性的姿態撮影等処罰法とは、性的な姿態を本人の同意なく撮影する行為や、その画像・動画を提供、保管、送信する行為などを処罰する法律です。正式名称は「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」です。盗撮、性的画像の拡散、ライブ配信、児童の性的姿態の撮影などに対応する法律であり、性的搾取やデジタル性暴力を考えるうえで重要な法令です。
1.性的姿態撮影等処罰法の意味
性的姿態撮影等処罰法は、性的な部位、下着、性的行為中の姿などを、本人の意思に反して撮影する行為などを処罰する法律です。従来、盗撮行為などは各都道府県の迷惑防止条例などで対応されることが多く、場所や態様によって処罰の範囲に差が生じることがありました。同法は、性的な姿態の撮影行為を全国共通の法律で処罰する仕組みを設けたものです。
同法が対象とするのは、撮影行為だけではありません。性的な姿態を撮影して作られた記録を他人に提供する行為、不特定多数に提供する行為、公然と陳列する行為、提供目的で保管する行為、ライブストリーミングのように性的姿態の影像を送信する行為、送信された影像を記録する行為なども処罰対象になります。
この法律は、性的画像が一度作成・拡散されると、被害が長期化しやすいという問題に対応しています。被害者は、撮影時点の被害だけでなく、画像や動画が保存、複製、送信、投稿され続けることによって、長期間にわたり精神的苦痛や生活上の不安を受けることがあります。
2.制度・法律との関係
性的姿態撮影等処罰法は、2023年の性犯罪関係法改正とあわせて成立した法律です。法務省は、2023年6月16日に「刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律」と同法が成立し、一部の規定を除いて同年7月13日から施行されたと説明しています。
同法は、性的姿態等撮影罪、性的影像記録提供等罪、性的影像記録保管罪、性的姿態等影像送信罪、性的姿態等影像記録罪などを定めています。e-Gov掲載の同法も、性的な姿態を撮影する行為や、これにより生成された記録を提供する行為等を処罰するとともに、押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去などを定める法律として掲載しています。
刑法の不同意性交等罪や不同意わいせつ罪、児童買春・児童ポルノ禁止法、児童福祉法、ストーカー規制法、リベンジポルノ防止法などとも関係します。性的な画像・動画の撮影や拡散は、性暴力、児童の性的搾取、支配関係、脅迫、別れた相手への嫌がらせ、SNS上の拡散など、複数の問題と重なって起こることがあるためです。
人身取引との関係では、性的搾取の過程で、被害者の性的画像や動画が撮影され、逃げられないようにする脅しとして使われる場合があります。画像の拡散を恐れて相談できない、加害者に従わざるを得ないという状況は、支配や搾取を強める要因になります。同法は、こうしたデジタル化した性的搾取に対応するうえでも重要です。
3.人権上の論点
性的姿態撮影等処罰法をめぐる人権上の論点は、性的な画像や動画を本人の意思に反して撮影・拡散されない権利をどう守るかにあります。性的な姿態は、個人の尊厳、身体の自由、性的自己決定、プライバシーに深く関わる情報です。本人の同意なく撮影されること自体が重大な侵害であり、さらに拡散されれば被害は繰り返し発生します。
児童や若年者の被害では、特に保護が必要です。大人との力関係、交際関係、金銭、孤立、脅し、SNS上の関係性により、性的な画像を撮影されたり送らされたりすることがあります。形式的に本人が応じているように見えても、実際には圧力、依存関係、恐怖、判断力の未熟さが背景にある場合があります。
性的画像の拡散は、被害者の学校生活、職場、家族関係、地域生活に長期的な影響を及ぼします。画像がインターネット上に残り続けることへの不安、第三者に見られる恐怖、再拡散の可能性は、被害者の回復を妨げます。押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去などの制度が設けられているのは、この被害の継続性に対応するためです。
性的姿態撮影等処罰法は、盗撮や画像拡散を単なる迷惑行為ではなく、性的自由と人格の侵害として処罰する法律です。人身取引や性的搾取を理解する際には、身体的な支配だけでなく、性的画像・動画を利用した脅迫、支配、孤立化も含めて捉える必要があります。