結婚差別とは、本人または結婚相手の出身地、家族関係、障害、国籍、民族、職業、宗教などを理由に、結婚を反対したり、破談に追い込んだりする差別を指します。同和問題・部落差別との関係では、被差別部落の出身であることや、その地域と関係があることを理由に、本人同士の意思とは別に結婚を妨げる行為が問題とされてきました。
1.結婚差別の意味
結婚差別は、結婚しようとする二人の意思ではなく、出身や家柄、地域、家族関係などを理由に、周囲が結婚を認めない、反対する、関係を断たせようとする行為です。本人の人格や生活能力とは関係のない属性を理由に、人生上の重要な選択を制限する点に問題があります。
同和問題・部落差別では、相手や相手の家族が被差別部落の出身であると分かったことを理由に、親族が結婚に反対する、交際をやめさせる、身元調査を行う、といった形で結婚差別が現れてきました。差別を受ける側だけでなく、結婚しようとする二人の関係そのものを傷つける点に特徴があります。
結婚差別は、表立って「差別」と言われない形で起きることもあります。「家柄が合わない」「親族が納得しない」「将来苦労する」などの言葉で語られても、その背後に出身地や家族関係への偏見がある場合、実質的には差別に当たります。
2.制度・法律との関係
結婚は、個人の尊厳と両性の本質的平等を基本とする制度です。日本国憲法第24条は、婚姻について、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本としています。結婚差別は、この本人同士の意思を、出身や家族関係への偏見によって妨げる行為です。
部落差別解消推進法は、現在もなお部落差別が存在することを前提に、国と地方公共団体に相談体制の充実、教育・啓発、実態調査を進める責務を定めています。結婚差別は、同法に列挙された個別類型ではありませんが、部落差別が日常生活の中で具体的な不利益として現れる代表的な場面の一つです。
結婚差別は、身元調査とも深く関係します。結婚に際して、相手の本籍、出身地、家族関係、居住歴などを調べる行為は、被差別部落の出身であるかどうかを探る目的で行われることがあります。戸籍や住民票の不正取得、興信所・探偵業者への依頼、インターネット上の地名情報の検索などが、差別的な判断に使われる危険があります。
自治体が本人通知制度を設けたり、同和問題に関する啓発を行ったりしているのは、こうした身元調査を通じた結婚差別を防ぐためでもあります。結婚差別は家庭内の問題として片付けられがちですが、個人情報保護、相談支援、差別防止教育と関わる社会的な課題です。
3.人権上の論点
結婚差別の人権上の論点は、本人が選んだ相手と家庭を築く自由が、出身や家族関係への偏見によって侵害される点にあります。結婚は、生活、家族形成、将来設計に関わる重要な選択です。その選択が、本人の努力では変えられない属性によって妨げられれば、個人の尊厳が深く傷つけられます。
同和問題・部落差別における結婚差別は、差別意識が家庭や親族関係の中で再生産されやすいことを示しています。公的な制度や職場で差別的な扱いが禁止されても、結婚の場面で「親族の反対」「家の問題」として差別が残れば、被差別部落出身者への偏見は生活の深い部分に残り続けます。
結婚差別をなくすには、結婚する本人同士の意思を尊重することに加え、身元調査をしない、頼まない、調査に協力しないという対応が必要です。家族や親族が不安を口にする場合でも、その不安が事実に基づくものなのか、出身や地域への偏見に基づくものなのかを切り分ける必要があります。
結婚差別を用語集で扱う意義は、部落差別が過去の制度や歴史だけの問題ではなく、現在の家族関係や人生選択の場面にも関わることを示す点にあります。結婚をめぐる差別は、本人の幸福追求と家族形成の自由に直接関わる問題です。