配偶者暴力防止法とは

配偶者暴力防止法とは、配偶者からの暴力の防止と被害者の保護、自立支援などを定める法律を指す言葉です。人権ニュースでは、制度、判例、行政施策、地域の啓発活動などを理解するうえで重要な用語として扱います。

1.配偶者暴力防止法の意味

配偶者暴力防止法の正式名称は、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律です。DV防止法と呼ばれることもあります。

この法律は、配偶者からの暴力が、被害者の心身を傷つけ、生活の安全や自立を脅かす重大な問題であることを踏まえ、通報、相談、保護、自立支援などの体制を整えるために制定されました。対象となる「配偶者」には、法律婚の相手方だけでなく、事実婚の相手方、生活の本拠を共にする交際相手も含まれます。離婚や関係解消の前に暴力を受け、離婚等の後も引き続き暴力を受ける場合には、元配偶者等からの暴力も対象になります。

配偶者からの暴力には、身体に対する暴力だけでなく、これに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動も含まれます。殴る、蹴るといった身体的暴力に加え、脅迫、精神的な支配、性的な強要、経済的な支配なども、DVの問題として扱われます。

2.制度・法律との関係

配偶者暴力防止法は、被害者を支援するための相談、保護、自立支援、保護命令制度などを定めています。都道府県などに置かれる配偶者暴力相談支援センターは、相談、相談機関の紹介、カウンセリング、一時保護、自立生活を促すための情報提供、保護命令制度の利用に関する援助などを担います。

保護命令制度は、裁判所が被害者の申立てにより、加害者に対して接近禁止、電話等の禁止、退去などを命じる制度です。2024年4月1日施行の改正により、重篤な精神的被害を受けた場合にも接近禁止命令等の対象が広がり、接近禁止命令等の期間は6か月から1年に伸長されました。子への電話等禁止命令も設けられ、保護命令違反に対する罰則も強化されています。

2025年12月30日施行の改正では、接近禁止命令等の禁止行為に、紛失防止タグの位置情報を取得する行為や、紛失防止タグを取り付ける行為などが追加されました。スマートフォン、SNS、GPS機器、紛失防止タグなどを使った監視や追跡が、DV被害の一部として問題化していることを踏まえた改正です。

この法律は、刑法、ストーカー規制法、児童虐待防止法、困難な問題を抱える女性への支援に関する法律、民法上の離婚・親権・面会交流、生活保護、住宅支援、警察による被害防止措置などとも関係します。DV被害への対応は、単独の法律だけで完結せず、司法、福祉、医療、警察、自治体の支援を組み合わせて進められます。

3.人権上の論点

配偶者暴力防止法の人権上の論点は、家庭や親密な関係の中で起きる暴力を、私的な問題として放置せず、被害者の生命、身体、自由、尊厳を守る制度課題として扱った点にあります。DVは、身体的な傷だけでなく、恐怖、孤立、経済的依存、子どもへの影響、住まいの喪失、就労の中断などを通じて、被害者の生活全体を制約します。

特に重要なのは、被害者が安全に逃げること、相談すること、生活を立て直すことの難しさです。加害者からの追跡、脅迫、子どもを利用した接触、SNSや位置情報を使った監視がある場合、単に「別れればよい」という問題ではありません。保護命令、一時保護、住居支援、経済的支援、子どもの安全確保を一体で考える必要があります。

一方で、配偶者暴力防止法は、すべての親密関係における暴力を包括的に扱う法律ではありません。対象となる関係や保護命令の要件には一定の範囲があり、交際相手からの暴力、別居後の継続的な支配、デジタル技術を使った監視などについては、他の制度との接続が課題になります。

配偶者暴力防止法を理解する際には、DVを家庭内のトラブルではなく、人権侵害、ジェンダー平等、子どもの安全、生活再建支援に関わる問題として捉える必要があります。自治体の相談窓口、警察、裁判所、福祉機関、学校、医療機関が、被害者の安全を中心に連携できるかどうかが、制度の実効性を左右します。

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