インターネットと人権とは、SNS、掲示板、動画投稿サイト、検索サービスなどの利用を通じて、名誉、プライバシー、差別、表現の自由、個人情報保護などが問題になる領域を指す言葉です。人権ニュースでは、制度、判例、行政施策、地域の啓発活動などを理解するうえで重要な用語として扱います。
1.インターネットと人権の意味
インターネットと人権は、オンライン上の情報発信や情報流通が、人の尊厳、名誉、プライバシー、安全、社会参加に影響する問題を扱う言葉です。SNSへの投稿、匿名掲示板の書き込み、動画や画像の拡散、検索結果、口コミサイト、メッセージアプリなど、さまざまな場面で人権侵害が起こることがあります。
具体的には、誹謗中傷、名誉毀損、侮辱、個人情報のさらし上げ、性的画像の無断拡散、なりすまし、部落差別に関する地名や個人情報の投稿、外国人や民族的少数者へのヘイトスピーチ、障害や病気に関する差別的投稿、学校や職場でのネットいじめなどが問題になります。
インターネット上の人権侵害は、投稿の拡散が速く、削除後も転載やスクリーンショットが残りやすい点に特徴があります。匿名性があるため、被害者が発信者を特定しにくい場合もあります。被害はオンライン上にとどまらず、学校、職場、地域、家庭での生活にも及ぶことがあります。
2.制度・法律との関係
インターネット上の人権侵害は、複数の法律や制度と関係します。名誉毀損や侮辱は刑法や民法上の不法行為と関わり、個人情報の不適切な取扱いは個人情報保護法と関係します。差別的投稿は、部落差別解消推進法、ヘイトスピーチ解消法、障害者差別解消法などの人権施策とも接続します。
インターネット上の投稿によって権利侵害が生じた場合、削除依頼や発信者情報開示が問題になります。この分野で中心となる法律が、情報流通プラットフォーム対処法です。同法は、旧プロバイダ責任制限法を改正したもので、特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処を定めています。
発信者情報開示は、投稿者を特定し、損害賠償請求などの法的対応につなげるために利用されることがあります。一方、削除依頼は、被害の拡大を防ぐために、サイト管理者やプラットフォーム事業者に対して問題のある投稿の削除を求める手続です。
法務省の人権擁護機関も、インターネット上の人権侵害について相談を受け付けています。法務局では、被害者が自ら削除依頼を行う方法について助言したり、一定の場合にはサイト管理者等に削除要請を行ったりすることがあります。みんなの人権110番やインターネット人権相談も、相談の入口になります。
3.人権上の論点
インターネットと人権の論点は、情報を発信する自由と、他者の尊厳や権利を守る必要性をどのように調整するかにあります。インターネットは、誰もが意見を発信し、情報を得られる手段です。社会的な問題を告発したり、少数の声を届けたりする役割もあります。
しかし、表現の自由は、他人の名誉やプライバシーを侵害したり、差別や排除をあおったりすることを無制限に認めるものではありません。匿名であっても、相手を侮辱する投稿、個人情報をさらす投稿、属性に基づいて排除をあおる投稿は、人の生活や安全に深刻な影響を与えることがあります。
特に、こども、外国人住民、障害のある人、性的マイノリティ、被差別部落に関係する人、犯罪被害者、DVや虐待の被害者などは、オンライン上の情報拡散によって二次被害を受けることがあります。検索結果に差別的な情報が残ることや、過去の投稿が繰り返し共有されることも、社会参加や安心して暮らす権利に影響します。
インターネットと人権を理解する際には、投稿する側の自由だけでなく、投稿される側の名誉、プライバシー、安全、差別されない権利をあわせて考える必要があります。自治体、学校、企業、家庭では、情報モラル教育、相談窓口の周知、削除依頼や発信者情報開示の理解、被害者を責めない対応を組み合わせることが重要になります。