の課題になります。
3.人権上の論点
子どもの権利の人権上の論点は、子どもを大人の所有物や管理対象として扱わない点にあります。しつけ、教育、保護という言葉のもとで、暴力、暴言、過度な管理、意見の無視、進路の押しつけ、プライバシー侵害が行われることがあります。子どもは未成熟であるからこそ支援を受ける必要がありますが、そのことは、子どもの人格や意思を軽く扱ってよい理由にはなりません。
子どもの意見を聴くことは、単に希望を尋ねることではありません。子どもが安心して話せる環境をつくり、話したことで不利益を受けないようにし、意見をどのように考慮したのかを説明することまで含みます。虐待、いじめ、離婚後の親子関係、施設入所、医療、学校生活などでは、子どもの声が形式的に扱われると、本人の安全や納得が損なわれる場合があります。
子どもの最善の利益も、大人が一方的に決めるものではありません。大人から見てよい選択に見えても、子ども本人の気持ち、生活環境、発達段階、きょうだい関係、学校や地域とのつながりを踏まえなければ、子どもの利益を十分に捉えられないことがあります。子どもの権利を守るには、保護と参加の両方を考える必要があります。
子どもの権利は、家庭だけで完結するものではありません。学校、行政、地域、医療、福祉、司法、インターネット空間がそれぞれ子どもの生活に関わっています。子どもが相談できる場所を持ち、暴力や差別から守られ、学びと休息を保障され、自分の意見を大切にされることが、子どもの権利を現実の生活の中で支える基礎になります。