日本財団と長野県、里親・特別養子縁組の促進へ連携協定

日本財団と長野県の調印式の様子

日本財団と長野県は、里親、ファミリーホーム、特別養子縁組などによる家庭養育の普及・促進に向け、連携協定を締結した。虐待、親の死亡・病気、経済的事情などにより、生みの親と暮らすことが難しい子どもに対し、施設養育だけでなく、より家庭に近い環境で育つ機会を広げることを目的とする。協定に基づく取組は2029年度までを目途に進められ、長野県内の支援体制強化と、他地域にも展開可能なモデルづくりを目指す。

日本では、社会的養護を必要とする子どもが約4万2,000人いるとされる一方、その多くは乳児院や児童養護施設などで生活している。2016年の改正児童福祉法では、子どもができる限り家庭において養育されるよう必要な措置を講じる「家庭養育優先」の考え方が明確化された。しかし、2024年度末時点の里親委託率は全国平均で26.3%にとどまり、長野県は約21.4%と全国平均を下回っている。制度の理念と実際の養育環境との間には、なお大きな隔たりがある。

今回の協定では、長野県、児童相談所、民間団体などが連携し、家庭養育の質を高める米国発祥の「QPI(Quality Parenting Initiative)」を国内で初めて導入する。QPIは、里親を単なる受け皿としてではなく、子どもの実親や関係機関と協働しながら、安定した養育環境を支える担い手として位置づける取組である。あわせて、県内初となる乳幼児短期緊急里親事業の開始、里親支援センターの設置、地域の家庭支援体制を担う3団体への助成なども予定されている。

里親制度や特別養子縁組をめぐっては、担い手の確保だけでなく、登録後の継続的支援、子どもの背景への理解、実親との関係調整、学校・医療・福祉機関との連携が重要となる。里親家庭に子どもを委託すれば十分ということではなく、子どもが安心して暮らし続けられる環境をどう保障するかが問われる。特に乳幼児期の安定した愛着形成や、学童期以降の子どもの意思の尊重は、社会的養護における人権保障の核心である。

人権の観点から見ると、家庭養育の推進は、子どもの「育つ権利」と「最善の利益」を具体化する取組である。施設養育にも専門的支援の役割がある一方、家庭的な関係の中で継続的に育つ機会を広げることは、子どもの発達、自己肯定感、将来の自立に深く関わる。日本財団がこれまで山梨県、大分県、福岡市との連携で蓄積してきた知見を長野県でどう生かすのか、また県内の里親支援センターや民間団体が地域の支援網をどこまで厚くできるのかが、今後の焦点となる。

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