不同意わいせつ罪とは

不同意わいせつ罪とは、同意しない意思を形成し、表明し、または全うすることが困難な状態にさせたり、その状態にあることに乗じたりして、わいせつな行為を行う犯罪です。2023年の刑法改正により、従来の強制わいせつ罪・準強制わいせつ罪が再構成され、刑法176条に不同意わいせつ罪が定められました。

1.不同意わいせつ罪の意味

不同意わいせつ罪は、相手が自由な意思で性的行為を受け入れるかどうかを決められない状態で、わいせつな行為をすることを処罰する犯罪です。

ここでいう「わいせつな行為」は、性交等には至らないものの、性的自由や性的自己決定を侵害する行為を指します。具体的には、身体に触れる行為だけでなく、行為の内容や状況によって、相手の性的な尊厳を侵害する行為が問題になります。

不同意わいせつ罪で重要なのは、単に「暴行や脅迫があったか」だけではありません。アルコールや薬物の影響、睡眠などで意識がはっきりしない状態、予想外の事態による恐怖や驚き、虐待による心理的反応、職場・学校・家庭などの関係性による不利益への不安などにより、相手が同意しない意思を形成し、表明し、または全うすることが困難だったかが問題になります。

2.制度・法律との関係

刑法176条は、暴行・脅迫、心身の障害、アルコール・薬物の影響、睡眠その他の意識が明瞭でない状態、同意しない意思を形成・表明・全うするいとまがないこと、予想と異なる事態による恐怖・驚愕、虐待に起因する心理的反応、経済的または社会的関係上の地位に基づく影響力による不利益への憂慮などを列挙しています。

これらの行為や事由により、相手が同意しない意思を形成し、表明し、または全うすることが困難な状態にさせたり、その状態にあることに乗じたりして、わいせつな行為をした場合、不同意わいせつ罪が成立し得ます。法定刑は6月以上10年以下の拘禁刑です。

同条は、婚姻関係の有無にかかわらず成立することも明記しています。配偶者、交際相手、家族、上司、教員、支援者など、一定の関係がある相手であっても、相手の性的自由を侵害する行為は刑法上の犯罪となり得ます。

3.人権上の論点

不同意わいせつ罪の人権上の論点は、性的行為を受け入れるかどうかを本人が自由に決める権利を、刑法がどこまで保護できるかにあります。わいせつ行為は、身体への接触の有無だけでなく、恐怖、屈辱、自己否定感、対人関係への不安など、被害者の人格や尊厳に深い影響を及ぼします。

従来の強制わいせつ罪や準強制わいせつ罪では、暴行・脅迫や抗拒不能といった要件の解釈をめぐり、被害者が抵抗できなかった事情を十分に捉えにくいという指摘がありました。2023年改正は、「なぜ抵抗しなかったのか」ではなく、「同意しない意思を形成し、表明し、全うすることが困難な状態だったか」に焦点を置いた点に特徴があります。

ただし、刑法の条文が整備されても、被害者が相談しやすい窓口、捜査・裁判での二次被害防止、学校や職場での性暴力防止教育がなければ、被害の発見や回復は進みません。不同意わいせつ罪は、刑事処罰の規定であると同時に、性的同意、力関係、沈黙や恐怖の意味を社会がどう理解するかに関わる制度です。

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