パワーハラスメントとは

パワーハラスメントとは、職場などで優越的な関係を背景に、業務上必要かつ相当な範囲を超える言動によって、相手の就業環境を害する行為を指す言葉です。人権ニュースでは、制度、判例、行政施策、地域の啓発活動などを理解するうえで重要な用語として扱います。

1.パワーハラスメントの意味

パワーハラスメントは、一般に「パワハラ」と略されます。職場での地位、経験、専門知識、人間関係、集団の力などを背景に、相手に対して過度な叱責、侮辱、威圧、無視、過大な要求、過小な要求、私的なことへの過度な干渉などを行い、働く環境を悪化させる問題をいいます。

パワーハラスメントは、上司から部下に対して行われるものに限られません。先輩から後輩、同僚同士、部下から上司、専門知識を持つ人からそうでない人、集団から個人に対して行われる場合もあります。重要なのは、相手が抵抗や拒絶をしにくい関係性が背景にあるかどうかです。

すべての厳しい指導がパワーハラスメントに当たるわけではありません。業務上必要で、内容や方法が社会通念上相当な範囲にとどまる指導や注意は、通常はパワーハラスメントとは区別されます。問題になるのは、人格を否定する発言、必要性を超えた長時間の叱責、業務と関係のない嫌がらせ、能力や経験に見合わない過大な仕事の強要、逆に仕事を与えないことなどです。

2.制度・法律との関係

職場のパワーハラスメントと最も関係が深い法律は、労働施策総合推進法です。同法は、事業主に対し、職場における優越的な関係を背景とした言動により、労働者の就業環境が害されることのないよう、雇用管理上必要な措置を講じる義務を定めています。

事業主には、パワーハラスメントを行ってはならないという方針の明確化、労働者への周知・啓発、相談窓口の整備、相談があった場合の迅速かつ適切な対応、被害を受けた労働者への配慮、行為者への対応、再発防止、相談者や協力者への不利益取扱いの禁止、プライバシー保護などが求められます。

厚生労働省の指針では、職場におけるパワーハラスメントの代表的な類型として、身体的な攻撃、精神的な攻撃、人間関係からの切り離し、過大な要求、過小な要求、個の侵害が示されています。これらは典型例であり、実際の判断では、言動の内容、回数、継続性、業務上の必要性、職場環境への影響などを総合的に見る必要があります。

パワーハラスメントは、労働施策総合推進法のほか、労働契約法上の安全配慮義務、労働安全衛生法、民法上の不法行為責任、刑法、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、労災認定、企業や自治体のハラスメント規程とも関係します。被害が深刻な場合には、精神疾患、休職、退職、損害賠償、労働紛争に発展することもあります。

3.人権上の論点

パワーハラスメントの人権上の論点は、働く人の尊厳、心身の健康、安全に働く権利が、職場内の力関係によって損なわれる点にあります。人格を否定する言葉を浴びせられる、孤立させられる、達成不可能な業務を押し付けられる、逆に仕事を与えられないといった状況は、単なる職場内の摩擦ではありません。

特に問題になるのは、被害を受けた人が声を上げにくいことです。評価、昇進、配置、雇用継続に影響する相手からの言動であれば、被害者は拒否や相談をためらいやすくなります。相談した後に不利益な扱いを受けるのではないかという不安も、被害の表面化を妨げます。

一方で、パワーハラスメント対策では、必要な業務指導まで萎縮させない整理も必要です。管理職が部下に注意や指導を行うこと自体は、組織運営に必要な場合があります。重要なのは、業務上の必要性、指導の目的、言葉の選び方、回数、場所、相手の状態を踏まえ、人格攻撃や見せしめにならない形で行うことです。

パワーハラスメントを理解する際には、個人同士の相性や感情の問題にとどめず、職場の構造、評価制度、長時間労働、過度な成果主義、相談体制の不備と結びつけて考える必要があります。企業、自治体、学校、医療・福祉機関などでは、相談窓口を設けるだけでなく、管理職研修、記録の保存、事実確認、被害者保護、行為者対応、再発防止を組織として進めることが重要になります。

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