読書バリアフリー法7年 自治体計画55%、中核市は32%

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この記事のポイント

1.読書バリアフリー法は視覚障害者だけでなく、ディスレクシアなど読字に困難がある発達障害者、本を持ったりページをめくったりすることが難しい身体障害者なども対象としている。

2.2026年2月1日時点で、都道府県・指定都市・中核市129自治体のうち読書バリアフリー計画を策定済みなのは71自治体、約55%。都道府県は約89%に達する一方、中核市は約32%にとどまる。

3.国立国会図書館の「みなサーチ」では、音声読み上げや点字表示にも利用できる全文テキストデータが約347万点提供され、2026年7月末時点の視覚障害者等用データ送信サービスは送信承認館447館、データ提供館177館に広がっている。

多様な読書をつなぐ図書館
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読書バリアフリー法が対象にする「読めない」の幅

2019年6月に公布・施行された「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律」、いわゆる読書バリアフリー法は、障害によって通常の書籍を読むことが難しい人の読書環境を整えるための法律である。

名称に「視覚障害者等」とあるため、視覚障害のある人を中心とした制度と思われやすい。しかし、厚生労働省は対象として、視覚障害者のほか、読字に困難がある発達障害者(ディスレクシアなど)、寝たきりや上肢障害などによって書籍を持ったりページをめくったりすることが難しい人、眼球の使用が困難な身体障害者を挙げている。

必要となる読書手段も同じではない。点字図書を利用する人もいれば、録音図書、大活字本、音声読み上げに対応した電子書籍、テキストデータ、DAISYなどを利用する人もいる。紙の本を読むことが難しい理由が異なれば、適した形式も変わる。

この違いは、図書館に「同じ本が置いてあるか」だけでは読書機会の平等を測れないことを示している。紙の本が1冊用意されていても、その形式では情報を取得できない人にとっては、事実上その資料を利用できない。読書バリアフリーは、蔵書の有無だけでなく、本人が利用できる形式で情報へ到達できるかを問う制度である。

第二期基本計画は2025年度から2029年度まで

文部科学省と厚生労働省は2025年3月、読書バリアフリー法第7条に基づく「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する基本的な計画」の第二期計画を策定した。計画期間は2025年度から2029年度までの5年間となっている。

基本計画では、アクセシブルな電子書籍等の充実、アクセシブルな書籍の供給、図書館サービスの充実、インターネットを利用したサービス提供、端末機器などの利用支援、人材育成、出版者から図書館などへの電子データ提供といった施策を扱う。

第二期計画で確認したいのは、「本を製作すること」と「その本を利用できること」が別の段階である点だ。

点字図書やDAISYを製作しても、利用者がその存在を検索できなければ読書にはつながらない。検索できても、サービスへの登録方法が分からなければ利用できない。端末操作が難しい人には、操作方法を教える支援が必要になる場合もある。

したがって、アクセシブルな資料の冊数だけでなく、検索、貸出し、オンライン提供、機器利用、相談対応までを連続した仕組みとして整える必要がある。

自治体計画は129自治体中71自治体

国の基本計画とは別に、読書バリアフリー法第8条は、地方公共団体に対して地域の読書環境整備に関する計画を策定するよう努めることを定めている。

文部科学省と厚生労働省が都道府県、指定都市、中核市の計129自治体を対象に実施した調査では、2026年2月1日時点で計画を「既に策定済み」と回答したのは71自治体だった。策定作業中は7自治体、策定に向けて検討中は15自治体で、策定済み、作業中、検討中を合計すると93自治体、全体の72%となる。これに対し、「策定する予定なし(未定も含む)」は36自治体だった。

策定状況には自治体区分による差がある。

都道府県は47のうち42が策定済みで、約89%。指定都市は20のうち9で約45%、中核市は62のうち20で約32%だった。「策定する予定なし(未定も含む)」とした自治体は、都道府県では0だったのに対し、指定都市では3、中核市では33に上る。

推移を見ると、全体の策定済み割合は2024年度調査の約50%から2025年度調査では約55%に上昇した。都道府県は約81%から約89%へ伸び、指定都市も約40%から約45%となった。中核市は約31%から約32%で、伸びは小さい。

ただし、計画の有無だけで自治体の読書バリアフリー施策全体を評価することはできない。独立した「読書バリアフリー計画」を設ける自治体だけでなく、障害者計画や読書活動推進計画などの中に施策を組み込む自治体もある。実際に何を実施しているかまで確認する必要がある。

129自治体のうち63自治体は連絡会を「予定なし・未定」

計画策定率とは別に、地域内で関係部署が連携できているかも検証材料となる。

同じ調査では、読書バリアフリーに関する庁内の連絡会などを「定期的に開催している」とした自治体は26、「過去に開催したことがある」は37だった。これに対し、「開催する予定なし(未定も含む)」は63自治体で、129自治体のほぼ半数を占める。

