DV相談プラスとは、配偶者やパートナー、交際相手などからの暴力に悩む人が、電話やチャットなどで相談できる内閣府の相談窓口です。暴力を受けている本人だけでなく、子どもへの影響が心配な場合、今すぐ逃げたい場合、これがDVに当たるのか分からない場合にも利用できます。DV相談ナビが最寄りの相談機関につなぐ仕組みであるのに対し、DV相談プラスは、より多様な相談手段を用意した全国向けの窓口として設けられています。
1.DV相談プラスの意味
DV相談プラスは、DV被害について専門の相談員に相談できる窓口です。DVとは、殴る、蹴るなどの身体的暴力だけを指すものではありません。怒鳴る、無視する、人格を否定する、交友関係やスマートフォンを監視する、生活費を渡さない、働くことを制限する、性的な行為を強要する、といった行為もDVに含まれます。
相談できる内容は、明確な暴力被害に限られません。「これってDVなのか」「家を出たいが行き先がない」「子どもの前で暴力や暴言がある」「相手に相談したことを知られたくない」「別れた後もつきまとわれている」といった段階でも相談できます。
DV相談プラスの特徴は、電話だけでなく、チャットなどを通じた相談にも対応している点です。声を出して電話することが難しい状況にある人、同居相手に会話を聞かれる危険がある人、まず文字で状況を整理したい人にとって、相談手段が複数あることは利用のしやすさに関わります。
この窓口は、被害者に判断を迫る場所ではありません。すぐに避難するか、警察に届けるか、家族に話すかを一人で決められない場合でも、現在の危険度、利用できる支援、今後の選択肢を相談員と一緒に整理するために利用できます。
2.制度・法律との関係
DV相談プラスは、配偶者暴力防止法や男女共同参画政策に関わる相談支援の一つです。配偶者暴力防止法は、配偶者からの暴力を防ぎ、被害者を保護するための制度を定めています。相談、一時保護、保護命令、関係機関との連携などが関係します。
DV被害の相談先としては、DV相談プラスのほか、DV相談ナビ、配偶者暴力相談支援センター、警察、自治体の女性相談窓口、福祉事務所、児童相談所、民間支援団体などがあります。DV相談ナビは、全国共通番号から最寄りの相談機関へつなぐ仕組みです。DV相談プラスは、電話やチャットなどを通じて、相談者の状況に応じた支援につなげる入口として使われます。
緊急に生命や身体の危険がある場合は、相談窓口ではなく警察への通報が必要になる場合があります。DV相談プラスは、危険が差し迫っているかどうかを含め、次にどの機関へつながるべきかを整理する役割も持ちます。
DVは、子どもへの虐待とも接点があります。家庭内で子どもが暴力や暴言を見聞きすることは、児童虐待のうち心理的虐待に当たるおそれがあります。そのため、DV相談は、被害者本人だけでなく、同居する子どもの安全、生活環境、学校や保育所との連携にも関わります。
3.人権上の論点
DV相談プラスの背景には、家庭や親密な関係の中で起きる暴力を、個人的なもめごとではなく、生命、身体、自由、尊厳に関わる人権侵害として扱う考え方があります。DVは外から見えにくく、被害者が「自分にも悪いところがある」「相談するほどではない」と考え、支援につながりにくいことがあります。
DVでは、加害者が被害者の行動、交友関係、金銭、スマートフォン、服装、外出、仕事を管理することがあります。これは、単発の暴力だけでなく、相手の自由を奪い、生活を支配する行為です。被害者が相談しにくい構造を理解しなければ、周囲の人が「なぜ逃げないのか」と責める形になり、二次被害につながるおそれがあります。
相談窓口の人権上の意義は、被害者が安全を確保しながら、選択肢を取り戻す入口になる点にあります。避難、保護命令、生活支援、医療、心理的支援、子どもの支援、法律相談などは、別々の制度に分かれています。DV相談プラスは、それらの支援にたどり着く前段階で、被害者が状況を言葉にし、次の行動を考えるための窓口です。
同時に、DV相談は女性だけの問題として限定して理解すべきではありません。被害は性別にかかわらず起こり得ます。また、外国人、障害のある人、高齢者、性的マイノリティ、妊娠中の人、経済的に不安定な人などは、相談や避難の難しさが重なる場合があります。DV相談プラスを理解することは、暴力から離れる権利と、安全に生活する権利を支える相談体制を知ることにつながります。