こどもまんなか社会とは

こどもまんなか社会とは、すべてのこども・若者が、身体的・精神的・社会的に幸せな状態で生活できる社会を目指す考え方です。こども基本法やこども大綱に基づくこども政策の基本的な方向を示す言葉であり、子育て支援だけでなく、こども・若者を権利の主体として尊重する視点を含んでいます。

1.こどもまんなか社会の意味

こどもまんなか社会は、こどもや若者を政策の中心に置き、その成長、生活、学び、遊び、休息、意見表明、社会参加を支える社会を意味します。単に「子育て世帯を支援する」という意味にとどまらず、こども自身の権利や意思を尊重し、こども・若者の現在と将来を見据えて施策を組み立てる考え方です。

ここでいう「まんなか」は、こどもを大人の都合に合わせるのではなく、こども・若者の視点から制度や社会環境を見直すという意味を持ちます。学校、家庭、地域、医療、福祉、司法、雇用、まちづくり、インターネット環境など、こどもが生活するあらゆる場面が関係します。

こどもまんなか社会は、乳幼児期、学童期、思春期、青年期など、ライフステージに応じた切れ目のない支援を重視します。虐待、貧困、いじめ、不登校、障害、ヤングケアラー、社会的養護、若者の就労や孤立など、こども・若者が直面する課題は一つの制度だけでは対応しにくいためです。

注意が必要なのは、こどもまんなか社会を「こどもを甘やかす社会」と理解することではありません。こどもを一人の人格として尊重し、発達段階に応じた保護と参加の機会を保障する考え方です。大人の責任を軽くするものではなく、家庭、学校、行政、地域、企業がこども・若者の育ちを支える責任を明確にする考え方だといえます。

2.制度・法律との関係

こどもまんなか社会は、こども基本法とこども大綱に深く関係します。こども基本法は、こども施策を社会全体で総合的かつ強力に推進するための包括的な基本法です。同法は、すべてのこどもが個人として尊重され、基本的人権が保障され、差別的取扱いを受けないことなどを基本理念に掲げています。

こども大綱は、こども基本法に基づいて定められる、こども施策の基本的な方針です。これまで別々に進められてきた少子化社会対策、子供・若者育成支援、子どもの貧困対策などを一体的に整理し、こども・若者に関する施策を総合的に進める役割を持ちます。

こども家庭庁は、こども政策の司令塔として、こどもまんなか社会の実現に向けた施策を進める行政機関です。保育、少子化対策、子どもの貧困、児童虐待防止、社会的養護、障害児支援、こどもの居場所づくり、若者支援など、複数の分野にまたがる課題を扱います。

こどもまんなか社会は、児童福祉法、児童虐待防止法、いじめ防止対策推進法、教育基本法、学校教育法、母子保健法、子ども・子育て支援法などとも関係します。制度ごとに所管や手続は異なりますが、こども・若者の権利と利益を中心に置いて横断的に考えることが、この言葉の制度的な意味になります。

3.人権上の論点

こどもまんなか社会の人権上の論点は、こどもを「保護される対象」としてだけでなく、「権利を持つ主体」として扱う点にあります。こどもは大人より弱い立場に置かれやすく、家庭、学校、施設、地域の中で不利益を受けても、自分だけで訴えたり環境を変えたりすることが難しい場合があります。

こどもを中心に考えるということは、こどもの意見を形式的に聞くだけでは足りません。安心して話せる場を用意し、話したことで不利益を受けないようにし、その意見をどのように考慮したのかを説明する必要があります。こどもの意見表明権は、こどもまんなか社会を実質的なものにするための重要な要素です。

こどもまんなか社会には、格差の問題も含まれます。生まれ育った家庭の経済状況、障害の有無、国籍やルーツ、地域、親の就労状況、家庭内の暴力や孤立などによって、学び、健康、安全、遊び、進路の機会が左右される場合があります。こども本人には選べない環境によって将来の選択肢が狭まることは、人権上の課題です。

一方で、こども政策が少子化対策だけに回収されることにも注意が必要です。出生数や将来の労働力の確保は政策上の課題ですが、こども・若者は社会の将来を担うためだけの存在ではありません。現在を生きる一人の人間として、尊厳、安全、意見、学び、休息、遊び、社会参加が保障されることが、こどもまんなか社会の中心にあります。

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