社会的養護とは

社会的養護とは、保護者がいない子どもや、保護者のもとで生活することが適当でない子どもを、公的責任で養育・保護する仕組みをいいます。児童虐待、保護者の病気、家庭の困難などにより家庭で暮らすことが難しい子どもに対し、里親、ファミリーホーム、乳児院、児童養護施設などを通じて、安全な生活と成長を支える制度です。

1.社会的養護の意味

社会的養護は、家庭で安全に暮らすことが難しい子どもを、社会全体で育てるための仕組みです。子どもを一時的に保護するだけでなく、生活の場、養育、教育、医療、心理的支援、家族との関係調整、自立に向けた支援まで含みます。

社会的養護の対象となる背景は一つではありません。児童虐待、ネグレクト、保護者の病気や死亡、経済的困難、家庭内暴力、養育者の不在、子どもの障害や発達上の課題などが重なることがあります。子ども本人に責任があるわけではなく、家庭だけで支えきれない状況に対し、公的な支援を行うものです。

社会的養護には、大きく分けて家庭養護と施設養護があります。家庭養護には、里親制度やファミリーホームがあります。里親は、家庭で暮らすことが難しい子どもを自分の家庭に迎え入れて養育する制度です。ファミリーホームは、養育者の家庭で複数の子どもを養育する形の事業です。

施設養護には、乳児院、児童養護施設、児童心理治療施設、児童自立支援施設などがあります。児童養護施設は、保護者のない子どもや虐待などにより家庭で暮らすことが難しい子どもに、生活の場と養育を提供する施設です。近年は、大規模な集団生活だけでなく、できるだけ家庭に近い環境で生活できるよう、小規模化や地域分散化も課題になっています。

2.制度・法律との関係

社会的養護は、児童福祉法を中心とする制度です。児童福祉法は、すべて児童は適切に養育され、生活を保障され、心身の健やかな成長と発達、自立が図られることなどを基本理念としています。国や地方公共団体には、子どもが家庭で健やかに養育されるよう保護者を支援する責任があります。

制度上は、家庭養育優先原則が重要です。子どもが家庭で養育されることを基本とし、家庭での養育が困難または適当でない場合には、里親やファミリーホームなど、できるだけ家庭に近い環境での養育を優先する考え方です。施設での養育が必要な場合にも、子ども一人ひとりの状況に応じた個別的な養育が求められます。

社会的養護の入口には、児童相談所があります。児童相談所は、虐待通告や相談を受け、安全確認、一時保護、家庭への支援、里親委託、施設入所などに関わります。市町村、学校、保育所、医療機関、警察、福祉機関などとの連携も欠かせません。

社会的養護を経験した子どもや若者への自立支援も課題です。施設や里親家庭を離れた後、住まい、進学、就職、生活費、人間関係、相談相手の確保が不十分だと、孤立や生活困窮につながる場合があります。社会的養護は、子ども時代の保護だけでなく、成人期への移行を支える制度として考える必要があります。

3.人権上の論点

社会的養護の人権上の論点は、家庭で暮らせない子どもが、どのような環境で、誰に支えられ、どのように成長する権利を保障されるかという点にあります。子どもは、家庭環境を選ぶことができません。虐待や養育困難の影響を受けた子どもに、安全な生活の場を用意することは、子どもの生命、発達、尊厳を守るための基本的な責任です。

社会的養護では、子どもの最善の利益を中心に考える必要があります。保護者との関係をどうするか、里親委託や施設入所をどう判断するか、きょうだいを一緒に暮らせるようにするか、学校や地域とのつながりをどう保つかは、子どもの生活に深く関わります。大人や制度の都合だけで決めるのではなく、子どもの意見や気持ちを聴き、年齢や発達の程度に応じて考慮することが求められます。

施設や里親家庭で暮らす子どもには、安心して生活する権利があります。暴力、暴言、過度な管理、プライバシー侵害、不適切な指導があれば、保護の場そのものが新たな人権侵害の場になりかねません。子どもが困ったときに相談できる仕組み、外部の目、苦情申出の制度、権利擁護の仕組みが必要です。

社会的養護を受けた経験は、子どもや若者の責任ではありません。進学や就職、住まいの確保、保証人、生活費、孤立などで不利にならないよう、社会的養護経験者への継続的な支援が欠かせません。社会的養護は、子どもを一時的に預かる制度ではなく、子どもが安全に育ち、将来にわたって自分の生活を築けるよう支える人権保障の仕組みです。

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