ヘイトスピーチとは

ヘイトスピーチとは、人種、民族、国籍、出身などの属性を理由に、特定の人々を排斥したり、侮辱したり、危害を加えることをあおったりする差別的な言動を指す言葉です。人権ニュースでは、制度、判例、行政施策、地域の啓発活動などを理解するうえで重要な用語として扱います。

1.ヘイトスピーチの意味

ヘイトスピーチは、特定の人種、民族、国籍、出身などに結びつけて、人々を一方的に排除したり、侮辱したり、危害を加えることをあおったりする差別的な言動をいいます。街頭での示威活動、集会、ビラ、インターネット上の投稿、動画、SNSでの拡散など、さまざまな形で問題になります。

単なる批判や意見表明のすべてがヘイトスピーチに当たるわけではありません。政策、政府、団体、宗教、文化、社会問題について批判すること自体は、表現の自由との関係で慎重に扱う必要があります。問題となるのは、本人の意思では変えにくい属性を理由に、人を集団として劣った存在のように扱い、排除や攻撃を正当化する言動です。

日本では、特定の民族や国籍の人々を排斥する差別的言動が社会問題となり、ヘイトスピーチという言葉が広く使われるようになりました。現在では、外国人住民、多文化共生、インターネット上の人権侵害、公共施設の利用、デモや街宣活動への対応を考える際の重要な用語になっています。

2.制度・法律との関係

ヘイトスピーチと関係が深い法律が、ヘイトスピーチ解消法です。正式名称は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律です。2016年6月3日に施行されました。

同法は、法律上の対象を「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」としています。具体的には、専ら日本国外の国や地域の出身者またはその子孫で、適法に日本に居住する人に対する差別的言動を対象としています。生命、身体、自由、名誉、財産に危害を加える旨を告げる行為、著しく侮蔑する行為、地域社会から排除することをあおる行為などが問題になります。

ただし、この法律はヘイトスピーチそのものに刑事罰を設ける法律ではありません。基本理念を定め、国と地方公共団体の責務を明らかにし、相談体制、教育、啓発などの基本的施策を進めるための法律です。

また、法律上の定義に「適法に居住するもの」という限定があることは重要な論点です。この限定があるからといって、在留資格の有無、国籍、人種、民族などを理由とする排他的な言動一般が人権上許されるわけではありません。ヘイトスピーチを考える際には、法律上の対象範囲と、人権上問題となる差別的言動の広がりを分けて理解する必要があります。

3.人権上の論点

ヘイトスピーチの人権上の論点は、差別的な言動が、対象とされた人々の尊厳、安全、地域で暮らす権利を傷つける点にあります。街頭で「出て行け」と叫ばれる、インターネット上で民族や国籍を理由に侮辱される、子どもが学校や地域でその言葉を目にする、といった状況は、単なる不快感にとどまりません。生活の場そのものに恐怖や排除の感覚を持ち込むものです。

同時に、ヘイトスピーチへの対応では、表現の自由との関係も避けて通れません。差別的言動への対策が必要である一方、行政が特定の表現を制限する場合には、対象、基準、手続を明確にしなければなりません。公共施設の利用制限、デモへの対応、インターネット上の削除要請などでは、差別の防止と表現の自由の調整が問題になります。

インターネット上のヘイトスピーチは、被害が長期化しやすい点でも深刻です。投稿が転載、引用、検索によって残り続けると、対象となった人や集団は、繰り返し差別的言動にさらされることになります。匿名性があるため、発信者の特定や削除対応が難しい場合もあります。

ヘイトスピーチを理解する際には、単に「言ってよいか、悪いか」という問題ではなく、民族的・国籍的背景を持つ人々が、地域、学校、職場、公共空間、インターネット上で安心して生活できるかという問題として捉える必要があります。自治体の啓発、学校教育、相談窓口、公共施設の運用、ネット上の差別投稿への対応は、その実効性を左右する具体的な課題になります。

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