1.厚生労働省とこども家庭庁は10月5日、障害児支援に携わる職員を対象とした全国共通の「基礎・実践研修」を2027年度から導入する案を示した。
2.導入時は指定障害児通所支援、入所支援、障害児相談支援の全常勤職員を対象とし、権利擁護、本人支援、家族支援、虐待予防などを共通して学ぶ方向だ。
3.放課後等デイサービスは2025年度に利用者約40万8千人、事業所約2万4千か所まで拡大しており、地域や事業所による支援の質の差をどう縮めるかが制度改定の論点となる。

全常勤職員に共通研修を求める案
厚生労働省とこども家庭庁は2026年10月5日の第65回障害福祉報酬改定検討チームで、2027年度の障害福祉サービス等報酬改定に向けた障害児支援の見直し案を示した。柱の一つが、全国共通の「基礎・実践研修」の制度化だ。児童発達支援、放課後等デイサービス、障害児入所支援、障害児相談支援などの事業者に研修実施の措置を求め、導入時には対象事業の全常勤職員、新規採用後も新たに従事する常勤職員に受講を求める案が示されている。非常勤職員についても勤務実態を踏まえて必須科目を設定する方向で検討する。現段階では検討案であり、報酬改定の最終決定ではない。
権利擁護や虐待予防も共通知識に
研修は資格職だけの専門技術講習とは異なる。基本理念、権利擁護、本人支援、家族支援、地域連携などを扱い、支援者に共通する要素として「対人支援における倫理的姿勢」「こどもの理解に基づく支援」「虐待予防・対応」「チームアプローチ」など9領域を整理している。制度設計に際しては、障害児支援を利用したこども・若者や子育て当事者へのヒアリングも行われた。2027年度に基礎・実践研修、2028年度にリーダー研修、2029年度に地域の中核人材を対象とするコア人材研修を順次導入する構想となっている。
放課後等デイは約40万8千人が利用
制度整備の背景には障害児通所支援の急速な拡大がある。放課後等デイサービスの2025年度費用額は約6,751億円で、障害児支援全体の66.0%を占める。月平均利用者は40万7,777人、事業所は2万4,080か所となり、2012年度から2025年度までの総費用額は14.2倍に拡大した。厚労省資料は、児童発達支援を含め事業所数や利用者数が増える一方、これまで国による人材育成が体系化されず、支援の質の確保を各事業所の取組に委ねてきたことを課題としている。
「預かる場所」ではなく発達と参加を支える制度へ
人権上の論点は、職員研修の有無だけではない。障害のあるこどもも、自分の意思や特性を尊重され、安全に成長し、地域で他のこどもとともに参加する権利を持つ。障害者権利条約も、障害のある子どもの発達しつつある能力の尊重や社会への参加を基本原則に掲げる。事業所によって支援者の知識や権利擁護への理解が大きく異なれば、同じ制度を利用していても、本人の意思の尊重、虐待の予防、家族への支援などに差が生じる可能性がある。全国共通研修は、福祉サービスを単なる「預かり」ではなく、本人の発達と参加を支える制度として運用するための基盤にもなる。
研修時間を確保できるかも検証点
制度化には実務上の課題もある。障害児通所支援ではサービス提供時間を通じた人員配置が必要で、職員を研修へ出せば代替要員の確保が必要になる。検討案は、直接支援に必要な体制を確保することを前提として、外部研修中の人員基準を柔軟に扱うことも検討している。2027年度の導入に向けては、受講率だけでなく、研修内容が個別支援計画や日常の支援、虐待防止、こどもの意見を聴く手続に反映されるかまで確認する必要がある。厚生労働省とこども家庭庁は、令和9年度障害福祉サービス等報酬改定の中で具体的な基準を引き続き検討する。
厚生労働省「第65回障害福祉報酬改定検討チーム」
URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_76565.html
厚生労働省・こども家庭庁「障害児支援に係る報酬・基準について《論点等》」
URL:https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001755910.pdf
障害者権利条約
URL:https://jinken-news.com/glossary/shogaisha-kenri-joyaku/
子どもの権利
URL:https://jinken-news.com/glossary/childrens-rights/

