2025年の人権侵犯事件は8,207件 ネット人権侵害が1,569件で高止まり

法務省は2026年3月、令和7年(2025年)における人権侵犯事件の状況を公表した。新たに救済手続を開始した人権侵犯事件は8,207件、処理件数は8,170件だった。人権侵犯事件とは、差別、いじめ、虐待、名誉・プライバシー侵害など、人権を侵害された疑いのある事案について、法務局・地方法務局などの人権擁護機関が相談を受け、必要に応じて調査や救済措置を行う仕組みである。

類型別では、「学校におけるいじめ」が1,422件で全体の17.3%を占め、最多となった。学校現場での人権課題は、暴力や無視、悪口といった直接的ないじめだけでなく、SNSを通じた誹謗中傷、性的なからかい、障害や家庭環境への偏見など、見えにくい形で広がることがある。今回の件数は、教育現場において、子どもの権利を守るための早期把握、相談体制、教職員の対応力が引き続き重要であることを示している。

インターネットによる人権侵害は1,569件とされ、高い水準が続いている。ネット上の人権侵害は、名誉毀損やプライバシー侵害、差別的投稿、性的画像の拡散など、多様な形で発生する。投稿の拡散速度が速く、削除されても複製や転載が残りやすい点で、被害が長期化しやすい。被害者にとっては、学校、職場、地域生活にまで影響が及ぶ場合があり、単なる「ネット上のトラブル」として軽視できない。

今回の公表で注意すべきなのは、人権侵犯事件数が社会に存在する人権侵害の全体をそのまま表すものではない点である。相談や申告につながった事案だけが統計に反映されるため、被害を受けても相談できない人、制度を知らない人、報復や周囲の反応を恐れて声を上げられない人の存在も考える必要がある。とりわけ、子ども、高齢者、障害のある人、外国人、性的マイノリティなどは、被害を訴えにくい状況に置かれることがある。

法務省の人権擁護機関による救済手続は、裁判とは異なり、身近な相談から問題解決を図る行政上の仕組みである。深刻な被害を防ぐには、相談窓口の周知だけでなく、学校、自治体、企業、地域団体が、差別やいじめ、ハラスメント、ネット上の加害行為を早い段階で把握し、適切な機関につなぐことが欠かせない。2025年の統計は、人権侵害が特別な場所ではなく、学校生活、職場、家庭、オンライン空間という日常の中で起きていることを改めて示している。

出典
人権ニュース編集部

人権ニュース編集部は、官公庁、自治体、企業、公益団体、国際機関等が公表する一次情報をもとに、差別、労働、教育、福祉、司法・制度、外国人共生、ビジネスと人権などに関するニュースと解説を発信しています。掲載内容は、出典確認を行ったうえで、制度的背景や人権上の論点を補足して構成しています。

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