
公益社団法人全国被害者支援ネットワークは、公益社団法人おうみ犯罪被害者支援センターが刊行した「犯罪被害者の声 第19集」に収録された意見陳述記録を紹介した。掲載されたのは、長期間にわたり性被害や詐欺被害を受けた被害者が、刑事裁判で述べた意見陳述と、その後の心境を記した文章である。被害者は、高校生の頃から約9年間、加害者にだまされ、脅され、金銭的・性的に支配され続けた経緯を語っている。
刑事裁判における意見陳述は、犯罪被害者や遺族が、被害の実情や現在の心情、加害者に対する考えなどを裁判所に伝える重要な機会である。犯罪被害者等基本法の制定以降、被害者の権利利益を守る制度整備は進んできたが、実際の裁判では、被害者が再び事件を語らなければならない負担も大きい。今回紹介された記録からは、被害が身体的・経済的損害にとどまらず、自己肯定感、人間関係、睡眠、学業、就労、将来への見通しにまで長く影響することが伝わる。
特に注目すべきは、被害者が「なぜ相談できなかったのか」という点である。性被害や金銭搾取を受けた場合、被害者は、恥ずかしさ、罪悪感、家族や学校に知られる恐怖、周囲から責められる不安を抱え、相談をためらうことが少なくない。加害者がその心理を利用し、孤立させ、支配を強める構造は、性暴力、デートDV、SNSを介した脅迫、若年層の搾取被害にも共通する。被害者が声を上げられなかったことを責めるのではなく、相談できない状況に追い込まれていたことを社会が理解する必要がある。
全国被害者支援ネットワークは、全国48の加盟団体と連携し、犯罪被害に遭った人や家族、遺族への相談・支援活動を行っている。被害者支援センターは、警察や検察、弁護士、医療機関、自治体などとつながりながら、被害直後の混乱期から裁判対応、生活再建、心理的支援までを支える役割を担う。今回の記録には、支援担当者が裁判に向き合う被害者を支えた経過も示されており、制度だけでなく、伴走型支援の重要性を示している。
人権の観点から見ると、犯罪被害者支援は、単に加害者を処罰する刑事司法の問題ではない。被害を受けた人が孤立せず、尊厳を回復し、生活を立て直すための社会的支援の問題である。意見陳述の記録を社会に伝えることは、被害者の苦しみを消費するためではなく、被害の実態を理解し、二次被害を防ぎ、相談につながる環境を整えるために意味を持つ。学校、家庭、職場、地域が「話しても責められない」場をつくれるかどうかが、同じような被害を早期に発見する鍵となる。
全国被害者支援ネットワーク
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