名古屋市、人権条例案で8場面の差別禁止 相談・勧告・公表制度

この記事のポイント

1.名古屋市が人権条例の基本案を公表し、8月26日まで市民意見を募集する。
2.医療、雇用、不動産取引など8場面の差別を禁止し、相談、あっせん、勧告、公表の手続を設ける。
3.公の施設での差別的言動とインターネット上の人権侵害情報にも、勧告や拡散防止措置を講じる。

パブリックコメント

名古屋市は2026年7月27日、「名古屋市人権に関する条例(仮称)」の制定に向けた「人権尊重のまちづくりの推進に関する基本的な考え方」を公表し、パブリックコメントを開始した。募集は8月26日必着。市は2020年3月に「なごや人権施策基本方針」を策定してきたが、新たな条例では、市、事業者、市民の責務を明文化し、差別の禁止から相談、調整、勧告、公表までを一つの制度として整える。

基本案は、人種、国籍、民族、言語、宗教、年齢、性別、性的指向、性自認、障害、感染症、外見、職業、社会的身分、被差別部落の出身などを「人権等の属性」と定義する。正当な理由なく属性を理由に利益提供を拒んだり、不利な条件を付けたりする行為を不当な差別的取扱いとし、医療、教育・療育・保育、雇用、福祉サービス、商品販売・サービス提供、交通、不動産取引、婚姻の8場面で禁止する。本人の同意なく秘密を暴露する行為や、公表する・しないことの強要、いじめ、虐待、ハラスメント、誹謗中傷、差別を助長・誘発する目的の調査や情報提供も禁止対象に含めた。

救済手続では、市が人権相談機関を設置し、相談者への説明・助言、相手方との調整、関係機関への通報・通知を行う。調整で解決しない不当な差別的取扱いについては、市長の附属機関となる調整委員会への申立てを認め、委員会が調査、助言、あっせん、勧告を担う。市の機関が勧告を受けた場合は、60日以内に是正措置を報告しなければならない。相手方が正当な理由なく勧告に従わないときは、意見陳述の機会を設けた上で、その事実を公表できる。基本案に罰則は示されておらず、対話と行政的な働きかけを中心とする構造である。

公の施設とインターネットには別の措置を設ける。市の施設で横断幕や拡声器などを使った不当な差別的言動があった場合、市長は概要を公表し、再発のおそれがあれば中止を勧告できる。インターネット上ではモニタリングを行い、名古屋市民や市内の特定地域などに関する人権侵害情報を確認した場合、拡散防止や削除を勧告する。虚偽の事実に基づく情報が広がり、差別を助長するおそれが高い場合は、市長が声明を出す仕組みも盛り込んだ。禁止行為の具体的範囲は、審議会の意見を聴いた上で規則に定める。

類似制度として、三重県は2022年に「差別を解消し、人権が尊重される三重をつくる条例」を施行し、差別解消調整委員会による助言、説示、あっせん、勧告を制度化している。名古屋市案は、紛争解決手続に加え、8場面の差別禁止、公の施設での差別的言動、インターネット上の人権侵害情報への対応を同じ条例体系にまとめる。条例制定後3年を経過した時点で、施行状況と実効性を審議会が検討する規定も示した。

意見はウェブフォーム、郵送、ファクス、電子メール、スポーツ市民局人権施策推進課への持参で提出できる。資料にはふりがなを付し、点字版、音声変換用テキスト、英語版、中国語版を用意し、他言語版も問い合わせに応じる。禁止対象が広いだけに、相談者の安全と秘密を守る方法、調査・勧告・公表の判断基準、表現の自由への過度な制約を避ける手続を、条例案と規則でどこまで具体化するかが実効性を左右する。名古屋市は8月26日まで意見を受け付け、市の考え方とともに後日公表する。

出典

名古屋市「人権尊重のまちづくりに関する基本的な考え方に係るパブリックコメントの実施について」
URL:https://www.city.nagoya.jp/houdou/3003942/3003946/3005123.html

参考資料 名古屋市「人権尊重のまちづくりの推進に関する基本的な考え方」
URL:https://www.city.nagoya.jp/houdou/_res/projects/project_houdou/_page_/003/005/123/siryou01.pdf

人権ニュース編集部

人権ニュース編集部は、官公庁、自治体、企業、公益団体、国際機関等が公表する一次情報をもとに、差別、労働、教育、福祉、司法・制度、外国人共生、ビジネスと人権などに関するニュースと解説を発信しています。掲載内容は、出典確認を行ったうえで、制度的背景や人権上の論点を補足して構成しています。

人権ニュース編集部をフォローする
司法・制度日本
シェアする
タイトルとURLをコピーしました