人種差別撤廃条約とは

人種差別撤廃条約とは、正式には「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」といい、人種、皮膚の色、世系、民族的または種族的出身に基づく差別を撤廃するための国際人権条約です。1965年に国連総会で採択され、1969年に発効しました。日本は1995年に加入しています。人種差別、民族差別、ヘイトスピーチ、外国人差別、アイヌ民族や在日コリアンなどをめぐる人権課題を考えるうえで、基本となる条約です。

1.人種差別撤廃条約の意味

人種差別撤廃条約は、人種差別を、政治的、経済的、社会的、文化的その他の公的生活の分野において、平等な立場で人権や基本的自由を認識し、享有し、行使することを妨げる区別、排除、制限、優先として定義しています。

この条約でいう人種差別は、肌の色やいわゆる人種だけに限られません。世系、民族的出身、種族的出身に基づく差別も含まれます。そのため、日本国内では、外国人、民族的少数者、アイヌ民族、在日コリアン、被差別部落の出身をめぐる差別などを考える際にも参照されることがあります。

条約は、人種差別をなくすため、締約国に対し、差別を撤廃する政策を遅滞なく進めることを求めています。国や地方公共団体が差別的な行為や慣行を行わないこと、差別を生じさせる法令や政策を見直すこと、私人間の人種差別も適当な方法で禁止・終了させること、人種間の理解を促進することが含まれます。

2.制度・法律との関係

人種差別撤廃条約は、国際人権条約の一つであり、締約国は定期的に人種差別撤廃委員会へ報告を行います。委員会は、政府報告を審査し、条約の実施状況について総括所見を出します。条約の内容は、国内法や行政施策、裁判、自治体の人権条例、教育・啓発の場面でも参照されます。

日本との関係では、平成7年に条約へ加入しました。日本国憲法第14条は法の下の平等を定めていますが、人種差別撤廃条約は、より具体的に、人種、皮膚の色、世系、民族的または種族的出身による差別の撤廃を求めています。日本国内では、ヘイトスピーチ解消法、アイヌ施策推進法、各自治体の差別解消条例、外国人住民への行政対応などと関係します。

条約第4条は、人種的優越や憎悪に基づく思想の流布、人種差別の扇動、人種差別を助長・扇動する団体などへの対応を定めています。ただし、日本は条約加入にあたり、第4条(a)および(b)について、憲法上保障される集会、結社、表現の自由その他の権利と整合する範囲で義務を履行する旨の留保を付しています。この点は、ヘイトスピーチ規制や差別扇動の刑事規制をめぐる議論と関係します。

3.人権上の論点

人種差別撤廃条約の人権上の論点は、差別を個人の偏見や感情だけの問題として扱わず、制度、慣行、社会構造の問題として捉える点にあります。差別的な発言、入居拒否、就職差別、学校でのいじめ、インターネット上の誹謗中傷、行政サービスへのアクセスの不平等などは、個別の出来事に見えても、民族的少数者や外国にルーツを持つ人々の生活全体に影響します。

条約は、単に「差別してはいけない」と述べるだけではありません。裁判所での平等な取扱い、身体の安全、政治参加、居住、移動、国籍、婚姻、財産、思想・良心・宗教、労働、住居、医療、社会保障、教育、文化活動、公共施設の利用など、幅広い権利について差別の撤廃を求めています。人種差別は、生活の一部だけでなく、社会参加全体を制限する問題です。

日本でこの条約を読む場合、ヘイトスピーチ、外国人差別、アイヌ民族への差別、在日コリアンへの差別、被差別部落の出身をめぐる差別など、複数の人権課題と結びつきます。人種差別撤廃条約という用語は、国内の差別問題を、国際人権基準に照らして考えるための基本用語です。

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