ヤングケアラーとは

ヤングケアラーとは、本来大人が担うと想定される家事や家族の世話などを日常的に行っているこども・若者を指す言葉です。人権ニュースでは、制度、判例、行政施策、地域の啓発活動などを理解するうえで重要な用語として扱います。

1.ヤングケアラーの意味

ヤングケアラーは、家族の介護、看病、きょうだいの世話、家事、通訳、感情面の支えなどを日常的に担っているこども・若者を指します。病気や障害のある家族の介助をする、幼いきょうだいの世話をする、家計や生活を支えるために家事を担う、日本語が十分でない家族の通訳をする、といった場合が含まれます。

家族を手伝うこと自体が直ちに問題になるわけではありません。問題になるのは、こどもや若者が年齢や発達段階に比べて重い責任を担い、学業、睡眠、友人関係、進路選択、心身の健康、自分の時間に影響が出ている場合です。

ヤングケアラーは、本人が自分を「支援が必要な状態」と認識していないことがあります。家族のことだから当然だと思っていたり、家庭の事情を他人に話してはいけないと感じていたりするため、学校や地域の大人が気づきにくい点に特徴があります。

2.制度・法律との関係

ヤングケアラーは、2024年6月の子ども・若者育成支援推進法の改正により、法律上の支援対象として明記されました。同法では、ヤングケアラーを「家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者」と整理し、国や地方公共団体等が各種支援に努めるべき対象としています。

支援の実務では、こども家庭センター、学校、教育委員会、福祉部局、介護保険担当、障害福祉、医療機関、地域包括支援センター、民間支援団体などの連携が重要になります。家族の介護や看病をこどもだけに担わせるのではなく、介護保険サービス、障害福祉サービス、子育て支援、生活困窮者支援、通訳支援、相談支援などにつなげることが必要になります。

文部科学省も、学校等とヤングケアラー支援担当部署との連携を示しており、学校が気づきの場になることが想定されています。遅刻や欠席、宿題の未提出、授業中の眠気、部活動や進学の断念、家庭の話を避ける様子などが、支援につなげる手がかりになる場合があります。

ヤングケアラー支援は、こども基本法、児童福祉法、介護保険法、障害者総合支援法、生活困窮者自立支援制度、学校教育、児童虐待防止、孤独・孤立対策などとも関係します。単独の相談窓口だけで完結するものではなく、家族全体を支える制度設計が必要です。

3.人権上の論点

ヤングケアラーの人権上の論点は、こどもや若者が家族を支える役割を担うことで、学ぶ権利、休む権利、遊ぶ権利、進路を選ぶ機会、友人関係、心身の健康が制約される点にあります。家族を大切にする気持ちがあるとしても、過度なケア責任によって、こどもらしい生活や将来の選択肢が狭められてはなりません。

特に注意が必要なのは、ヤングケアラーを「家族思いの立派なこども」とだけ評価してしまうことです。その見方は、本人の負担や孤立を見えにくくする場合があります。支援では、本人を責めず、家族を責めるだけでもなく、家庭に必要な福祉サービスや地域資源をつなぐ視点が重要になります。

また、ヤングケアラーの背景には、貧困、障害、病気、ひとり親家庭、外国にルーツのある家庭、精神疾患、依存症、介護サービスの不足など、複数の課題が重なる場合があります。本人だけに「相談しなさい」と求めるのではなく、学校、自治体、医療・福祉機関が早期に気づき、負担を軽くする仕組みを整える必要があります。

ヤングケアラーを理解する際には、家族内の役割分担の問題としてだけでなく、こどもの権利、教育機会、福祉制度へのアクセス、社会的孤立に関わる人権課題として捉える必要があります。自治体や学校が支援を行う場合には、本人の意思を尊重しながら、家族全体を支援する具体的なサービスにつなげることが重要になります。

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