再犯防止推進法とは、犯罪をした人などが再び犯罪をすることを防ぐため、国や地方公共団体の責務、再犯防止に関する施策の基本事項を定めた法律です。正式名称は「再犯の防止等の推進に関する法律」で、2016年12月14日に公布・施行されました。刑を終えて出所した人や非行のあった人の社会復帰を支える制度の基礎となる法律であり、就労、住居、福祉、教育、民間協力などを含めて再犯防止を考える点に特徴があります。
1.再犯防止推進法の意味
再犯防止推進法は、犯罪をした人などの円滑な社会復帰を促進することにより、再び犯罪が行われることを防ぎ、安全で安心して暮らせる社会の実現につなげることを目的とする法律です。
ここでいう「再犯の防止等」には、犯罪をした人が再び犯罪をすることを防ぐことだけでなく、非行少年の非行をなくすことや、非行少年であった人が再び非行に至ることを防ぐことも含まれます。そのため、刑務所を出所した人だけでなく、少年事件、保護観察、更生保護、地域での生活支援などと広く関係します。
同法の大きな特徴は、再犯防止を刑事司法だけの問題として扱わない点にあります。出所後に仕事がない、住まいがない、医療や福祉につながれない、家族や地域から孤立する、といった事情は、社会復帰を難しくします。再犯防止推進法は、こうした生活上の課題を含め、国、地方公共団体、民間団体などが連携して支援を進める枠組みを示しています。
2.制度・法律との関係
再犯防止推進法は、再犯防止に関する基本理念、国と地方公共団体の責務、国の再犯防止推進計画、地方再犯防止推進計画などについて定めています。国は法律に基づき、再犯防止推進計画を定め、就労・住居の確保、保健医療・福祉サービスの利用促進、学校等と連携した修学支援、対象者の特性に応じた指導、民間協力者の活動促進などの施策を進めます。
この法律は、更生保護法とも密接に関係します。更生保護法は、保護観察、更生緊急保護、生活環境の調整など、犯罪をした人の立ち直りを支える具体的な制度の根拠となる法律です。これに対し、再犯防止推進法は、より広い政策の方向性を定め、刑事司法、福祉、医療、雇用、教育、住宅などを横断して再犯防止施策を進める役割を持ちます。
地方公共団体にとっても、同法は重要です。地域で暮らす出所者や保護観察対象者を支えるには、保護観察所だけでなく、自治体の福祉部門、住宅部門、教育機関、医療機関、民間支援団体、協力雇用主などとの連携が必要になります。地方再犯防止推進計画は、こうした地域の実情に応じた支援体制を整えるための政策手段といえます。
3.人権上の論点
再犯防止推進法は、治安対策としてだけでなく、刑を終えて出所した人やその家族の人権を考えるうえでも重要な法律です。犯罪行為には法的責任が伴い、犯罪被害者や遺族の尊厳、安全への配慮は欠かせません。その一方で、刑を終えた後も、就職、住居、地域生活から無期限に排除されるなら、本人の社会復帰は難しくなります。
人権上の論点は、犯罪への責任を問うことと、刑を終えた後の生活再建を妨げないことを区別できるかにあります。出所歴を理由に一律に雇用を拒まれる、住居を借りられない、家族まで地域で孤立する、といった状況は、本人や家族の生活基盤を狭めます。これは、再犯防止の面でも、社会復帰の面でも深刻な課題です。
再犯防止推進法が示す方向性は、犯罪をした人を社会から切り離し続けることではありません。就労、住居、福祉、教育、医療、地域支援を通じて生活の基盤を整え、再び犯罪に至らない環境をつくることにあります。刑を終えて出所した人およびその家族をめぐる人権課題を考える際には、被害者支援と社会復帰支援を対立的に扱わず、再犯防止推進法の枠組みの中で、具体的な支援と地域の安全を両立させる視点が必要になります。