外部関係者を含めた会議については、定期開催が40自治体、過去に開催したことがある自治体が24、準備・検討中が6だった。「開催する予定なし(未定も含む)」は59自治体となっている。

読書バリアフリーは図書館だけで完結する施策ではない。障害福祉、教育、学校図書館、点字図書館、公共図書館、出版、ICT支援など複数の分野にまたがる。計画を策定した後、こうした主体をどのようにつなぐかも地域のサービス水準に影響する。

「みなサーチ」で約347万点の全文テキストデータ

読書環境のデジタル化で大きな役割を担っているのが、国立国会図書館の「みなサーチ(国立国会図書館障害者用資料検索)」である。

国立国会図書館は、視覚障害者等用データ送信サービスを通じ、視覚障害その他の理由によって通常の活字による印刷物を読むことが難しい人へデータを提供している。利用者は自宅などから直接利用できるほか、サービスに参加する図書館などを通じて利用することもできる。

2026年2月には、みなサーチで提供する全文テキストデータに約28万点が追加され、総数は約347万点となった。これらは国立国会図書館のデジタル化資料の画像からOCR(光学的文字認識)によって作成されたデータで、音声読み上げソフトによる読み上げ、点字表示、本文中のキーワード検索などに利用できる。

対象には文学作品だけでなく、専門書、歴史資料など幅広い資料が含まれる。

ただし、約347万点という数字を「347万冊の完全に校正された電子書籍」と読み替えることはできない。国立国会図書館は、全文テキストデータについて、人手による確認・校正を行っていない未校正データであると明記している。OCRの認識精度によっては、原資料と異なる文字列が含まれる可能性がある。

量の拡大と同時に、どの程度正確に利用できるかという質の問題も残る。

利用できる図書館も447館まで拡大

地域の図書館を経由してデータへアクセスできる仕組みも広がっている。

国立国会図書館によると、2026年7月末時点で視覚障害者等用データ送信サービスの「送信承認館」は447館、「データ提供館」は177館となった。送信承認館には公共図書館だけでなく、大学図書館、学校図書館、視覚障害者情報提供施設なども含まれる。

送信承認館が増えれば、利用者が自宅で直接サービスを使う方法だけでなく、地域の図書館などを介して資料へアクセスする経路も増える。

ここでも、施設数だけで利用しやすさを判断することはできない。自宅近くに送信承認館があるか、職員が制度を案内できるか、利用登録を支援できるか、必要な再生機器やICT機器を扱えるかによって、同じサービスでも利用条件は変わる。

デジタル化は距離の制約を小さくする一方、端末やサービスの利用方法そのものが新たな障壁になる場合がある。

全国の公立図書館で障害者サービスを調査

文部科学省は2025年度、公立図書館と大学・高等専門学校附属図書館を対象として、障害者サービスの実態調査を実施した。

最終的な調査では、公立図書館1,229館、大学・高等専門学校附属図書館693館から有効回答を得ている。調査項目は、提供している障害者サービスの内容や利用実績、職員体制、アクセシブルな書籍等の製作体制などに及んだ。

図書館のバリアフリーというと、入口の段差解消やエレベーター、車いす用スペースなど建物へのアクセスが思い浮かびやすい。しかし、読書バリアフリーでは、建物に入った後の情報アクセスが中心的な問題になる。

大活字本はあるか。DAISYを利用できるか。対面朗読を行っているか。サピエ図書館やみなサーチを案内できるか。機器の使用方法について相談できるか。自館にないアクセシブルな資料を他館から取り寄せられるか。

こうしたサービスが実際に提供されているかによって、図書館を「利用できる」という意味は変わる。

ディスレクシアでは「文字を大きくする」だけで解決しない

読書バリアフリーを理解するうえで、障害の種類によって必要な対応が異なる点は欠かせない。

弱視の人であれば、大活字本や文字拡大機能が有効な場合がある。全盲の人では点字や音声資料が利用される。上肢障害によって紙のページをめくることが難しい場合には、電子書籍や操作支援機器が読書手段になり得る。

ディスレクシアなど読字に困難がある場合には、単に文字を大きくするだけでは解決しないことがある。文字と音声を組み合わせる、読み上げ速度を調整する、文章をハイライトしながら音声を再生するといった方法が適する場合がある。

つまり「アクセシブルな本」という単一の形式が存在するわけではない。

紙、点字、音声、大活字、電子データなど複数の形式から、本人に適した方法を選択できることが読書環境の整備につながる。

読書バリアフリーと合理的配慮は同じ制度ではない

読書バリアフリー法と障害者差別解消法の関係も整理しておきたい。

読書バリアフリー法は、国や地方公共団体などが読書環境の整備を計画的に進めるための制度である。これに対し、障害者差別解消法は、不当な差別的取扱いを禁止し、個別の場面で社会的障壁の除去を必要とする意思が示された場合に、過重な負担でない範囲で合理的配慮を提供する仕組みを定めている。

