ジェンダー・ギャップ指数とは、世界経済フォーラムが各国の男女格差を数値化して公表している国際指標です。英語ではGlobal Gender Gap Indexと呼ばれます。経済、教育、健康、政治の4分野で、男性と女性の間にどれだけ格差があるかを比較するもので、男女平等の達成状況を国際的に見る際によく使われます。
1.ジェンダー・ギャップ指数の意味
ジェンダー・ギャップ指数は、男女の間にある格差を示す指標です。一般に「ジェンダー平等のランキング」として紹介されますが、正確には、各国の発展度や豊かさそのものを測るものではなく、男性と女性の間の差がどの程度縮まっているかを見るものです。
指数は、経済参加と機会、教育達成、健康と生存、政治的エンパワーメントの4分野から構成されます。たとえば、経済分野では労働参加、賃金、管理職比率などが問題になり、政治分野では国会議員や閣僚などに占める女性の割合が関係します。教育分野では就学状況、健康分野では出生時の性比や健康寿命などが見られます。
数値は1に近いほど男女格差が小さいことを示します。ただし、ジェンダー・ギャップ指数は、女性の生活全体の困難をすべて測るものではありません。たとえば、DV、性暴力、ケア負担、貧困、非正規雇用、ひとり親世帯の状況などは、指数だけでは十分に把握できない場合があります。
男女間賃金格差は、ジェンダー・ギャップ指数と関連しますが、同じものではありません。男女間賃金格差は、男性と女性の賃金の差に注目する指標です。ジェンダー・ギャップ指数は、賃金だけでなく、教育、健康、政治参加なども含めて、より広く男女格差を見ます。
2.制度・法律との関係
ジェンダー・ギャップ指数そのものは、日本の法律上の制度ではありません。世界経済フォーラムが国際比較のために作成している指標です。ただし、指数で示される課題は、日本の男女共同参画政策、雇用政策、女性活躍推進、政治分野における男女共同参画などと深く関係します。
日本では、男女共同参画社会基本法が、男女が社会の対等な構成員として、あらゆる分野に参画する機会を確保することを目的としています。女性活躍推進法は、企業や国・地方公共団体に対し、女性の採用、継続就業、管理職登用などの状況把握や行動計画の策定を求めています。
雇用分野では、男女雇用機会均等法が性別を理由とする差別的取扱いを禁止しています。育児・介護休業法は、育児や介護と仕事の両立を支える制度です。これらの制度は、ジェンダー・ギャップ指数のうち、特に経済参加と機会の分野に関係します。
政治分野では、政治分野における男女共同参画推進法があります。候補者や議員に占める女性の割合が低い場合、政策決定の場に多様な経験が反映されにくくなります。ジェンダー・ギャップ指数で日本が低く評価される背景には、政治分野や経済分野での女性参画の遅れが大きく関係しています。
2025年版のジェンダー・ギャップ指数で、日本は148か国中118位でした。順位だけで社会の実態を単純に判断することはできませんが、国際比較の中で、日本の男女格差がどの分野で残っているかを確認する材料になります。
3.人権上の論点
ジェンダー・ギャップ指数の人権上の論点は、性別によって機会や権限が偏っていないかを可視化する点にあります。女性が教育を受けられていても、就職後に管理職へ進みにくい、賃金が低い、政治の場に少ない、家事・育児・介護の負担が偏るという状況があれば、形式的な平等だけでは不十分です。
指数は、社会の中にある「見えにくい格差」を示す入口になります。たとえば、女性の管理職比率が低い場合、本人の希望や能力だけでなく、長時間労働を前提とする働き方、転勤や残業を評価する人事制度、育児期のキャリア中断、無意識の偏見、ハラスメントの有無などを確認する必要があります。
政治分野の格差も、人権と関係します。女性が意思決定の場に少ないと、子育て、介護、性暴力、雇用、医療、貧困など、生活に関わる課題が政策に反映されにくくなる場合があります。代表性の問題は、単に女性議員や女性役員の人数の問題ではなく、誰の経験が社会の決定に届いているのかという問題です。
一方で、ジェンダー・ギャップ指数だけに頼ると、個別の被害や複合的な不利益が見落とされるおそれもあります。障害のある女性、外国人女性、ひとり親、性的少数者、高齢女性、若年女性などが直面する困難は、単一の順位や数値では十分に表れません。ジェンダー・ギャップ指数は、男女格差を考えるための入口であり、実際の人権課題を把握するには、雇用、教育、家庭、政治、福祉、司法の現場をあわせて見る必要があります。