ネルソン・マンデラ・ルールズとは、正式には「国連被拘禁者処遇最低基準規則」といい、刑務所などで自由を奪われた人の処遇について、国際的な最低基準を示した国連規則です。1955年に採択された被拘禁者処遇最低基準規則を改訂し、2015年12月17日に国連総会決議70/175で採択されました。長く収監された南アフリカ共和国のネルソン・マンデラ元大統領にちなみ、この名称で呼ばれています。
1.ネルソン・マンデラ・ルールズの意味
ネルソン・マンデラ・ルールズは、被拘禁者を管理の対象としてだけでなく、尊厳を持つ人として扱うための基準です。刑務所に収容された人であっても、人間としての尊厳や基本的人権を失うわけではありません。規則は、すべての被拘禁者が人間としての尊厳を尊重されるべきであり、拷問その他の残虐な、非人道的な、または品位を傷つける取扱いから保護されるべきであるとしています。
対象となるのは、受刑者だけではありません。刑事手続中の未決拘禁者、拘禁施設に収容される人、自由を奪われた人の処遇全般を考えるうえで参照されます。居室、衛生、食事、医療、運動、外部交通、懲罰、独居拘禁、身体検査、記録、苦情申立て、職員研修など、拘禁施設の運営全体に関わる内容を含みます。
この規則は条約ではないため、各国を直接拘束する国際条約とは異なります。しかし、被拘禁者処遇に関する国際的な最低基準として広く参照されており、拷問等禁止条約、自由権規約、各国の刑事施設法制、国内人権機関、NGOによる監視活動とも関係します。
2.制度・法律との関係
ネルソン・マンデラ・ルールズは、1955年に国連犯罪防止刑事司法会議で採択された被拘禁者処遇最低基準規則をもとにしています。その後、刑事司法、人権、医療、拘禁施設運営をめぐる国際基準の発展を踏まえ、2015年に大きく改訂されました。法務省の犯罪白書でも、同規則は刑事施設の管理全般に関するものとして説明されています。
改訂規則では、被拘禁者の尊厳、医療サービス、懲罰・制限措置、独居拘禁、拘禁中死亡の調査、苦情申立て、外部との連絡、職員研修などが重視されています。特に、期間を限定しない独居拘禁や長期の独居拘禁、暗いまたは常時点灯された居室への収容などは、禁止される取扱いとして示されています。
日本では、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律、刑事施設、留置施設、入国者収容所、少年院、婦人補導院などの処遇が、被拘禁者の権利保障という面で問題になります。ネルソン・マンデラ・ルールズは、日本の国内法そのものではありませんが、拘禁施設の処遇を国際基準から点検する際の参照軸になります。
3.人権上の論点
ネルソン・マンデラ・ルールズの人権上の論点は、自由を奪われた人ほど、外部から見えにくい環境で権利侵害を受けやすいという点にあります。拘禁されている人は、生活空間、移動、医療、情報、家族との連絡、苦情申立ての手段を施設側に大きく依存します。そのため、処遇の最低基準がなければ、不適切な管理や暴力、医療放置、過度な懲罰が見過ごされやすくなります。
刑務所や拘禁施設の目的は、単に人を隔離することではありません。規則は、拘禁刑の目的について、社会を犯罪から守り、再犯を減らすことであり、その目的は、被拘禁者が遵法的で自立した生活を送れるよう再統合を促す場合にのみ達成できるとしています。処罰と人間の尊厳は、切り離して考えることはできません。
日本でこの用語を扱う場合、刑事施設、留置施設、入管収容、拘禁中死亡、医療アクセス、独居拘禁、外部交通、苦情申立てなどと結びつきます。ネルソン・マンデラ・ルールズという用語は、自由を奪われた人の処遇を、管理や治安の問題だけでなく、人間の尊厳と再社会化の問題として考えるための基本用語です。