児童労働とは

児童労働とは、子どもの教育、健康、安全、発達、尊厳を損なう労働を指します。すべての子どもの手伝いや就労が児童労働に当たるわけではありませんが、年齢にふさわしくない労働、危険な作業、長時間労働、学校に通う機会を奪う労働、搾取的な労働は、ビジネスと人権の分野で重大な人権リスクとして扱われます。

1.児童労働の意味

児童労働は、子どもが働くこと全般を一律に禁止する言葉ではありません。家庭での手伝い、短時間の安全な作業、教育や成長を妨げない範囲での経験などは、直ちに児童労働とされるものではありません。問題になるのは、子どもの心身の発達、教育、健康、安全、人格形成に害を及ぼす労働です。

たとえば、危険な機械を使う作業、有害物質を扱う作業、長時間の農作業や工場労働、深夜労働、重い荷物の運搬、性的搾取、債務労働、路上での危険な労働、学校に通えなくなる働き方などは、児童労働として問題になります。子どもが家庭の貧困を支えるために働かざるを得ない場合でも、それによって教育や発達の機会が奪われれば、人権上の重大な課題になります。

ビジネスと人権の文脈では、児童労働はサプライチェーン上の重要なリスクです。企業本体の職場では子どもを雇っていなくても、原材料調達先、農園、鉱山、縫製工場、家内労働、下請企業、非公式な作業場などで児童労働が起きている場合があります。企業は、自社の製品やサービスが児童労働と結び付いていないかを確認する必要があります。

2.制度・法律との関係

児童労働に関する中心的な国際基準は、ILOの最低年齢条約第138号と、最悪の形態の児童労働条約第182号です。第138号条約は、就業または労働への最低年齢を定め、児童労働の実効的な廃止を目指すものです。第182号条約は、奴隷制に類する慣行、児童の売買、債務奴隷、強制労働、武力紛争での使用、性的搾取、違法活動、危険有害労働など、最悪の形態の児童労働の撤廃を求めています。

ILO中核的労働基準では、児童労働の実効的な廃止が、労働における基本的原則及び権利の一つとされています。企業が人権方針や人権デュー・ディリジェンスを進める際には、児童労働の有無を確認することが不可欠です。国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」やOECD多国籍企業行動指針、ILO多国籍企業宣言も、企業が自社や取引関係を通じた人権への負の影響に対応することを求めています。

日本国内では、労働基準法が年少者の労働について規制を設けています。満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまでの児童を使用することは原則として禁止されており、年少者についても危険有害業務や深夜業などに制限があります。児童福祉、教育、労働安全衛生、職業紹介などの制度も、子どもを搾取的な労働から守るために関係します。

企業実務では、取引先の年齢確認、採用手続、派遣・請負の管理、下請先の労働実態、家内労働の有無、農林水産物や鉱物など原材料調達の状況を確認する必要があります。児童労働が疑われる場合、単に取引を打ち切るだけでは、子どもや家族の生活をさらに不安定にすることがあります。教育への復帰、生活支援、地域の支援機関との連携など、子どもの最善の利益を踏まえた是正が必要です。

3.人権上の論点

児童労働の人権上の論点は、子どもが教育を受け、遊び、休息し、安全に成長する機会を奪われる点にあります。子どもは安い労働力ではなく、保護され、発達を支えられるべき権利主体です。児童労働は、子どもの現在の生活だけでなく、将来の職業選択、健康、収入、社会参加にも長期的な影響を及ぼします。

児童労働は、貧困、教育へのアクセス不足、紛争、災害、差別、移住、家族の失業、社会保障の不足などと結び付いて起きます。そのため、企業が児童労働を発見した場合、単に「子どもを働かせない」と命じるだけでは十分ではありません。子どもが学校に戻れるか、家族が生活を維持できるか、安全な支援につながるかを考える必要があります。

サプライチェーンでは、児童労働が見えにくい場所で起きることがあります。一次取引先の工場では問題がなくても、二次・三次下請、農家、鉱山、家庭内作業、非公式な仲介業者を通じた労働で子どもが働いている場合があります。企業は、価格、納期、調達慣行が児童労働の温床になっていないかも点検する必要があります。

用語集で児童労働を扱う意義は、ビジネスと人権を、企業のコンプライアンスや評判管理ではなく、子どもの権利の問題として理解できるようにする点にあります。児童労働を防ぐ取組は、子どもの教育、健康、安全、尊厳を守るための取組であり、企業のサプライチェーン管理において避けて通れない課題です。

タイトルとURLをコピーしました