児童相談所虐待対応ダイヤル189とは、子どもへの虐待が疑われる場合に、全国共通番号「189」に電話することで、近くの児童相談所につながる相談・通告窓口です。「いちはやく」と読まれ、虐待を受けていると思われる子どもを見つけた人、子育てに悩む保護者、近隣や学校などで気になる様子に気づいた人が利用できます。通告や相談は匿名でも行うことができ、通告した人や相談内容に関する秘密は守られます。
1.児童相談所虐待対応ダイヤル189の意味
児童相談所虐待対応ダイヤル189は、子どもの虐待を早期に把握し、児童相談所につなぐための全国共通の電話番号です。児童虐待は家庭内で起こることが多く、外から見えにくい場合があります。そのため、「虐待かもしれない」と思った段階で相談・通告できる入口が必要になります。
189は、虐待を確信している場合だけに使う番号ではありません。子どもの泣き声や怒鳴り声が続いている、子どもに不自然なけががある、衣服や食事の状態が心配である、保護者が極度に追い詰められているように見える、といった場合にも利用できます。結果として虐待ではなかった場合でも、子どもや家庭の安全を確認するきっかけになります。
児童相談所は、通告や相談を受けた内容をもとに、子どもの安全確認、家庭状況の把握、保護者への支援、必要に応じた一時保護などを検討します。189は、子どもを家庭から直ちに引き離すためだけの番号ではなく、子どもの安全と家庭への支援を早く始めるための窓口です。
保護者自身が相談することもできます。子育てがつらい、子どもに強く当たってしまう、手を上げそうになる、家族だけでは抱えきれないといった場合に、早めに相談することは、虐待の予防にもつながります。
2.制度・法律との関係
児童相談所虐待対応ダイヤル189は、児童福祉法や児童虐待防止法に関係する制度です。児童虐待防止法は、児童虐待を身体的虐待、性的虐待、ネグレクト、心理的虐待に分けて整理しています。殴る、蹴るといった暴力だけでなく、食事や医療を十分に与えない、子どもの前で配偶者への暴力を行う、著しい暴言を浴びせるといった行為も問題になります。
児童虐待防止法では、児童虐待を受けたと思われる児童を発見した人は、児童相談所などに通告しなければならないとされています。通告は、専門職だけでなく、地域住民、親族、学校、保育所、医療機関など、子どもの異変に気づいた人に関わる仕組みです。
189に電話すると、発信した地域に応じて管轄の児童相談所につながります。一部のIP電話からはつながらない場合がありますが、固定電話や携帯電話から利用できます。こども家庭庁は、子どもや保護者のSOSを早く受け止めるため、令和元年12月3日から189の通話料を無料化しています。
児童虐待は、DV、貧困、孤立、精神的な不調、障害、介護、ひとり親家庭の困難などと重なる場合があります。そのため、児童相談所だけでなく、市区町村、こども家庭センター、学校、保育所、医療機関、警察、福祉機関などとの連携が必要になります。
3.人権上の論点
児童相談所虐待対応ダイヤル189の中心には、子どもの生命、安全、成長発達、意見を尊重される権利を守るという課題があります。子どもは、家庭内で起きていることを自分で外部に説明できないことがあります。特に幼い子ども、障害のある子ども、保護者への恐怖や遠慮がある子どもは、被害を言葉にすることが難しい場合があります。
児童虐待を「家庭のしつけ」や「親子の問題」として放置すると、子どもの身体や心に長期的な影響が残るおそれがあります。暴力、暴言、無視、過度な支配、面前DVなどは、子どもの尊厳と安心して育つ環境を損なう行為です。子どもの権利の視点からは、家庭の中であっても、暴力や放置から守られることは基本的な権利です。
一方で、虐待対応は、保護者を一方的に責めるだけでは十分ではありません。保護者が孤立し、経済的困難や心身の不調を抱え、支援につながらないまま追い詰められている場合もあります。189への相談は、子どもの安全確認と同時に、家庭が必要な支援につながる入口にもなります。
人権上の論点は、子どもの安全を最優先にしながら、家庭への支援、保護者への相談支援、地域での見守りをどう組み合わせるかにあります。189は、「確証があるときだけ使う番号」ではなく、子どもの異変に気づいた人が、児童相談所につなぐための制度です。早い相談や通告が、子どもの命と生活を守る出発点になります。