1.愛媛県は11月18日に西条市、12月10日に宇和島市で人権啓発講座を開催し、犯罪被害者支援と里親制度を取り上げる。
2.犯罪被害者支援では、二次被害の防止と、2026年4月に始まった県の多機関連携支援体制が関係する。
3.里親制度では、子どもの最善の利益と意見表明を尊重し、里親家庭への継続的な支援を確保することが課題となる。

犯罪被害者支援と里親制度を東予・南予で学ぶ
愛媛県は2026年11月11日から12月10日までの「差別をなくする強調月間」に合わせ、東予・南予地区で人権啓発講座を開催する。犯罪被害者の二次被害防止と里親制度という異なる分野を取り上げ、支援を受ける当事者の権利について考える。
11月18日の東予地区では、西条市の愛媛県東予地方局で、公益社団法人被害者支援センターえひめの稲葉省三センター長が「被害者支援の現場から~二次被害を考えよう~」をテーマに講演する。
12月10日の南予地区では、宇和島市の愛媛県南予地方局で、NPO法人こどもリエゾンえひめの山内幸春副理事長が「里親制度と子どもリエゾン~つなぐ、愛ある未来を~」について講演する。
両講座とも午後1時30分から3時までで、参加費は無料、事前申込制。東予地区は11月11日、南予地区は12月3日が申し込み期限となっている。
犯罪後に生じる二次被害
犯罪被害者は、犯罪行為によって直接的な被害を受けるだけでなく、事件後の生活でも困難に直面する場合がある。
事件をきっかけに仕事を休まなければならなくなる、医療機関での治療が必要になる、住居を変更せざるを得なくなるなど、被害の影響は生活のさまざまな場面に及ぶ。
さらに、周囲の偏見や無理解、配慮を欠いた発言、インターネット上の誹謗中傷、過剰な取材などによって、新たな精神的苦痛を受ける場合がある。これが二次被害の問題である。
例えば、性犯罪の被害者に対して、被害当時の服装や行動に原因があったかのように発言すれば、被害者に犯罪の責任を負わせることにつながる。
被害者が事件の内容を周囲に知られたくないと考えている場合、本人の意思に反して情報が広められれば、プライバシーが侵害される可能性もある。
二次被害を防止するには、犯罪そのものへの対応に加え、事件後に被害者と接する人や組織の言動を改善する必要がある。
犯罪被害者等基本法が定める支援
2004年に制定された犯罪被害者等基本法は、犯罪被害者等の権利利益の保護を目的として、国や地方公共団体の責務などを定めている。
犯罪被害者支援は、捜査や裁判の過程で被害者に配慮することだけを意味しない。
医療、心理的支援、住居の確保、経済的支援、就労、生活再建など、事件後の生活を支える取組も含まれる。
例えば、犯罪によって働けなくなった場合、被害者が必要とするのは事件の捜査状況に関する情報だけではない。収入や医療費、住居などの生活上の問題に対応する制度も必要になる。
被害者の困難は複数の分野に及ぶことがあるため、警察、自治体、医療機関、福祉機関、民間支援団体などがそれぞれの役割を担うことになる。
愛媛県の犯罪被害者支援体制
愛媛県では、犯罪被害者等支援条例に基づいて支援施策を実施している。
県は犯罪被害者等への経済的な支援として、遺族見舞金、重傷病見舞金、精神療養支援金、転居費用助成金などの制度を設けている。
ただし、支援にはそれぞれ対象となる犯罪や被害の程度、申請期間などの要件がある。被害者であれば、すべての支援を自動的に受けられるものではない。
2026年4月からは、県、県警、被害者支援センターえひめ、市町などの関係機関が連携する「愛媛県多機関連携支援調整会議」の運用が始まった。
この仕組みは、複数の支援機関が関わる必要のある案件について、関係機関が支援内容を協議し、途切れのない支援につなげることを目的としている。
多機関連携が必要になる理由
犯罪被害者が複数の支援を必要とする場合、行政機関や医療機関、民間団体などにそれぞれ事情を説明しなければならないことがある。
事件の内容を繰り返し話すこと自体が心理的な負担になる場合もあり、機関同士の連携が不十分であれば、支援の開始が遅れる可能性がある。
多機関連携の目的は、単に情報を共有することではない。被害者の意思を尊重しながら、必要な支援が途切れずに提供されるようにすることである。
