人身売買罪とは

人身売買罪とは、人を買い受けたり、売り渡したりする行為を処罰する刑法上の犯罪です。刑法第226条の2に規定されており、人を買い受けた場合、未成年者を買い受けた場合、営利・わいせつ・結婚・生命身体加害の目的で人を買い受けた場合、人を売り渡した場合、国外に移送する目的で人を売買した場合などが処罰対象になります。人身取引を刑事法の面から理解するための基本用語です。

1.人身売買罪の意味

人身売買罪は、人を売買の対象として扱い、その自由や尊厳を侵害する行為を処罰する犯罪です。刑法上は、略取、誘拐及び人身売買の罪の一つとして定められています。

一般に「人身売買」という言葉は、人を金銭で売り買いする行為を連想させます。ただし、人身取引の実態はそれに限られません。性的搾取、労働搾取、結婚の強要、国外への移送、身体への加害などの目的で、人を支配下に置く行為が問題になります。人身売買罪は、そのうち人を買い受ける、売り渡す、国外に移送する目的で売買する、といった行為を刑法上処罰する規定です。

刑法第226条の2では、人を買い受けた者は処罰されます。被害者が未成年者である場合は、より重く扱われます。さらに、営利、わいせつ、結婚、生命・身体への加害の目的で人を買い受けた場合や、人を売り渡した場合、国外に移送する目的で人を売買した場合には、重い刑が定められています。

2.制度・法律との関係

人身売買罪は、刑法第226条の2に規定されています。現在の条文では、人を買い受けた者、未成年者を買い受けた者、営利・わいせつ・結婚・生命身体加害目的で人を買い受けた者、人を売り渡した者、国外移送目的で人を売買した者について、それぞれ刑罰が定められています。

この規定は、2005年の刑法改正により設けられました。法務省の犯罪白書も、2005年の刑法改正により人身売買罪が創設されたと説明しています。これは、人身取引をめぐる国際的な問題意識や、被害者保護・加害者処罰の強化を受けた法整備の一つです。

人身売買罪は、人身取引対策の一部です。人身取引には、刑法の人身売買罪だけでなく、略取・誘拐罪、被略取者等収受罪、売春防止法違反、児童福祉法違反、児童買春・児童ポルノ禁止法違反、出入国管理及び難民認定法違反、労働関係法令違反などが関係する場合があります。政府広報も、人身取引に当たる行為は、刑法の略取・誘拐罪や人身売買罪、児童福祉法違反の罪などに該当すると説明しています。

国際的には、人身取引議定書との関係も重要です。人身取引は、搾取を目的として、暴力、脅迫、誘拐、詐欺、弱い立場へのつけ込みなどの手段を用い、人を支配下に置く行為として整理されます。18歳未満の児童については、暴力や脅迫などの手段が用いられない場合でも、搾取目的で支配下に置いたり引き渡したりすれば、人身取引とみなされます。

3.人権上の論点

人身売買罪をめぐる人権上の論点は、人を取引や支配の対象として扱うこと自体が、人間の尊厳を根本から侵害する点にあります。人身売買の被害者は、移動の自由、身体の安全、性的自己決定、働く自由、家族生活、教育や医療へのアクセスなど、多くの権利を侵害されるおそれがあります。

人身売買は、被害者の同意があるように見える場合でも、実際には自由な選択が奪われていることがあります。借金、在留資格、雇用主への依存、言語の壁、家族への送金、暴力や脅迫などにより、被害者が逃げられない状態に置かれることがあります。特に外国人、児童、若年女性、生活困窮者などは、搾取の対象にされやすい立場に置かれることがあります。

刑事罰による加害者処罰は不可欠ですが、それだけでは被害回復は十分ではありません。被害者には、安全な住まい、医療、心理的ケア、通訳、法的支援、在留に関する配慮、就労や生活再建の支援が必要になる場合があります。人身売買罪を理解する際には、処罰の規定としてだけでなく、被害者を保護し、搾取から回復させる制度全体との関係で捉える必要があります。

人身売買罪は、人身取引に対する刑事法上の中核的な規定です。ただし、人身取引の被害は、刑法第226条の2に当たる行為だけで完結するわけではありません。性的搾取、労働搾取、児童の搾取、外国人の在留上の不安、貧困や孤立といった背景を含め、警察、入管、労働行政、福祉、医療、民間支援団体が連携して被害者を発見し、保護することが重要になります。

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