こども基本法とは、すべてのこどもが将来にわたって幸福な生活を送ることができる社会の実現に向け、こども施策の基本理念や国・地方公共団体の責務などを定める法律を指す言葉です。人権ニュースでは、制度、判例、行政施策、地域の啓発活動などを理解するうえで重要な用語として扱います。
1.こども基本法の意味
こども基本法は、2023年4月1日に施行された、こども施策の基本となる法律です。日本国憲法と児童の権利に関する条約の精神にのっとり、すべてのこどもが生涯にわたる人格形成の基礎を築き、自立した個人として等しく健やかに成長できる社会の実現を目的としています。
この法律でいう「こども」は、心身の発達の過程にある者を指します。年齢だけで一律に区切るのではなく、発達の過程にある人を広く捉える考え方が採られています。
こども基本法の特徴は、こどもを単に保護や支援の対象として見るのではなく、権利の主体として位置付けている点にあります。こども施策を進める際には、こどもの意見を聴き、その意見を尊重し、こどもの最善の利益を優先して考えることが重視されます。
2.制度・法律との関係
こども基本法は、こども施策の基本理念、国の責務、地方公共団体の責務、事業主や国民の努力、こども大綱、都道府県こども計画・市町村こども計画などについて定めています。
同法に基づき、政府はこども施策を総合的に推進するための「こども大綱」を定めます。こども大綱は、少子化社会対策、子ども・若者育成支援、子どもの貧困対策など、これまで別々に進められてきた政策分野を一体的に整理する役割を持ちます。2023年12月22日には、こども基本法に基づく最初のこども大綱が閣議決定されました。
都道府県は、こども大綱を勘案して都道府県こども計画を定めるよう努めるものとされています。市町村も、こども大綱と都道府県こども計画を勘案して、市町村こども計画を定めるよう努めるものとされています。
こども基本法は、児童福祉法、児童虐待防止法、子ども・若者育成支援推進法、子どもの貧困対策推進法、教育基本法、学校教育、保育、母子保健、障害児支援、ヤングケアラー支援、いじめ防止、子育て支援など、幅広い制度と関係します。個別分野の法律を置き換えるものではなく、こども施策全体の基本原則を示す法律です。
3.人権上の論点
こども基本法の人権上の論点は、こどもを「大人が守る存在」としてだけでなく、自らの意見を持ち、社会に参加する権利主体として扱う点にあります。虐待、貧困、いじめ、不登校、障害、ヤングケアラー、外国にルーツのあるこども、社会的養護などの課題は、生活、教育、安全、健康、意見表明の機会に直接関わります。
特に重要なのは、こどもの意見を聴く仕組みを、形式的なアンケートや会議参加にとどめないことです。年齢や発達の程度、障害の有無、家庭環境、日本語能力などによって、意見を表明する方法は異なります。行政や学校、支援機関には、こどもが安心して話せる環境を整え、その意見が施策や支援にどのように反映されたのかを説明する姿勢が求められます。
一方で、こども基本法は、個別の権利侵害に対する直接の救済手続や罰則を定める法律ではありません。そのため、実際の支援や救済は、児童相談所、学校、福祉機関、医療機関、自治体の相談窓口、司法手続など、既存の制度と組み合わせて行われます。
こども基本法を理解する際には、こども施策を少子化対策や子育て支援だけに限定せず、こどもの権利、意見表明、最善の利益、差別の禁止、安心して成長できる環境づくりと結びつけて読む必要があります。自治体のこども計画、学校現場の取組、地域の居場所づくりを考えるうえでも、同法は基本的な土台になります。