国連人権理事会62会期、28決議採択 AI偽情報対策を明記

この記事のポイント

1.国連人権理事会第62会期が28本の決議を採択し、7月8日に閉幕した。
2.偽情報、表現の自由、ケア労働、気候変動、児童婚など、デジタル技術と複合差別に関わる課題を扱った。
3.決議は国内法を直接変更しないが、各国政府や企業が法制度、AI運用、人権デューデリジェンスを見直す際の国際基準となる。

反差別国際運動(IMADR)のロゴ

国連人権理事会第62会期は2026年6月15日からジュネーブで開かれ、28本の決議を採択して7月8日に閉幕した。47理事国で構成する同理事会は、決議のほか29回の対話、5回のパネル討議、1回の緊急討議を実施し、スペイン、ケニア、スウェーデンなど15か国の普遍的定期審査(UPR)の結果を採択した。反差別国際運動(IMADR)は、採択文書のうち偽情報、表現の自由、女性と少女への差別、気候変動、児童婚・強制結婚に関する決議を紹介している。

日本も提案国に加わった偽情報に関する決議は、人工知能による合成メディア、自動化システム、組織的なデジタル活動が情報環境と人権に及ぼす影響を扱った。各国には、ジャーナリスト、人権擁護者、女性、少女、マイノリティなどが偽情報によって受けた被害への保護と救済を促し、企業には、アルゴリズムやランキングが虚偽情報を増幅する危険を含めた人権デューデリジェンスを促している。国連人権高等弁務官事務所は、AIを使った偽情報の人権上の影響を調査し、第67会期へ報告する。

表現の自由に関する決議も、AIなどの新技術の悪用と、それに対処する法律が表現活動を過度に制限する危険の双方を対象とした。偽情報への対応では、削除や規制を強めればよいとは限らない。政府による監視や検閲、曖昧な規制、企業による不透明な投稿削除が、報道、市民運動、少数者の発信を狭める場合があるためだ。決議は、デジタル格差の解消、メディアの独立性、企業のコンテンツ選定・モデレーション方針と国際人権法との整合を盛り込んだ。

女性と少女への差別を扱う決議は、無償または低賃金のケア労働が女性に偏り、教育、雇用、社会保障、保健医療、意思決定への参加を制約していると整理した。障害のある女性や少女については、ケアの受け手であると同時に担い手にもなり得る実態を踏まえ、複合的・交差的な差別への対応を示した。気候変動に関する決議は、女性、子ども、高齢者、障害者、先住民族、移民などへの影響の偏りを指摘し、災害リスクに関する意思決定への参加と、企業による環境・気候分野の人権尊重を盛り込んだ。

児童婚・強制結婚に関する決議は、婚姻年齢や婚姻登録の法整備だけでなく、司法、教育、保健、社会保障機関が連携する包括的な対策を各国に促した。会期では、ビジネスと人権作業部会、障害者の権利、教育の権利、極度の貧困など七つのテーマ別任務も3年間延長された。これらの決議に条約と同じ拘束力はなく、採択のみで各国の制度が変わるわけではない。ただし、国連人権高等弁務官事務所による調査や特別報告者の報告を通じ、政府や企業の施策を検証する基準が積み重なる。日本では、偽情報対策と表現の自由の両立、ケア労働の偏り、AI事業者の人権デューデリジェンスを、国連人権理事会第62会期の決議と照合する作業が必要になる。

出典

反差別国際運動「人権理事会62会期―28本の決議を採択し閉幕」
URL:https://imadr.net/hrc62closing/

参考資料 国連ジュネーブ事務局「Human Rights Council Concludes Sixty-Second Regular Session after Adopting 28 Resolutions」
URL:https://www.ungeneva.org/en/news-media/press-release/2026/07/human-rights-council-concludes-sixty-second-regular-session-after

参考資料 国連人権高等弁務官事務所「62nd regular session of the Human Rights Council」
URL:https://www.ohchr.org/en/hr-bodies/hrc/regular-sessions/session62/res-dec-stat

人権ニュース編集部

人権ニュース編集部は、官公庁、自治体、企業、公益団体、国際機関等が公表する一次情報をもとに、差別、労働、教育、福祉、司法・制度、外国人共生、ビジネスと人権などに関するニュースと解説を発信しています。掲載内容は、出典確認を行ったうえで、制度的背景や人権上の論点を補足して構成しています。

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