「仕事に向いていない」86%がパワハラ認識 300人調査

この記事のポイント

1.働く男女300人の82.7%が、職場でパワハラを受けたか、身近で見聞きしたと回答した。
2.「この仕事に向いていない」と本人に伝える行為は、86.0%がパワハラと捉えた。
3.受け手の感情だけで法的なパワハラが決まるわけではなく、業務上の必要性や言動の態様を含めた判断が必要となる。

【指導とパワハラの境界線に関する意識調査】働く男女300人へのアンケート調査

弁護士法人浅野総合法律事務所は2026年7月21日、全国の20代から60代の就業者300人を対象にした「指導とパワハラの境界線に関する意識調査」を公表した。調査は6月12日から19日まで、インターネットによる任意回答で実施した。回答者の内訳として女性158人、男性138人を掲げているが、合計は296人で、残る4人の属性は資料中に説明がない。

職場でパワーハラスメントを「身近で見聞きした」は41.7%、「自分が受けた」は41.0%で、両者を合わせると82.7%だった。個別の言動では、「この仕事、向いていないのかもね」と本人に伝える行為を86.0%がパワハラと捉えた。急ぎではない時間外・休日のチャット連絡は76.7%、飲み会への参加を勧める行為は68.3%が同様に回答した。これに対し、ミスが続く間に難易度の低い仕事を任せる行為は87.7%、本人の実力より少し高い目標を設定する行為は81.3%が「指導の範囲」と答えた。

指導とパワハラを分ける要素として最も多かったのは「言い方・口調の強さ」の87.0%で、「業務上の必要性」64.7%、「頻度・しつこさ」62.3%が続いた。「受け手がどう感じるか」は58.0%、「言った人の意図」は55.7%だった。労働施策総合推進法上のパワハラは、優越的な関係を背景とした言動、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動、就業環境が害されることの3要素をすべて満たす場合を指す。受け手の感情や発言者の意図だけで決まるものではなく、目的、態様、頻度、場所、人間関係などを客観的に検討する必要がある。

被害を受けた、または見聞きした際の対応では、「何もできなかった」が25.7%、「我慢した」が21.7%で、計47.4%に達した。会社の上司、人事、相談窓口への相談は5.3%、労働基準監督署や弁護士など社外への相談は2.0%だった。厚生労働省の2023年度調査でも、過去3年間にパワハラを受けた人の36.9%が「何もしなかった」と回答している。ただし、厚労省調査は被害経験を過去3年間に限定するのに対し、今回の民間調査は期間を示さず、見聞きした経験も含むため、発生割合は直接比較できない。

事業主には、企業規模を問わず、方針の明確化、相談体制の整備、事実確認と適切な措置、再発防止、プライバシー保護、相談を理由とする不利益取扱いの禁止が課されている。研修では「この言葉を使えば直ちに違法」と単純化せず、指導の業務上の必要性、伝える場所と方法、繰り返しの有無、記録の残し方を具体化する必要がある。浅野総合法律事務所の300人調査は、法的な該当性や全国の発生率を判定する資料ではないものの、働く人がどの言動に萎縮や人格否定を感じやすいかを把握し、相談窓口の運用を見直す材料となる。

出典

弁護士法人浅野総合法律事務所「指導とパワハラの境界線に関する意識調査」
URL:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000097854.html

厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」
URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/

厚生労働省「令和5年度職場のハラスメントに関する実態調査」
URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000165756.html

人権ニュース編集部

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