① 熊本市は、2023年に制定した犯罪被害者等支援条例に基づく施策を充実させるため、市民アンケートを実施している。
② 犯罪被害者は事件そのものだけでなく、捜査・裁判、周囲の中傷、報道、転居、失業など「被害後」の問題にも直面することがある。
③ 熊本市では遺族見舞金40万円、重傷病等見舞金20万円、転居費用最大20万円などの制度を設けており、今後は制度の存在を必要な人へどう届けるかも課題となる。

1.支援施策について市民アンケート
熊本市は2026年9月、犯罪被害者やその家族、遺族への支援の取組について市民アンケートを開始しました。
市は2023年9月27日に「熊本市犯罪被害者等支援条例」を制定しており、今後の取組をより充実させるため、アンケートを行うとしています。
2.犯罪被害は事件が終われば終わるわけではない
犯罪被害者が受ける被害は、事件そのものによる身体的・精神的被害だけではありません。
熊本市も条例の説明で、
捜査や裁判に伴う精神的負担。
周囲からの誤解。
中傷や噂。
過剰な報道。
などを挙げています。
こうした事件後に生じる苦痛は一般に「二次被害」と呼ばれます。
さらに、自宅が事件現場となり住み続けられなくなったり、精神的ショックから働けなくなったりすることもあります。
3.犯罪被害者等基本法は「権利利益の保護」を掲げる
国では2004年に「犯罪被害者等基本法」が成立しました。
同法は、犯罪被害者について、これまで権利が十分尊重されず、支援を受けられないまま社会的に孤立する例があったことを法律の前文で認めています。
そして犯罪被害者等の「権利利益の保護」を図ることを国や自治体の責務として位置づけました。
ここには重要な考え方があります。
被害者支援は、
「かわいそうだから助ける」
という福祉的な善意だけではありません。
被害を受けた人が再び平穏な生活を営むための権利保障として位置づけられています。
4.熊本市は見舞金制度を創設
熊本市では2024年4月以降に発生した一定の犯罪被害を対象に、独自の見舞金・助成制度を設けています。
市によると、
遺族見舞金 40万円
重傷病等見舞金 20万円
転居費用助成金 上限20万円
です。
犯罪直後は葬儀、治療、転居など予期しない支出が生じることがあります。
経済的支援には、そうした「突然の生活危機」を緩和する役割があります。
5.支援はお金だけではない
熊本市では、市役所や各区役所に犯罪被害者支援の案内窓口を設置しています。
相談内容に応じて、
福祉。
住居。
こころの健康。
子育て。
就労。
法律相談。
などの制度につなぐ仕組みがあります。
これは犯罪被害者支援の重要な特徴です。
一人の被害者が必要とする支援が一つの役所の部署だけで完結するとは限らないからです。
6.全国でも自治体の役割が拡大
警察庁は全国の自治体に「総合的対応窓口」の整備を進めています。
相談を受けた自治体が、本人の状況に応じて庁内の担当部署や警察、民間被害者支援団体、法テラスなどへ橋渡しする仕組みです。
自治体によっては、
転居費。
家事・育児支援。
カウンセリング。
弁護士費用。
インターネット上の中傷への対応。
などの助成制度もあります。
一方、自治体ごとに支援内容や要件が異なるという問題もあります。
7.制度があっても「知らなければ使えない」
犯罪被害に遭った直後、本人が自治体のホームページから制度を一つずつ探すのは容易ではありません。
まして精神的ショックが大きい場合、
「何を相談すればよいか分からない」
状態になることがあります。
そこで重要なのがワンストップに近い相談体制です。
被害者自身に制度を探させるのではなく、一つの窓口から必要な支援へつなぐことが求められます。
熊本市が今回アンケートを行う意味も、単に支援制度への満足度を測ることだけではありません。
市民が犯罪被害者支援をどの程度知っているのか。
どんな支援が必要だと考えているのか。
必要な人に制度情報が届いているのか。
そうした点を検証し、「制度はあるが利用できない」という状況を防ぐことが、今後の支援充実につながります。
熊本市「犯罪被害者等支援の取組みに関するアンケートを実施します」
https://www.city.kumamoto.jp/kiji00356307/index.html
熊本市「熊本市犯罪被害者等支援条例を制定しました」
https://www.city.kumamoto.jp/kiji00349720/index.html
熊本市「熊本市犯罪被害者等見舞金・助成金制度について」
https://www.city.kumamoto.jp/kiji00353800/index.html
熊本市「犯罪被害者等支援に関する相談窓口・支援制度のご紹介」
https://www.city.kumamoto.jp/kiji00367039/index.html
e-Gov法令検索「犯罪被害者等基本法」
https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC1000000161
警察庁「地方公共団体の取組」
https://www.npa.go.jp/hanzaihigai/local/top.html
警察庁「犯罪被害者等施策ホームページ 公的機関〔地方公共団体〕」
https://www.npa.go.jp/hanzaihigai/portal/search/madoguchi/01/index.html
犯罪被害者等
犯罪の被害を受けた本人だけでなく、その家族や遺族も含む。
犯罪被害者等基本法
犯罪被害者等の権利利益を保護し、国・自治体などが総合的な支援を行うための基本法。
https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC1000000161
二次被害
犯罪そのものとは別に、周囲の偏見、中傷、報道、捜査・裁判などの過程で被害者が新たに受ける精神的・社会的被害。
総合的対応窓口
犯罪被害者の相談を受け、必要な庁内部署や関係機関につなぐ自治体の窓口。
https://www.npa.go.jp/hanzaihigai/local/top.html
