職場の障害者虐待610人、6.4%減 経済的虐待83.1%

スポンサーリンク
スポンサーリンク
この記事のポイント

1.2025年度に「使用者による障害者虐待」が認められた障害者は610人、事業所は421か所で、いずれも前年度から減少した。
2.通報・届出の対象となった障害者は1953人で6.9%増加しており、「通報増」と「虐待認定減」が同時に起きている。
3.認定された虐待では経済的虐待が521人、83.1%を占め、職場での賃金や財産をめぐる権利侵害が引き続き大きな割合を占める。

厚生労働省

厚生労働省は2026年9月11日、2025年度の「使用者による障害者虐待の状況等」を公表した。通報・届出があった事業所は1663か所で前年度比4.4%増、対象となった障害者は1953人で6.9%増えた。これに対し、調査の結果、虐待が認められた事業所は421か所で3.0%減、障害者は610人で6.4%減った。障害者虐待防止法に基づき、都道府県労働局と地方公共団体が使用者による虐待への対応や関係法令に基づく是正指導を行っている。

通報増と認定減は矛盾しない

前年度の2024年度は、通報・届出が1593事業所、対象者1827人、虐待が認められた事業所434か所、障害者652人だった。2025年度は通報段階の件数が増える一方、認定された人数は42人減ったことになる。ここで「通報が増えたのに虐待は減った」と単純に評価することはできない。通報・届出は虐待の疑いを把握する入口であり、その後の調査で法令上の虐待に当たるかが判断されるため、両者は異なる指標である。通報件数だけから職場で実際に発生している虐待の増減を推定することもできない。

障害者虐待防止法が対象とする「障害者」は、障害者手帳を持っている人に限られない。身体、知的、精神、発達障害などにより、障害と社会的障壁によって日常生活や社会生活に相当な制限を受ける状態にある人を含む。使用者による虐待では、事業主や上司などが行う身体的、性的、心理的、放棄・放置、経済的虐待が対象となる。

経済的虐待が8割超を占める構造

2025年度に認められた虐待のうち、経済的虐待は521人、83.1%で最多だった。前年度も584人、85.0%を占めており、割合はやや低下したものの、使用者虐待の中心が経済的虐待である状況は続いている。経済的虐待には賃金を支払わない、最低賃金を下回る額しか支払わないなど、働いた本人の生活基盤に直接影響する行為が含まれ得る。身体的な暴力とは異なり外部から発見しにくく、本人が雇用関係を失うことを恐れて訴えにくい場合もある。

今回の統計は、虐待認定者数が減ったことだけで職場環境の改善を示す資料ではない。1953人が通報・届出の対象となり、421事業所で実際に虐待が認定されたという双方の数字を見る必要がある。厚生労働省と都道府県労働局が、経済的虐待の発生要因や是正後の再発状況、相談・通報につながりにくい職場への周知をどう進めるかが、2025年度統計から継続して確認すべき事項となる。

出典

厚生労働省「令和7年度使用者による障害者虐待の状況等」
URL: https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000172598_00013.html

厚生労働省「令和6年度使用者による障害者虐待の状況等」
URL: https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000172598_00012.html

関連用語
スポンサーリンク
スポンサーリンク
人権ニュース編集部

人権ニュース編集部は、官公庁、自治体、裁判所、企業、公益団体、国際機関などが公表する一次情報を確認し、差別、子ども、障害者、高齢者、教育、福祉、司法・制度、外国人、ビジネスと人権などに関するニュース、制度解説、独自調査を発信しています。記事では出典を明示し、事実関係を確認したうえで、関連する法制度や統計、過去の経緯などを参照しながら、人権上の論点や社会的背景を整理しています。

人権ニュース編集部をフォローする
福祉ビジネス
シェアする
タイトルとURLをコピーしました