政府、令和7年度人権教育・啓発施策を国会報告 第二次計画を特集

この記事のポイント

1.法務省と文部科学省が、2025年度に政府が実施した人権教育・啓発施策を国会に報告した。
2.こどもに関する人権侵犯事件は2,184件、部落差別(同和問題)は509件となった。
3.2025年6月策定の「人権教育・啓発に関する基本計画(第二次)」を特集し、今後の施策体系を示した。

法務省

法務省と文部科学省は2026年6月26日、「令和7年度人権教育及び人権啓発施策」を国会に報告した。人権教育及び人権啓発の推進に関する法律第8条に基づき、2025年度に関係府省庁が実施した施策をまとめた年次報告で、法務省と文部科学省が共同で作成した。インターネット上の人権侵害、女性、こども、高齢者、障害のある人、部落差別(同和問題)、アイヌの人々、外国人などの課題に加え、人権に関わりの深い職業従事者への研修状況も収録している。

今回の特集は、2025年6月に策定された「人権教育・啓発に関する基本計画(第二次)」である。第一次基本計画は2002年に策定され、2011年に一部変更されたが、社会経済情勢の変化や国際的潮流を踏まえ、約23年ぶりに第二次計画が策定された。年次報告の掲載順も第二次基本計画の人権課題に合わせて変更されており、各年度の施策が同計画に沿って実施されたかを追跡しやすい構成となった。トピックスには、2025年11月に国内で初開催された東京2025デフリンピックと、共生社会に向けた教育・啓発の取組を掲げた。

概要資料に示された2025年の人権侵犯事件数では、こどもに関する事件が2,184件となり、2024年の1,500件から684件増えた。女性に関する事件も331件から472件、障害のある人に関する事件も211件から225件へ増加した。部落差別(同和問題)は509件で、このうち494件がインターネット上の識別情報の摘示事案だった。インターネット上の人権侵害全体は1,707件から1,569件へ減少したものの、依然として1,500件を超えている。本邦外出身者に対する不当な差別的言動は2025年から独立して集計され、54件だった。

ただし、人権侵犯事件数は、国内で発生した人権侵害の総数を示す統計ではない。法務省の人権擁護機関が、被害申告などを端緒として調査救済手続を開始した事件を数えたもので、相談に至らない被害や、他機関が対応した事案は含まれない。件数の増減だけで被害実態の悪化や改善を断定することはできず、相談窓口の周知状況、分類方法の変更、救済手続への接続状況と合わせて読む必要がある。

施策面では、インターネット上の誹謗中傷を巡る削除依頼の手引き作成、削除対象の法的整理を踏まえたプロバイダーへの削除要請、こどもの人権SOSミニレターや法務局LINEじんけん相談、多言語による人権相談、障害のある人を対象とする人権教室、部落差別を助長する投稿への削除要請などが並ぶ。「ビジネスと人権」では中小企業向けセミナーや食品企業の事例集、ゲノム情報では不当な差別事例の収集と対応方針の整理も盛り込まれた。次回の年次報告では、第二次基本計画に掲げた施策が相談・救済の実績や教育現場の対応にどう結び付いたかを、法務省と文部科学省が検証可能な形で示せるかが問われる。

出典

法務省「『令和7年度人権教育及び人権啓発施策』(年次報告)について」
URL:https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken04_00362.html

文部科学省「『令和7年度人権教育及び人権啓発施策』(年次報告)について」
URL:https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/mext_01648.html

文部科学省「令和7年度人権教育及び人権啓発施策の概要」
URL:https://www.mext.go.jp/content/20260623-mxt_kyousei02-000050661_1.pdf

法務省「令和7年における『人権侵犯事件』の状況について」
URL:https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken05_00117.html

人権ニュース編集部

人権ニュース編集部は、官公庁、自治体、企業、公益団体、国際機関等が公表する一次情報をもとに、差別、労働、教育、福祉、司法・制度、外国人共生、ビジネスと人権などに関するニュースと解説を発信しています。掲載内容は、出典確認を行ったうえで、制度的背景や人権上の論点を補足して構成しています。

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