ノン・ルフールマン原則とは

ノン・ルフールマン原則とは、難民や保護を必要とする人を、迫害や重大な人権侵害を受けるおそれのある国や地域へ送還してはならないとする国際法上の原則を指す言葉です。人権ニュースでは、制度、判例、行政施策、地域の啓発活動などを理解するうえで重要な用語として扱います。

1.ノン・ルフールマン原則の意味

ノン・ルフールマン原則は、フランス語の refoulement に由来し、「追放・送還の禁止」と説明されます。難民や保護を必要とする人を、迫害、生命や自由への脅威、拷問、非人道的な取扱いなどのおそれがある国や地域に送り返してはならないという考え方です。

この原則は、難民保護の中核にあるものです。人が迫害を逃れて国外に出た場合、その人を危険な場所へ送り返せば、国際的保護の意味は失われます。そのため、難民認定手続や退去強制、入管収容、送還停止、補完的保護などを考える際の基本原則になります。

ノン・ルフールマン原則は、単に「難民として認定された人だけ」を保護する考え方として狭く理解すべきではありません。難民条約上の難民に当たるかどうかの判断中であっても、送還によって重大な危険が生じるおそれがある場合には、送還しないことが問題になります。拷問等禁止条約や国際人権規約との関係でも、拷問や重大な人権侵害のおそれがある国への送還は深刻な論点になります。

2.制度・法律との関係

ノン・ルフールマン原則の代表的な根拠は、難民条約第33条です。同条は、締約国が難民を、人種、宗教、国籍、特定の社会的集団の構成員であること、または政治的意見のために、その生命または自由が脅威にさらされるおそれのある領域の国境へ、いかなる方法によっても追放し、または送還してはならないと定めています。

ただし、難民条約第33条には例外規定もあります。滞在国の安全にとって危険であると認めるに足りる相当な理由がある場合や、特に重大な犯罪について有罪判決が確定し、滞在国社会にとって危険な存在となった場合には、同条の利益を要求できないとされています。もっとも、UNHCRは、この例外は非常に限定的であり、適正手続の保障が必要だと説明しています。

ノン・ルフールマン原則は、難民条約だけでなく、拷問等禁止条約、自由権規約、国際慣習法、人道法などとも関係します。特に、拷問や残虐な取扱いを受ける相当な危険がある国への送還は、難民条約上の例外とは別に、国際人権法上も問題になります。

日本では、難民認定制度、補完的保護対象者の制度、退去強制手続、送還停止効、入管収容、在留特別許可などと関係します。難民申請者や保護を求める人を送還する場合には、その人が帰国先で迫害や重大な人権侵害を受けるおそれがないかを慎重に確認する必要があります。

3.人権上の論点

ノン・ルフールマン原則の人権上の論点は、国家の出入国管理権限と、人の生命、自由、身体の安全を守る国際的義務が衝突し得る場面で、どこまで人を保護するかにあります。国家には国境管理や在留管理を行う権限がありますが、その権限は、迫害や拷問のおそれがある場所へ人を送り返すことまで正当化するものではありません。

特に重要なのは、送還前の手続の公正さです。迫害を受けた人や逃れてきた人は、証拠資料を十分に持っていないことがあります。言語の壁、トラウマ、収容環境、法的支援へのアクセス不足、通訳の質などによって、本人の主張が適切に伝わらない場合もあります。送還後に危険が現実化すれば、取り返しがつかないため、事前の審査と異議申立ての機会が重要になります。

一方で、ノン・ルフールマン原則は、すべての外国人に無条件の在留資格を与える原則ではありません。問題の中心は、送還先で迫害、拷問、重大な人権侵害を受けるおそれがあるかどうかです。そのため、難民認定、補完的保護、人道配慮による在留、退去強制手続を分けて整理する必要があります。

ノン・ルフールマン原則を理解する際には、入管行政の手続論としてだけでなく、送還される人の生命、自由、尊厳を守る国際人権上の原則として捉える必要があります。難民認定率、送還停止、収容、仮放免、補完的保護、第三国定住などの議論を読む際にも、この原則が判断の出発点になります。

タイトルとURLをコピーしました