児童虐待とは

児童虐待とは、保護者が子どもに対して、身体的暴力、性的虐待、ネグレクト、心理的虐待などを行い、子どもの安全、成長、発達、尊厳を傷つける行為をいいます。しつけの名目で行われる暴力や暴言も、子どもの心身に有害な影響を与える場合には虐待に当たります。子どもの前で配偶者などに暴力をふるう面前DVも、心理的虐待として扱われます。

1.児童虐待の意味

児童虐待は、子どもを養育する立場にある保護者による不適切な関わりのうち、子どもの心身に重大な影響を及ぼす行為を指します。家庭の中で起きることが多く、外から見えにくいという特徴があります。子ども自身が被害を言葉にできなかったり、保護者をかばったり、相談するとさらに怒られるのではないかと不安を抱いたりする場合もあります。

児童虐待には、主に4つの類型があります。身体的虐待は、殴る、蹴る、投げ落とす、激しく揺さぶるなど、身体に外傷を生じさせるおそれのある行為です。性的虐待は、子どもにわいせつな行為をすることや、子どもにわいせつな行為をさせることです。

ネグレクトは、食事を十分に与えない、衣服や住環境を放置する、病気やけがをしても受診させない、長時間放置するなど、子どもに必要な養育を怠ることをいいます。心理的虐待は、著しい暴言、拒絶的な態度、きょうだい間での差別的扱い、子どもの前でのDVなど、子どもに強い心理的外傷を与える言動です。

面前DVは、子どもの前で配偶者や家族に暴力をふるうことを指します。子ども自身に直接暴力が向けられていなくても、家庭内で暴力を見聞きすることは、強い恐怖や不安を与えます。児童虐待を考える際には、子どもの身体に傷があるかどうかだけでなく、心の安全が守られているかを見る必要があります。

2.制度・法律との関係

児童虐待に関係する中心的な法律が、児童虐待の防止等に関する法律です。一般には児童虐待防止法と呼ばれます。同法は、児童虐待を、保護者がその監護する児童について行う身体的虐待、性的虐待、ネグレクト、心理的虐待として定義しています。

児童福祉法も重要です。児童相談所は、児童虐待の相談、調査、安全確認、一時保護、施設入所や里親委託などに関わります。市町村には、子どもと家庭に関する身近な相談支援の役割があり、こども家庭センターや要保護児童対策地域協議会を通じて、関係機関が情報を共有しながら支援を行います。

虐待を受けたと思われる子どもを発見した人には、通告の仕組みがあります。児童相談所虐待対応ダイヤル「189」は、虐待が疑われる場合に児童相談所につながる全国共通の番号です。通告は、虐待の事実を完全に証明してから行うものではありません。子どもの安全に不安がある場合、早い段階で相談につなげることが重要です。

学校、保育所、幼稚園、認定こども園、医療機関、警察、自治体の福祉部門なども、児童虐待の発見と支援に関わります。虐待対応では、保護者を責めるだけでは問題が解決しない場合があります。生活困窮、孤立、DV、精神的な不調、育児負担、障害、介護など、家庭が抱える複合的な困難に支援をつなげることも制度上の課題になります。

3.人権上の論点

児童虐待の人権上の論点は、子どもが家庭の中であっても、一人の権利主体として尊重されなければならない点にあります。保護者には子どもを養育する責任がありますが、そのことは、子どもの身体や心を傷つける権限を意味しません。しつけや教育の名目であっても、暴力、暴言、無視、過度な支配が子どもの尊厳を損なう場合、虐待として捉える必要があります。

子どもは、自分の生活環境を自分だけで選ぶことができません。虐待を受けても、逃げる場所、相談先、経済的な手段、法的な知識を持ちにくい立場にあります。そのため、虐待対応では、子どもの安全確保を最優先にしながら、子どもの意見や気持ちを聴くことが欠かせません。保護や支援を行う場合でも、子ども本人が置き去りにされれば、安心や回復につながりにくくなります。

児童虐待は、親子関係だけの問題として閉じ込めるべきではありません。貧困、孤立、地域とのつながりの弱さ、家庭内暴力、保護者の過重な負担、相談先の不足などが重なると、虐待のリスクは高まります。子どもを守るには、家庭を監視するだけでなく、保護者が早い段階で助けを求められる環境を整えることも必要です。

子どもの権利の視点では、虐待を受けた後の生活再建も重要です。一時保護、施設入所、里親委託、親子分離、家庭復帰などの判断は、子どもの安全、発達、学校生活、きょうだい関係、本人の意思を踏まえて行われる必要があります。児童虐待への対応は、被害を止めることに加えて、子どもが安心して育ち直せる環境をどう確保するかまで含む課題です。

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