いじめとは、児童生徒に対して、一定の人間関係にある他の児童生徒が、心理的または物理的な影響を与える行為をし、その対象となった児童生徒が心身の苦痛を感じているものをいいます。からかい、仲間外れ、暴力、金品の要求、悪口だけでなく、インターネットやSNSを通じて行われるネットいじめも含まれます。深刻な被害や長期欠席につながる場合は、いじめの重大事態として扱われます。
1.いじめの意味
いじめは、子ども同士の単なるけんかや一時的なトラブルとは異なります。相手が心身の苦痛を感じている場合、行為をした側に「いじめるつもりはなかった」という認識があっても、いじめとして捉える必要があります。いじめ防止対策推進法の定義では、被害を受けた児童生徒が苦痛を感じているかどうかが重視されています。
いじめには、冷やかしやからかい、悪口、無視、仲間外れ、集団による排除、軽くぶつかる、叩く、蹴る、物を隠す、金品を要求する、嫌なことをさせるなど、さまざまな形があります。周囲から見れば小さな出来事に見えても、繰り返されることで、被害を受けた子どもの安心感や自尊感情を深く傷つけることがあります。
ネットいじめは、SNS、メッセージアプリ、掲示板、動画投稿サイト、オンラインゲームなどを通じて行われるいじめです。悪口を書き込む、写真や動画を無断で拡散する、グループから外す、なりすましをする、個人情報をさらすといった行為があります。ネット上のいじめは、学校外や家庭内でも続きやすく、投稿が保存・拡散されることで被害が長期化する場合があります。
いじめは、被害者と加害者だけの問題ではありません。見ている子、同調する子、止めようとしても止められない子、気づいていない大人など、周囲の関係性の中で深刻化することがあります。そのため、いじめを個人間の性格や相性の問題だけで見るのではなく、学級、部活動、学校、家庭、地域、インターネット環境を含めて考える必要があります。
2.制度・法律との関係
いじめに関係する中心的な法律が、いじめ防止対策推進法です。同法は、いじめの防止、早期発見、いじめへの対処について、国、地方公共団体、学校、保護者などの責務を定めています。学校には、学校いじめ防止基本方針の策定や、いじめ防止等の対策のための組織を置くことが求められています。
いじめ防止対策推進法は、いじめを「心理的又は物理的な影響を与える行為」であり、インターネットを通じて行われるものを含むと定義しています。つまり、教室内での暴力や無視だけでなく、SNS上の投稿やメッセージによる攻撃も、法律上のいじめに含まれます。
重大事態とは、いじめにより児童生徒の生命、心身または財産に重大な被害が生じた疑いがある場合や、いじめにより相当の期間、学校を欠席することを余儀なくされている疑いがある場合をいいます。ここで重要なのは、重大な被害が確定してからではなく、「疑い」の段階で重大事態として扱い、調査や対応を始める点です。
重大事態が発生した場合、学校の設置者または学校は、事実関係を明確にするための調査を行い、被害を受けた児童生徒と保護者に必要な情報を適切に提供することになります。学校だけで抱え込むのではなく、教育委員会、自治体、専門家、警察、福祉機関などと連携することも課題になります。
3.人権上の論点
いじめの人権上の論点は、子どもの安全、尊厳、学ぶ権利、安心して学校生活を送る権利が侵害される点にあります。学校は、子どもが学び、成長し、人間関係を築く場ですが、いじめが続くと、その場所自体が恐怖や孤立の原因になります。
いじめを「子ども同士の問題」として軽く扱うと、被害を受けた子どもはさらに追い詰められます。「やり返せばよい」「気にしすぎだ」「相手にも悪気はない」といった言葉は、被害者に我慢を求める結果になりかねません。いじめの有無を判断する際には、大人から見た深刻さではなく、被害を受けた子どもがどのような苦痛を感じているかを確認する必要があります。
ネットいじめでは、被害が学校の外まで広がる点が深刻です。自宅にいてもメッセージが届き、投稿が拡散され、第三者が閲覧することで、逃げ場がなくなる場合があります。削除しても画像や文章が保存されている可能性があり、被害者のプライバシー、名誉、安心して生活する権利を長く損なうことがあります。
いじめへの対応では、被害を受けた子どもの安全確保を最優先にする必要があります。同時に、加害行為をした子どもへの指導、周囲の子どもへの働きかけ、学級や学校の環境改善、保護者への説明、再発防止まで含めて考える必要があります。いじめを見逃さないことは、子どもの権利を学校現場で具体的に守るための基本的な対応です。