CSRとは、Corporate Social Responsibilityの略で、日本語では「企業の社会的責任」と訳されます。企業が利益を追求するだけでなく、従業員、消費者、取引先、地域社会、環境などに与える影響を考え、社会の一員として責任ある行動を取るという考え方です。
1.CSRの意味
CSRは、企業が法令を守るだけでなく、社会から求められる責任を自覚し、事業活動の中で倫理的・社会的な配慮を行うことを指します。寄付やボランティア活動などの社会貢献だけでなく、労働環境の改善、消費者保護、環境負荷の低減、公正な取引、差別やハラスメントの防止などもCSRに含まれます。
かつてCSRは、企業が本業とは別に行う社会貢献活動として語られることも少なくありませんでした。しかし現在では、企業活動そのものが社会に与える影響を管理する考え方として理解されるようになっています。たとえば、商品やサービスの供給過程で人権侵害が起きていないか、取引先に過度な負担をかけていないか、従業員が安全で尊重された環境で働けているかといった点が問われます。
2.制度・法律との関係
CSRそのものは、単一の法律で一律に義務づけられている制度ではありません。企業が自主的に取り組むべき社会的責任として発展してきた考え方です。ただし、CSRに関係する分野には、労働法、消費者保護法制、環境法制、個人情報保護法、男女雇用機会均等法、障害者差別解消法など、さまざまな法律が関わります。
近年は、CSRとESG、サステナビリティ、人権デュー・ディリジェンスとの関係も重視されています。CSRが比較的広く「企業の社会的責任」を示す言葉であるのに対し、ESGは環境・社会・ガバナンスを投資や経営評価の軸として見る考え方です。人権デュー・ディリジェンスは、企業活動による人権への悪影響を特定し、防止・軽減し、対応状況を説明する実務的な手法を指します。
このためCSRは、企業イメージ向上のための活動にとどまらず、企業統治、リスク管理、取引先管理、労務管理と結びつく概念として扱われるようになっています。
3.人権上の論点
CSRにおける人権上の論点は、企業が誰に対して、どのような影響を及ぼしているかを具体的に見る点にあります。企業は雇用主であり、商品・サービスの提供者であり、取引関係を通じて他社の労働環境にも影響を与える存在です。そのため、社内の差別やハラスメントだけでなく、サプライチェーン上の強制労働、児童労働、外国人労働者への不適切な扱い、消費者への不利益、地域住民への影響などもCSRの対象になります。
注意すべきなのは、CSRを「良いことをする活動」とだけ捉えると、企業活動によって生じる負の影響が見えにくくなることです。人権の視点では、企業が寄付や啓発活動を行っているかだけでなく、本業の中で人を傷つけたり、排除したり、不利な立場に置いたりしていないかが問われます。
CSRは、企業が社会から信頼を得るための広報活動ではなく、事業活動の中で人の尊厳や安全、公正な参加機会を損なわないための基本的な考え方として理解する必要があります。特にビジネスと人権の議論では、CSRは出発点であり、実際には人権方針の策定、取引先を含むリスク確認、相談・救済の仕組みづくりへと具体化されることになります。