ただし、複数の機関が関わるほど、被害者の個人情報をどの範囲まで共有するかという問題も生じる。
支援調整に必要な情報と、共有する必要のない情報を区別し、本人の意思や安全に十分配慮する必要がある。
会議体が設置されたことだけで支援が改善したと評価するのではなく、実際に被害者の負担が軽減されたかを確認することが課題となる。
里親制度は子どものための制度
南予地区で取り上げる里親制度は、保護者の病気や虐待など、さまざまな事情によって家庭での養育が難しい子どもを里親家庭で養育する仕組みである。
里親には、養育里親、専門里親、親族里親、養子縁組里親などの種類があり、それぞれ制度上の役割や要件が異なる。
特に、里親制度と養子縁組制度は区別する必要がある。
養育里親として子どもを養育することは、必ずしも法律上の親子関係を成立させることではない。里親制度は、社会的養護の一つとして、子どもの養育と保護を目的とする。
里親制度を普及する際には、子どもを育てたいという大人の希望だけでなく、子どもが安全で安定した環境で生活できるかという問題を優先する必要がある。
子どもの最善の利益と意見表明
児童福祉法は、子どもの最善の利益を考慮することを基本としている。
しかし、子どもの最善の利益を行政や里親が一方的に判断すればよいというものではない。
子どもが里親家庭へ移る場合、これまでの学校や友人との関係、きょうだいとの生活、実親との関係など、生活に大きな変化が生じる可能性がある。
養育環境の変更が必要な場合でも、子ども本人がどのような希望や不安を持っているかを確認することが必要となる。
2022年の児童福祉法改正では、子どもの意見表明等支援事業が法定化されるなど、子ども自身の意思を尊重するための制度が強化された。
里親家庭に委託された後も、子どもが生活上の困難や希望を伝えられる環境を整える必要がある。
里親家庭への継続的な支援
里親制度を進める際には、里親登録者数や委託率が施策の指標として用いられることがある。
しかし、里親委託件数の増加だけで、子どもの生活の安定が保障されるわけではない。
里親家庭では、子どもの心理的なケア、学校との連携、実親との関係、日常生活上の困難などへの対応が必要になる場合がある。
そのため、里親に委託した後も、相談支援や研修、必要に応じた休息のための支援などを継続する必要がある。
里親家庭だけに養育上の責任を負わせるのではなく、児童相談所や関係機関が協力する体制が重要となる。
子どもの権利を保障するためには、里親になる人を増やすことと、里親になった後の支援を充実させることを一体的に考える必要がある。
二つの講座に共通する当事者の尊厳
犯罪被害者支援と里親制度は、対象者も法制度も異なる。
犯罪被害者支援は、犯罪によって被害を受けた人の回復や生活再建を支える制度である。里親制度は、家庭での養育が難しい子どもの生活と成長を保障する制度である。
ただし、支援する側の判断だけで対応を進めてはならないという点には共通性がある。
犯罪被害者には、どのような支援を利用するか、被害の内容を誰にどこまで伝えるかについて、意思を尊重される必要がある。
社会的養護の下で暮らす子どもにも、年齢や発達段階に応じて意見を述べ、その意見を適切に考慮される権利がある。
愛媛県「令和8年度人権啓発講座の開催について」 URL:https://www.pref.ehime.jp/page/7657.html
愛媛県「犯罪被害者等の支援について」
URL:https://www.pref.ehime.jp/page/4858.html
愛媛県「愛媛県犯罪被害者等の支援に関する指針の一部改訂(案)の概要」 URL:https://www.pref.ehime.jp/page/134834.html
警察庁「犯罪被害者等基本計画」 URL:https://www.npa.go.jp/hanzaihigai/shiryou/keikaku/index.html
こども家庭庁「社会的養護」
URL:https://www.cfa.go.jp/policies/shakaiteki-yougo

