自由人権協会、ICC赤根智子所長への米制裁撤回を要求

この記事のポイント

1.自由人権協会は8月28日、米国による国際刑事裁判所(ICC)の赤根智子所長への制裁の即時撤回を求める声明を公表した。
2.日本政府も8月19日、「大変残念」と表明し、ICCを一貫して支持する立場を示した。
3.個別事件への賛否とは別に、裁判官個人への経済制裁は国際司法機関の独立性をどこまで確保できるかという制度上の問題を生じさせる。

自由人権協会

公益社団法人自由人権協会(JCLU)は2026年8月28日、米国政府が国際刑事裁判所(ICC)の赤根智子所長に科した制裁措置の即時撤回を求める声明を公表した。声明は駐日米国大使、日本の内閣総理大臣、外務大臣宛てに送付された。JCLUは、司法職務を遂行する裁判官に対する制裁は、裁判所の独立や法の支配を損なうとして問題を提起している。

米国政府は8月18日、赤根所長らを新たな制裁対象に指定した。これを受け、外務省は日本時間の19日、赤根所長が制裁対象とされたことは「大変残念」であるとの外務大臣談話を発表した。日本はICCを一貫して支持してきたとして、引き続きICCおよび関係国と意思疎通を行うとしている。ICCも同日、新たな制裁指定を強く拒否する声明を発表した。ICCによれば、この時点で18人の裁判官のうち9人、2人の副検察官、前検察官、職員1人が米国の制裁対象になっている。

ICCはジェノサイド、人道に対する犯罪、戦争犯罪など重大な国際犯罪について、一定の条件の下で個人の刑事責任を追及する常設の国際裁判所である。日本は2007年7月17日にローマ規程の加入書を寄託し、同年10月1日に締約国となった。ICCは国家政府から独立して司法判断を行うことを前提とするため、裁判官の判断や職務を理由に外国政府が個人制裁を科すことは、個別事件への評価とは別に、司法機関の独立性と裁判官の職務遂行への圧力という問題を生じさせる。

今回、JCLUは制裁の「即時撤回」を明示的に要求したのに対し、日本政府は「大変残念」と表現し、ICCと関係国との意思疎通を続けるとの立場を取った。市民団体の声明と政府の外交対応は立場も手段も異なる。ただし、ICCの個々の捜査・令状判断への評価と、裁判官本人に対する国家の制裁を制度としてどう考えるかは区別して検討する必要がある。赤根所長への制裁をめぐる問題は、日本人裁判官個人の問題にとどまらず、国際刑事司法を国家間の政治的圧力からどう守るかという制度論を日本国内にも突き付けている。

出典

自由人権協会「ICC赤根智子所長に対する制裁措置の即時撤回を求める声明」
URL:https://jclu.org/news/statement-sanctions-against-icc/

外務省「ICC赤根智子所長に対する米国の制裁措置について」
URL:https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/danwa/pageit_000001_03136.html

国際刑事裁判所「ICC strongly rejects new US sanctions designations」
URL:https://icccpi-web.icccpi-prod.uniccloud.org/news/icc-strongly-rejects-new-us-sanctions-designations

外務省「国際刑事裁判所(ICC)」
URL:https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/icc/

人権ニュース編集部

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