住居確保給付金とは、離職や収入減少などにより住居を失った人、または住居を失うおそれの高い人に対し、一定の要件のもとで家賃相当額などを支給する制度です。生活困窮者自立支援法に基づく給付金で、正式には「生活困窮者住居確保給付金」といいます。住まいを確保し、生活の土台を整えたうえで、就職活動や家計改善を進めるための制度であり、ホームレス状態の予防にも関係します。
1.住居確保給付金の意味
住居確保給付金は、住まいを失った人や、家賃を払えず住まいを失うおそれがある人を支援する制度です。住居を失うと、就職活動、通院、行政手続、子どもの通学、郵便物の受取りなど、日常生活の基本的な営みが困難になります。住居確保給付金は、そうした生活の崩れを防ぐため、一定期間、家賃相当額を支給する仕組みです。
主な対象は、離職や廃業、本人の責任や都合によらない収入減少などにより、家賃の支払いが難しくなった人です。支給には、収入、資産、求職活動などの要件があります。家賃相当額は、自治体ごとに定められた上限の範囲内で支給され、原則として賃貸人や不動産仲介業者などに自治体から直接支払われます。
住居確保給付金は、生活費全般を支給する制度ではありません。目的は、住まいを確保し、就職活動や生活再建を進めるための基盤を守ることにあります。そのため、自立相談支援機関による相談支援と組み合わせて利用されます。支援員が本人の状況を確認し、就労、家計、福祉、医療などの課題に応じて支援プランを作成します。
2.制度・法律との関係
住居確保給付金は、生活困窮者自立支援法に基づく制度です。同法は、生活保護に至る前の段階から、生活に困窮している人を相談と支援につなげるための法律です。自立相談支援事業、就労準備支援事業、家計改善支援事業、一時生活支援事業などと並び、住居確保給付金は住まいの安定を支える重要な制度です。
支給期間は原則として3か月で、一定の要件を満たす場合には延長されることがあります。支給額は、生活保護制度の住宅扶助額を踏まえた上限額の範囲内で、実際の家賃額を基準に決められます。具体的な上限額や手続は、住んでいる自治体や世帯人数によって異なるため、申請は地域の自立相談支援機関や自治体窓口を通じて行います。
2025年度以降の制度では、家計の立て直しのための転居費用補助も重要です。収入が大きく減少し、現在の家賃を払い続けることが難しい場合、家賃の低廉な住宅に転居することで家計が改善すると認められることなどを要件に、転居費用の補助を受けられる場合があります。これは、単に現在の家賃を一時的に補うだけでなく、長期的に住み続けられる住居へ移る支援として位置付けられます。
ホームレス自立支援法との関係もあります。ホームレス自立支援法は、ホームレス状態にある人の自立支援やホームレスとなることの防止を目的とする法律です。住居確保給付金は、住まいを失う前の段階で支援につなげる制度であり、路上生活や不安定居住に至ることを防ぐ実務上の手段になります。
3.人権上の論点
住居確保給付金をめぐる人権上の論点は、住まいを失うことが、生活全体の基盤を失うことにつながる点にあります。住居は、単なる居場所ではありません。休息、健康、家族生活、就労、通学、福祉サービスの利用、地域とのつながりを支える基盤です。住まいを失えば、他の権利や社会参加の機会も大きく制約されます。
家賃滞納や退去の危機は、短期間で深刻化します。失業、病気、介護、離婚、DV、家族関係の断絶、物価高、収入減少などが重なると、本人の努力だけでは住居を維持できない場合があります。住居確保給付金は、こうした危機を早い段階で受け止め、ホームレス状態に至る前に支援につなげる制度です。
支援のあり方では、単に「働けばよい」とする対応では不十分です。すぐに就職活動ができる人もいれば、病気、障害、精神的困難、家庭内暴力、長期の孤立などにより、まず安全な住まいや福祉的支援が必要な人もいます。住居確保給付金は、就労支援と結び付く制度ですが、実際の支援では、本人の事情に応じて医療、福祉、家計改善、居住支援を組み合わせる必要があります。
住居確保給付金は、生活困窮者を住まいの面から支える制度です。ホームレス状態にある人や、住まいを失うおそれのある人を排除ではなく支援につなげるためには、自立相談支援機関、地方公共団体、福祉事務所、居住支援法人、家主、不動産事業者が連携し、退去や路上生活に至る前の相談導線を整えることが重要になります。