生活保護とは、生活に困窮する人に対し、国が必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を助ける制度です。生活保護法に基づく制度で、生活費、家賃、医療、介護、教育、出産、仕事に必要な費用、葬祭費など、生活上の必要に応じて扶助が行われます。ホームレス状態にある人や、住まい・収入・医療を失った人にとって、生活を立て直すための最後の安全網となる制度です。
1.生活保護の意味
生活保護は、収入や資産、他の制度を活用しても、最低限度の生活を維持できない人に対して行われる公的扶助制度です。病気、障害、高齢、失業、家族関係の断絶、住居喪失などにより、自力で生活を維持することが難しくなった場合に、必要な保護を受けることができます。
生活保護の目的は、単に金銭を支給することではありません。生活に困窮している人に対し、最低限度の生活を保障し、あわせてその人の自立を助けることにあります。ここでいう自立には、就労による経済的自立だけでなく、病気や障害、高齢などの事情を抱えながら地域で生活を維持することも含まれます。
ホームレス状態にある人も、生活保護の対象になり得ます。住まいがないことを理由に、生活保護の相談や申請から排除することはできません。路上生活、ネットカフェ生活、知人宅を転々とする生活など、住居が不安定な状態にある人についても、本人の困窮状況に応じて、福祉事務所が必要な保護を検討することになります。
2.制度・法律との関係
生活保護の根拠は、生活保護法です。同法は、日本国憲法25条の理念に基づき、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行うことを定めています。法律上は、無差別平等、最低生活、補足性などの原理が置かれています。
生活保護には、生活上の必要に応じて複数の扶助があります。日常生活に必要な費用を支える生活扶助、家賃などを支える住宅扶助、医療費を支える医療扶助、介護サービスに関わる介護扶助、義務教育に必要な費用を支える教育扶助、出産扶助、生業扶助、葬祭扶助です。必要に応じて、一つの扶助だけが行われる場合もあれば、複数の扶助が組み合わされる場合もあります。
生活保護は、補足性の原理に基づく制度です。利用できる資産、能力、他の法律による給付、扶養などを活用しても最低生活を維持できない場合に、保護が行われます。ただし、急迫した事情がある場合には、必要な保護を行うことが妨げられるものではありません。窓口では、資産や収入の確認と同時に、現在の住まい、健康状態、家族関係、医療の必要性なども確認されます。
生活困窮者自立支援法との関係も重要です。生活困窮者自立支援制度は、生活保護に至る前の段階で、住居確保給付金、自立相談支援、一時生活支援、就労準備支援、家計改善支援などを行う制度です。しかし、それらの支援だけでは生活を維持できない場合には、生活保護につなぐ必要があります。ホームレス自立支援法、生活困窮者自立支援法、生活保護法は、住まいを失った人や生活困窮者を支える制度として連続して理解する必要があります。
3.人権上の論点
生活保護をめぐる人権上の論点は、生活に困った人が、「恥だ」といった感情や偏見によって制度利用をためらったり、窓口で不適切に排除されたりしないようにすることにあります。生活保護は、憲法25条の生存権を具体化する制度であり、困窮した人に対する恩恵ではありません。要件を満たす人が申請し、必要な保護を受けることは、制度上認められた権利です。
ホームレス状態にある人の場合、住所がない、身分証を失っている、家族との連絡が難しい、病気や障害がある、長く行政窓口から離れているなど、相談や申請に至るまでの障壁が大きくなります。住まいがない人ほど保護を必要としているにもかかわらず、制度につながりにくいという矛盾が生じます。支援では、本人が窓口に来るのを待つだけでなく、巡回相談や民間支援団体との連携も重要になります。
生活保護に対する偏見も問題です。不正受給の一部事例だけが強調されると、本当に支援を必要とする人まで申請をためらうことがあります。病気、高齢、障害、失業、DV、家族関係の断絶、住居喪失など、生活困窮に至る事情は多様です。制度を利用する人を一律に否定的に見ることは、困窮者の孤立を深めます。
生活保護は、ホームレス状態にある人や生活困窮者が、住まい、食事、医療、介護、教育などの基礎的な生活を取り戻すための制度です。福祉事務所、地方公共団体、自立相談支援機関、医療機関、民間支援団体が連携し、必要な人を生活保護につなげ、保護開始後も地域で生活を維持できるよう支援することが重要になります。