世界人権宣言とは、すべての人が生まれながらに持つ基本的人権を国際社会の共通基準として示した国連総会の宣言を指す言葉です。人権ニュースでは、制度、判例、行政施策、地域の啓発活動などを理解するうえで重要な用語として扱います。
1.世界人権宣言の意味
世界人権宣言は、1948年12月10日、パリで開かれた第3回国連総会で採択された人権に関する宣言です。第二次世界大戦での深刻な人権侵害への反省を踏まえ、すべての人の尊厳と権利を国際社会の共通基準として示しました。
宣言は、生命、自由、身体の安全、法の下の平等、思想・良心・宗教の自由、表現の自由、教育を受ける権利、労働に関する権利、社会保障、文化的生活に参加する権利など、幅広い権利を掲げています。市民的・政治的権利だけでなく、経済的・社会的・文化的権利も含んでいる点に特徴があります。
世界人権宣言は、特定の国や地域だけの価値観を示したものではなく、人間の尊厳を基礎に、すべての人に共通する権利の基準を示した文書です。国連は、世界人権宣言が、初めて普遍的に保護されるべき基本的人権を明らかにした文書だと説明しています。
2.制度・法律との関係
世界人権宣言は、条約ではなく、国連総会の宣言です。そのため、宣言そのものが直ちに各国に法的拘束力を持つわけではありません。この点は、国際人権規約や各種人権条約と区別して理解する必要があります。
ただし、世界人権宣言は、国際人権法の出発点として大きな意味を持ちます。外務省は、世界人権宣言について、法的拘束力はないが、人権保障の目標ないし基準を宣言するものとして構想されたと説明しています。その後、1966年に採択された国際人権規約は、世界人権宣言の内容を発展させ、法的拘束力を持つ条約として整備されました。
世界人権宣言、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約、市民的及び政治的権利に関する国際規約などは、国際人権章典を構成するものとして扱われます。女子差別撤廃条約、子どもの権利条約、障害者権利条約、人種差別撤廃条約など、その後の国際人権条約にも影響を与えています。
日本国内では、世界人権宣言は直接の裁判規範として使われる場面は限られますが、人権教育、人権啓発、自治体の人権施策、学校教育、企業の人権方針、ビジネスと人権の取組などで、基本的な理念を確認する文書として参照されます。
3.人権上の論点
世界人権宣言の人権上の論点は、人権を国家が与える恩恵ではなく、すべての人が生まれながらに持つものとして示した点にあります。国籍、民族、性別、宗教、言語、社会的身分、障害、年齢などにかかわらず、人間の尊厳を基礎に権利を考える出発点になります。
一方で、世界人権宣言は法的拘束力を持つ条約ではないため、宣言だけで個別の権利侵害を直接救済できるわけではありません。実際の救済や制度化には、憲法、法律、条例、条約、裁判、行政施策、相談制度などが必要になります。そのため、世界人権宣言を理解する際には、理念としての普遍性と、国内制度に落とし込む必要性の両方を見る必要があります。
また、世界人権宣言は、自由権と社会権を一体のものとして扱っている点も重要です。表現の自由や信教の自由だけでなく、教育、労働、社会保障、健康で文化的な生活に関わる権利も、人間の尊厳と結びつくものとして示されています。人権を一部の政治的自由だけに限定せず、生活、福祉、教育、労働、差別防止を含む広い課題として考える基盤になります。
世界人権宣言を理解することは、国内の人権三法、こども基本法、障害者差別解消法、男女共同参画、外国人住民支援、ビジネスと人権などを考える際の前提になります。人権ニュースで扱う地域の啓発活動や行政施策も、最終的には「すべての人の尊厳と権利をどう守るか」という世界人権宣言の問題意識とつながっています。