図書館があらかじめ大活字本や拡大読書器を準備し、アクセシブルな電子データを利用できる環境を整えることは、広い意味での環境整備に当たる。

そのうえで、ある利用者から「資料を読み上げてほしい」「申込書への記入を手伝ってほしい」「利用方法を別の形で説明してほしい」と個別の申し出があれば、合理的配慮の問題として対応を検討することになる。

両者を区別することで、「設備さえ置けば対応は終わり」とすることも、「すべてを個別対応に任せる」ことも避けられる。障害者差別解消法では、2024年4月から事業者による合理的配慮の提供も法的義務となっている。

情報へのアクセスが社会参加の入口になる

2022年施行の障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法は、障害の種類や程度に応じた手段を選択できるようにすること、地域にかかわらず情報を取得・利用できるようにすることなどを基本理念として掲げている。

読書バリアフリーも、この情報アクセスの問題と重なる。

読書は娯楽だけではない。学校で学ぶ、資格取得のために勉強する、仕事の専門知識を得る、行政制度を調べる、ニュースを読む、歴史や文化を学ぶといった行為も「読む」ことによって支えられている。

特定の形式の情報しか提供されていないために、その情報を取得できない人がいる場合、影響は一冊の本を読めないことだけにとどまらない。教育、就労、文化活動、行政サービスの利用など、別の社会参加にも波及する。

この点で読書バリアフリーは、図書館行政だけの課題ではなく、情報アクセシビリティをどこまで保障するかという課題でもある。

55%という策定率の次に何を検証するか

2026年2月時点で、都道府県・指定都市・中核市の読書バリアフリー計画策定率は約55%となった。2024年度調査の約50%からは上昇しているが、都道府県約89%に対し、中核市は約32%と差がある。

今後の検証では、計画の策定数だけでなく、その先を見る必要がある。

アクセシブルな書籍や電子書籍がどの程度利用できるか。図書館で障害者サービスを担当する職員が確保されているか。みなサーチやサピエ図書館を必要な人へ案内できているか。学校図書館、公共図書館、点字図書館、福祉部門が連携しているか。ICTの操作が難しい利用者への支援があるか。

国立国会図書館では2026年2月までに約347万点の全文テキストデータが利用可能となり、7月末には送信承認館が447館まで増えた。国レベルでは利用可能なデータと接続先が拡大している。

第二期読書バリアフリー基本計画が終了する2029年度までに問われるのは、制度やデータが増えたかだけではない。視覚障害、ディスレクシア、上肢障害などによって通常の活字を読むことが難しい人が、住む地域や障害の状態にかかわらず、自分に適した方法で必要な資料を探し、実際に読むところまで到達できるかである。

文部科学省、厚生労働省、地方公共団体、国立国会図書館、地域の図書館が進める読書バリアフリー施策について、計画策定率とともに実際の利用環境を継続して確認する必要がある。

出典

厚生労働省「視覚障害者等の読書環境の整備(読書バリアフリー)について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/sanka/bunka_00003.html

文部科学省「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する基本的な計画について」
https://www.mext.go.jp/a_menu/ikusei/gakusyushien/mext_00822.html

文部科学省「地方公共団体における視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する計画の策定について」
https://kyouseisyakainomanabi.mext.go.jp/reading-barrier-free/reading-barrier-free-local/

文部科学省・厚生労働省「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する計画の策定状況 概要」
https://kyouseisyakainomanabi.mext.go.jp/wp/wp-content/uploads/2026/05/20260513-reading-barrier-free-local-3.txt

文部科学省「生涯学習を通じた共生社会の実現に関する調査研究~障害者の学びの場における情報保障についての実態調査~」
https://kyouseisyakainomanabi.mext.go.jp/investigation/reading-barrier-free-investigation_r7/

国立国会図書館「視覚障害者等用データ送信サービス」
https://www.ndl.go.jp/support/send

国立国会図書館「全文テキストデータの提供件数が約347万点に拡大しました」
https://mina.ndl.go.jp/news/2026021600

国立国会図書館「視覚障害者等用データ送信サービスの送信承認館6館、データ提供館1館が加わりました(2026年7月)」
https://mina.ndl.go.jp/news/2026080500

関連用語

障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法
https://jinken-news.com/glossary/shogaisha-joho-accessibility-communication-ho/

障害者差別解消法
https://jinken-news.com/glossary/shogaisha-sabetsu-kaisho-hou/

合理的配慮
https://jinken-news.com/glossary/goriteki-hairyo/

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人権ニュース編集部

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