国連、スポーツの人種差別是正要請 先住民族の意思決定参加も支援

この記事のポイント

1.国連特別報告者が、競技参加からスポーツ団体の運営まで人種差別が残るとして、各国と競技団体に対策を促した。
2.選手やファンへの差別的言動だけでなく、参加資格、選考、意思決定機関における人種・民族的少数者の不足も問題に挙げた。
3.国連の任意拠出基金は、先住民族が国際会議に参加し、土地、文化、健康、障害などの課題を自ら提起するための費用を支援している。

反差別国際運動(IMADR)のロゴ

反差別国際運動(IMADR)は7月29日、「国連人権アップデート No.43」を公開した。7月2日に国連人権理事会第62会期で取り上げられたスポーツ界のレイシズムと、7月10日に国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)が紹介した先住民族の国際会議参加支援をまとめた。競技や会議に形式上参加できるだけでなく、選考、運営、議題設定などの意思決定に当事者が加われるかという共通の問題を扱っている。

現代的形態の人種主義、人種差別、外国人嫌悪などに関する国連特別報告者のアシュウィニ・K・P氏は、人権理事会へ提出した報告書「スポーツにおける人種主義」で、スポーツが包摂や社会的結束を促す可能性を持つ半面、社会にある構造的な人種差別を反映し、再生産していると指摘した。貧困、紛争、民族的周縁化に直面する人々には、不利な参加資格、選考過程への関与の少なさ、固定観念などが競技参加の障壁となる。選手やファンを標的とするヘイトスピーチや差別的な暴言も、競技場とオンラインの双方で記録された。

報告書が対象とするのは、観客による差別発言だけではない。競技団体の理事会、選考組織、指導者層などで人種・民族的少数者が十分に代表されない場合、競技規則や処分、被害申告への対応を、当事者の経験が反映されないまま決める構造が続く。アシュウィニ氏は各国に対し、差別の禁止、ヘイトスピーチ対策、加害行為への説明責任を確保するよう促した。スポーツ団体や民間組織にも、運営機関の多様化、安全対策の強化、包摂的なガバナンスを求めている。

先住民族を巡っては、4月20日から5月1日までニューヨークの国連本部で、第25回国連先住民族問題常設フォーラムが開かれた。主題は「紛争状況を含む先住民族の健康の確保」。国連先住民族任意拠出基金の支援を受けて参加したフィリピンのオブ・マヌヴ族の若者リーダー、アンナ・ジェッサ・メイ・クリソストモ氏は、健康を病気の有無だけで捉えず、先祖伝来の土地、文化、アイデンティティー、精神性、自己決定権と結び付けて説明した。

同基金は、国連総会決議40/131に基づいて1985年に設立され、先住民族の団体や共同体の代表が国連会議へ参加するための渡航費や滞在費を支援する。メキシコのナワ族で障害のある女性、オルガ・モントゥファール・コントレラス氏は、先住民族の会議に障害当事者が参加したことで、それまで十分に扱われていなかった課題が議論に入った経験を語った。先住民族であること、女性であること、障害があることによる複合的な障壁は、代表者を招くだけでは解消しない。移動、情報保障、通訳、介助、発言機会まで整えて初めて、政策決定への実質的な参加につながる。

スポーツ界の人種差別と先住民族の国際参加は異なる課題だが、意思決定の場に誰が入り、誰の経験が規則や政策へ反映されるかという点で重なる。IMADRの「国連人権アップデート No.43」は、差別的言動への対処にとどまらず、競技団体の運営構造と国連会議への参加条件を検証対象として示している。

出典

反差別国際運動(IMADR)「国連人権アップデート No.43 スポーツにおけるレイシズム/国連人権基金が後押しする先住民族の声」
URL:https://imadr.net/unhrupdateno43/
参考 国連人権高等弁務官事務所「From stadiums to boardrooms, racism remains pervasive in sport」
URL:https://www.ohchr.org/en/press-releases/2026/07/stadiums-boardrooms-racism-remains-pervasive-sport-un-expert
参考 国連人権高等弁務官事務所「A UN Human Rights Fund supports Indigenous leaders where global decisions are made」
URL:https://www.ohchr.org/en/stories/2026/07/un-human-rights-fund-supports-indigenous-leaders-where-global-decisions-are-made
参考 国連経済社会局「UNPFII Twenty-Fifth Session」
URL:https://social.desa.un.org/issues/indigenous-peoples/unpfii/25th-session

人権ニュース編集部

人権ニュース編集部は、官公庁、自治体、企業、公益団体、国際機関等が公表する一次情報をもとに、差別、労働、教育、福祉、司法・制度、外国人共生、ビジネスと人権などに関するニュースと解説を発信しています。掲載内容は、出典確認を行ったうえで、制度的背景や人権上の論点を補足して構成しています。

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