バンコク・ルールズとは

バンコク・ルールズとは、正式には「女性被拘禁者の処遇及び女性犯罪者の非拘禁措置に関する国連規則」といい、女性受刑者、女性被拘禁者、女性犯罪者の処遇と非拘禁措置について定めた国連規則です。2010年12月21日に国連総会決議65/229で採択されました。刑務所や拘禁制度が長く男性を標準に設計されてきたことを踏まえ、女性特有の事情、妊娠・出産、育児、性暴力被害歴、医療、家族関係、社会復帰を考慮するための国際基準です。

1.バンコク・ルールズの意味

バンコク・ルールズは、女性を収容する刑務所や拘禁施設において、女性の健康、尊厳、安全、家族関係を守るための基準です。ネルソン・マンデラ・ルールズが被拘禁者一般の処遇基準を示すのに対し、バンコク・ルールズは女性被拘禁者と女性犯罪者の特有のニーズに焦点を当てています。

対象となるのは、刑務所に収容された女性だけではありません。未決拘禁中の女性、少年を含む女性犯罪者、非拘禁措置の対象となる女性も含まれます。規則は、入所時の健康診断、妊娠中・出産後のケア、子どもとの関係、身体検査、精神的支援、薬物依存、暴力被害歴への配慮、社会復帰、地域での代替措置などを扱います。

バンコク・ルールズで重要なのは、女性犯罪者に対して、可能な場合には拘禁以外の措置を検討する考え方です。特に妊娠中の女性や、子どもの主たる養育者である女性については、拘禁が本人だけでなく子どもや家族にも深刻な影響を及ぼすため、非拘禁措置の活用が重視されます。

2.制度・法律との関係

バンコク・ルールズは条約ではありませんが、女性被拘禁者の処遇と女性犯罪者への非拘禁措置に関する国際基準として参照されています。国連総会決議65/229は、加盟国に対し、女性被拘禁者と女性犯罪者の特有のニーズを踏まえ、関連する立法、手続、政策、行動計画の策定や実施にあたり、バンコク・ルールズを参照するよう促しています。

この規則は、ネルソン・マンデラ・ルールズ、東京ルールズ、子どもの権利条約、女性差別撤廃条約、拷問等禁止条約などとも関係します。被拘禁者一般の最低基準だけでは十分に扱いきれない、女性の身体、妊娠、出産、育児、性暴力被害、貧困、依存症、家庭内暴力などの事情を刑事司法の中でどう考慮するかが問題になります。

日本では、女子刑務所、留置施設、少年院、保護観察、再犯防止、女性犯罪者の社会復帰支援などと関係します。法務省も、女性犯罪者の再犯防止と社会復帰に関する説明の中で、バンコク・ルールズを「女性被拘禁者の処遇及び女性犯罪者の非拘禁措置に関する国連規則」として紹介しています。

3.人権上の論点

バンコク・ルールズの人権上の論点は、刑事司法や拘禁制度が、女性の経験や身体、生活実態を十分に考慮してきたかという点にあります。女性被拘禁者の中には、性暴力、家庭内暴力、貧困、依存症、精神的困難、子どもの養育責任を抱えてきた人がいます。そうした背景を無視して一律に管理すれば、拘禁がさらなる被害や孤立を生む場合があります。

妊娠・出産・育児の問題も重要です。妊娠中の女性が拘禁される場合、適切な産前産後の医療、栄養、外部医療機関へのアクセス、出産時の尊厳、子どもとの関係が保障されなければなりません。子どもの最善の利益を考える場合、母親の拘禁が子どもの生活に与える影響も無視できません。

バンコク・ルールズは、女性犯罪者を特別扱いするための文書ではありません。男性を標準にした刑事施設や処遇を見直し、女性の健康、尊厳、安全、家族関係、社会復帰を実質的に保障するための基準です。日本でこの用語を扱う場合、女性受刑者、女性被疑者・被告人、保護観察、再犯防止、困難を抱える女性支援、子どもの権利を結びつけて考えるための基本用語になります。

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