子どもの貧困とは

子どもの貧困とは、子どもが生まれ育った家庭の経済状況や生活環境によって、食事、住まい、医療、教育、体験、進路、社会参加の機会が制限される状態をいいます。単に所得が少ないことだけでなく、学用品をそろえにくい、塾や習い事に行けない、進学をあきらめる、安心して過ごせる居場所がないといった不利益も含めて考える必要があります。

1.子どもの貧困の意味

子どもの貧困は、子ども本人の努力では変えにくい家庭環境によって、成長や学びの機会に差が生じる問題です。食事の回数や栄養が不十分になる、必要な衣服や学用品を用意できない、医療機関を受診しにくい、家庭学習の環境が整わない、進学や部活動、修学旅行などへの参加が難しくなる場合があります。

貧困には、絶対的貧困と相対的貧困があります。絶対的貧困は、生命や健康を維持するために必要な最低限の生活が困難な状態を指します。相対的貧困は、その社会の標準的な生活水準と比べて大きく下回る状態を指します。日本で子どもの貧困を語る場合、多くは相対的貧困が問題になります。

子どもの貧困は、見えにくいことがあります。制服や持ち物だけでは分からず、本人が恥ずかしさや家族への遠慮から困りごとを話さない場合もあります。保護者も、経済的困難を周囲に知られたくない、相談先が分からない、仕事や家事で時間がないといった事情を抱えることがあります。

貧困の連鎖とは、子どものころの経済的困難が、教育機会、進学、就職、所得、健康、人間関係に影響し、大人になってからも不利な状況が続きやすくなることをいいます。子どもの貧困対策は、現在の生活を支えるだけでなく、将来の選択肢を狭めないための取組でもあります。

2.制度・法律との関係

子どもの貧困に関係する法律として、「こどもの貧困の解消に向けた対策の推進に関する法律」があります。もともとは「子どもの貧困対策の推進に関する法律」として制定され、子どもの将来が生まれ育った環境によって左右されないよう、教育の機会均等や生活支援などを進めるための法律として位置づけられてきました。

現在のこども政策では、こども基本法に基づくこども大綱が重要です。こども大綱は、少子化社会対策、子ども・若者育成支援、子どもの貧困対策に関する大綱を一つに束ね、こども施策を総合的に進める枠組みです。子どもの貧困対策は、教育、福祉、雇用、住宅、医療、地域支援を横断する政策課題として扱われます。

具体的な支援には、児童手当、児童扶養手当、就学援助、高等教育の修学支援、生活保護、生活困窮者自立支援制度、ひとり親家庭への支援、子どもの学習・生活支援事業、こども食堂、フードバンク、地域の居場所づくりなどがあります。学校では、スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーが、家庭の困難や福祉制度への接続に関わる場合があります。

子どもの貧困対策では、保護者への支援も欠かせません。保護者の就労支援、職業訓練、養育費確保、相談支援、住宅支援、医療や福祉への接続が不十分なままでは、子どもの生活環境を安定させることが難しくなります。子ども本人への支援と家庭全体への支援を分けずに考える必要があります。

3.人権上の論点

子どもの貧困の人権上の論点は、生まれ育った家庭の経済状況によって、子どもの学び、健康、安全、体験、将来の選択肢が左右される点にあります。子どもは親の所得や雇用、家庭環境を選ぶことができません。それにもかかわらず、家庭の状況によって進学、交友関係、社会参加、自己肯定感に差が生じることは、子どもの権利の問題です。

教育格差は、子どもの貧困と深く関係します。学用品や教材を買えない、家庭で勉強する場所がない、塾や習い事に通えない、進学費用を心配して希望を下げるといったことは、学力だけでなく、将来の職業選択にも影響します。学校は、子どもの困難に気づきやすい場所である一方、費用負担や持ち物、行事、部活動を通じて格差が表れやすい場所でもあります。

子どもの貧困は、自己責任論で片づけるべきではありません。保護者の努力不足としてだけ見れば、低賃金、不安定雇用、ひとり親家庭の負担、病気や障害、DV、介護、地域の支援不足などの背景が見えなくなります。子ども本人が「家にお金がないこと」を恥ずかしく感じ、支援を求めにくくなることもあります。

子どもの貧困への対応では、食事や学習支援だけでなく、安心できる居場所、相談できる大人、医療や福祉への接続、進学や就労に関する情報提供が必要になります。こども食堂や地域の居場所は、食事の提供だけでなく、子どもや家庭の変化に気づく入口にもなります。子どもの貧困を人権課題として扱うには、子どもが現在を安心して過ごし、将来を選べる条件を整えることが中心になります。

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