被害者参加制度とは、一定の犯罪の被害者や遺族等が、裁判所の許可を受けて刑事裁判に参加できる制度です。刑事裁判への参加を認められた人は「被害者参加人」と呼ばれ、公判期日への出席、検察官への意見表明、証人尋問、被告人質問、事実または法律の適用についての意見陳述などを行うことができます。犯罪被害者等の尊厳や刑事手続への関与を考えるうえで重要な制度です。
1.被害者参加制度の意味
被害者参加制度は、犯罪被害者等が刑事裁判に直接関与できるようにする制度です。従来、刑事裁判は、検察官が被告人の刑事責任を追及し、被告人・弁護人が防御し、裁判所が判断する手続として進められてきました。その中で、犯罪被害者や遺族は、事件の重大な当事者でありながら、裁判手続への関与が限られていました。
この制度により、一定の重大な事件の被害者や遺族等は、検察官を通じて刑事裁判への参加を申し出ることができます。申出を受けた検察官は意見を付して裁判所に通知し、裁判所が相当と認めた場合、被害者参加人として刑事裁判に参加できます。
対象となる事件には、殺人、傷害、危険運転致死傷などの故意の犯罪行為により人を死亡させたり傷つけたりした事件、不同意性交等、不同意わいせつ、逮捕・監禁、過失運転致死傷などの事件が含まれます。被害者本人のほか、被害者が亡くなった場合や心身に重大な故障がある場合には、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹なども利用できる場合があります。
2.制度・法律との関係
被害者参加制度は、刑事訴訟法の改正により導入された制度です。2007年の「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律」により創設され、2008年12月1日から実施されました。
被害者参加人は、刑事裁判の当事者そのものではありません。刑事裁判の基本構造は、検察官、被告人・弁護人、裁判所を中心に進みます。そのうえで、被害者参加人には、一定の範囲で公判期日に出席し、検察官の訴訟活動について意見を述べ、説明を受けることが認められています。
被害者参加人は、裁判所の許可などを受けて、証人に尋問したり、被告人に質問したりすることができます。証拠調べが終わった後には、訴因の範囲内で、事実または法律の適用について意見を述べることもできます。これにより、被害者や遺族が、裁判の場で自らの考えや被害の実情を一定の形で伝える機会が保障されます。
関連する制度として、被害者参加弁護士制度があります。被害者参加人は、弁護士に委託して刑事裁判への参加を支援してもらうことができます。資力が一定額に満たない場合には、国選被害者参加弁護士の選定を請求できる制度もあります。刑事手続への関与を実質的に保障するためには、法律専門家による支援が重要になります。
3.人権上の論点
被害者参加制度をめぐる人権上の論点は、犯罪被害者や遺族を、刑事裁判の外側に置かれた存在としてではなく、尊厳を持つ手続参加者として扱うことにあります。犯罪被害者等基本法は、犯罪被害者等が個人の尊厳にふさわしい処遇を保障されるべき存在であることを示しています。被害者参加制度は、その理念を刑事裁判の場で具体化する制度の一つです。
被害者や遺族にとって、刑事裁判は、事件の事実が公的に確認され、加害者の責任が問われる重要な場です。そこに参加し、検察官に意見を伝え、被告人や証人に質問し、意見を述べる機会があることは、被害者や遺族の納得や尊厳の回復に関係します。刑事裁判の結果だけでなく、手続にどのように関われるかも、人権上の重要な問題です。
その一方で、刑事裁判では、被告人の防御権や公平な裁判を受ける権利も保障されなければなりません。被害者参加制度は、被害者や遺族の参加を認める制度ですが、参加の範囲は裁判所の許可や刑事訴訟法上の要件によって制限されています。これは、被害者の尊厳と、刑事裁判の公正さを両立させるための仕組みです。
被害者参加制度は、犯罪被害者本人、家族、遺族が刑事裁判に関わる道を開いた制度です。ただし、参加すること自体が心理的負担になる場合もあります。制度の運用では、被害者や遺族が参加を望む場合に十分な情報提供と弁護士支援を受けられること、参加を望まない場合にも不利益を受けないことが重要になります。