国連高齢者原則とは

国連高齢者原則とは、正式には「高齢者のための国連原則」といい、高齢者の自立、参加、ケア、自己実現、尊厳を支えるための国際的な原則です。1991年12月16日に国連総会決議46/91で採択されました。条約ではありませんが、高齢者の権利を考えるうえで重要な基準であり、日本の高齢者福祉、介護保険、認知症施策、成年後見、高齢者虐待防止を考える際にも参照できる文書です。

1.国連高齢者原則の意味

国連高齢者原則は、高齢者を単に保護や介護の対象として見るのではなく、社会の中で自立し、参加し、必要なケアを受け、自己実現し、尊厳を持って生きる主体として扱うための原則です。国連人権高等弁務官事務所は、この原則を「自立」「参加」「ケア」「自己実現」「尊厳」の五つの柱で整理しています。

「自立」には、食料、水、住まい、衣服、医療、所得、家族や地域の支援、働く機会、教育や訓練、安全な生活環境などが含まれます。「参加」には、社会に統合され、政策形成に参加し、経験や知識を若い世代と共有することが含まれます。「ケア」には、家族や地域による支援、医療、社会サービス、人権と自由の尊重が含まれます。

「自己実現」は、高齢者が自らの可能性を発展させ、教育、文化、精神的活動、レクリエーションなどに参加できることを指します。「尊厳」は、高齢者が搾取、身体的・精神的虐待から自由であり、年齢、性別、人種、民族、障害、経済状態などに関係なく、公正に扱われることを求めています。

2.制度・法律との関係

国連高齢者原則は条約ではないため、締約国に直接の法的義務を課すものではありません。しかし、国連総会は各国政府に対し、可能な限り自国の政策やプログラムにこの原則を組み入れるよう促しました。そのため、高齢者政策を国際人権の視点から点検する際の基本文書として扱われています。

日本では、高齢者福祉や介護に関する国内制度として、老人福祉法、介護保険法、高齢者虐待防止法、認知症基本法、成年後見制度などがあります。これらの制度は、医療や介護サービスの提供、相談支援、権利擁護、虐待防止、地域生活支援を扱います。国連高齢者原則は、こうした国内制度が高齢者を「支援される人」としてだけでなく、意思を持ち社会に参加する主体として扱っているかを確認する基準になります。

厚生労働省の資料でも、「高齢者のための国連原則」は、高齢者の「自立」「参加」「ケア」「自己実現」「尊厳」の五つの原則として紹介されています。日本の高齢社会政策では、介護予防、地域包括ケア、認知症施策、在宅医療、成年後見、高齢者虐待防止などが進められていますが、これらは本人の尊厳と自己決定を支える仕組みとして検討される必要があります。

3.人権上の論点

国連高齢者原則の人権上の論点は、高齢者を「守るべき弱者」としてだけ扱うことの限界を示している点にあります。高齢者には、必要な支援やケアを受ける権利がある一方で、自分の生活を選び、社会に参加し、経験や能力を生かす権利もあります。介護や安全確保を理由に、外出、金銭管理、住まい、医療、交友関係を一方的に制限すれば、本人の尊厳が損なわれます。

認知症、要介護状態、単身生活、低所得、障害、家族関係の悪化などが重なると、高齢者は虐待、孤立、財産搾取、医療・介護からの排除を受けやすくなります。国連高齢者原則は、こうした問題を、福祉サービスの不足だけでなく、尊厳、参加、自己実現の問題として捉える手がかりになります。

日本でこの用語を扱う場合、介護保険制度や高齢者虐待防止だけでなく、地域包括支援センター、成年後見制度、認知症基本法、ACP・人生会議、高齢者の就労、孤独・孤立対策とも関係します。国連高齢者原則という用語は、高齢者政策を、介護と医療の制度論にとどめず、人権と尊厳の問題として理解するための基本用語です。

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