1.群馬県は9月3日、県内事業者向け「STOP!カスハラ入門セミナー」を県庁とオンラインで開催する。
2.群馬県では2025年4月からカスタマーハラスメント防止条例が施行されており、2026年10月1日には国法による事業主の防止措置義務も始まる。
3.カスハラ対策では従業員を守る一方、消費者や利用者による正当な苦情、障害者の合理的配慮の申出などをカスハラと誤認しない運用が必要になる。

群馬県は2026年9月3日午後2時30分から4時まで、県庁32階NETSUGENで「STOP!カスハラ入門セミナー」を開催する。県内事業者の経営者、管理職、現場責任者などを対象に、株式会社インソースの重里恭子氏が「カスタマーハラスメントの基本知識・対応術と対策」を解説する。会場定員は20人で、オンライン視聴には定員を設けない。参加募集は既に終了しているが、会場には群馬働き方改革推進支援センターの出張相談ブースも設置する。
群馬県では、国の義務化に先行して2025年4月1日に「群馬県カスタマーハラスメント防止条例」を施行した。条例はカスタマーハラスメントを禁止し、県、事業者、就業者、顧客等それぞれの責務を定める。啓発、教育、事業者への情報提供などを県の基本的施策としており、ポスター、ショート動画、高校生向け資料なども作成してきた。条例制定はカスハラを個々の従業員が耐える接客問題ではなく、事業者と地域社会で防止する問題として扱った点に特徴がある。
企業実務は10月1日にもう一段変わる。2025年6月に公布された改正労働施策総合推進法により、2026年10月1日からカスタマーハラスメント防止措置が事業主の義務となる。厚生労働省は2026年2月26日に防止指針も公布しており、企業は相談体制の整備、事案への適切な対応、再発防止などを雇用管理上の課題として扱うことになる。群馬県の9月3日のセミナーは、全国的な義務化まで1カ月を切った時点で、県条例による啓発から企業の具体的な法令対応へ移る研修といえる。
ここで注意が必要なのは、「顧客からの厳しい意見=カスハラ」ではないことだ。厚生労働省の指針では、顧客等の言動であること、その言動が業務の性質などに照らして社会通念上許容される範囲を超えること、その結果として労働者の就業環境が害されることが判断の要素になる。商品やサービスの不備を指摘する、契約どおりの対応を求める、行政や福祉サービスの改善を申し入れるといった正当な権利行使まで排除する制度ではない。
この境界は人権上も重要である。障害のある利用者による合理的配慮の申出、認知症の人との意思疎通上の行き違いなどを、職員側が直ちに「迷惑な顧客」と判断すれば、本来保障すべきサービス利用の権利を狭める危険がある。厚生労働省もカスハラ対策を講じる際、消費者心理や障害特性、認知症の症状について従業員の理解を深めることを望ましい取組として示している。従業員の心身を守ることと、顧客・利用者の正当な権利を守ることは二者択一ではない。
群馬県では入門セミナーに続き、10月23日と29日に事業者向けのマニュアル作成ワークショップも予定している。10月1日の義務化後は、相談窓口を設けただけではなく、誰がカスハラ該当性を判断するのか、現場職員をどの時点で交代させるのか、警察・弁護士など外部機関へつなぐ基準をどうするのか、正当な苦情をどのように受け止めるのかまで社内手順に落とす必要がある。群馬県の一連の事業についても、参加企業が実際に対応方針やマニュアルを整備したかが、条例と国法を企業実務へ反映できたかを測る材料となる。
群馬県「『STOP!カスハラ入門セミナー』を開催します」
URL:https://www.pref.gunma.jp/site/houdou/773695.html
群馬県「群馬県カスタマーハラスメント防止条例」
URL:https://www.pref.gunma.jp/page/688104.html
群馬県「カスタマーハラスメントの防止について」
URL:https://www.pref.gunma.jp/page/655164.html
厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」
URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html
厚生労働省「令和7年労働施策総合推進法等の一部改正について」
URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/zaitaku/index_00003.html

