1.認定NPO法人ACEが、政府から独立した国内人権機関の設置を目指す研究プロジェクトを始めた。
2.市民社会、企業、弁護士、研究者、労働組合、権利当事者らによる研究会で、ビジネスと人権を軸に制度を検討する。
3.日本にはGANHRIの認定を受けた国内人権機関がなく、国連も企業活動による被害の救済や説明責任を支える機関の設置を勧告している。

認定NPO法人ACEは2026年7月17日、政府から独立した国内人権機関(NHRI)の設置に向け、「『ビジネスと人権』の視点によるNHRI研究会」を立ち上げたと公表した。研究会は6月に発足し、同月22日に第1回会合を開催した。企業活動に伴う人権侵害への救済を含め、日本に適した機関の権限、独立性、構成などの制度設計を議論し、将来の法案につなげる方針を掲げる。
研究会は2026年6月26日時点で、委員19人とオブザーバー9人で構成する。座長は大阪経済法科大学教授の菅原絵美氏、副座長は東京経済大学教員の寺中誠氏。ACE代表の岩附由香氏のほか、経済同友会、連合、難民支援協会、DPI日本会議、LGBT法連合会、部落解放同盟、ヒューマン・ライツ・ウォッチなどの関係者が参加する。企業、労働者、障害者、難民、性的少数者、被差別部落など、立場の異なる関係者を制度形成の段階から組み込む構成とした。
ACEが示したプロジェクトは、研究会での制度設計、市民社会ネットワークの設立と拡大、国際動向の調査、立法・行政への働きかけの4項目からなる。活動の基準とする「パリ原則」は、国内人権機関に対し、法律に基づく広範な人権保護・促進の権限、政府からの独立性、多元的な構成、活動に十分な予算と人員を確保するよう定めている。政府の一部局ではなく、公費で運営されながら行政から独立して判断できる仕組みが制度の中核となる。
国内人権機関の具体的な権限は国ごとに異なるが、政策や法令への勧告、人権状況の調査、人権教育、相談や申立てへの対応などを担う。裁判所による司法救済とは別に、費用や手続の負担を抑えた非司法的な救済経路を設けられる点は、企業の苦情処理制度や国の各国連絡窓口だけでは解決に至らない事案にも関係する。ただし、研究会がどの範囲の調査権や申立て処理権限を提案するかは、現段階では公表されていない。
国連のビジネスと人権作業部会は2024年の訪日調査報告書で、日本に独立した国内人権機関を設けることが、企業の人権尊重と説明責任に関する政府施策の空白を埋めると指摘した。GANHRIの認定データベースでは、2026年7月時点の国別一覧に日本が含まれておらず、パリ原則への適合性を国際的に認定された国内人権機関は確認できない。
企業活動による人権侵害では、会社内部の通報制度、行政機関、裁判所など複数の窓口が存在しても、調査主体の独立性や権限、救済への接続が不十分な場合がある。ACEのNHRI研究会が企業側の実務だけでなく、被害を受けた権利当事者の利用しやすさ、政府からの人事・財政上の独立、既存機関との役割分担をどのように法案へ落とし込むかが、今後の制度設計を判断する材料となる。
認定NPO法人ACE「国内人権機関(NHRI)設置に向けた取り組みを開始|『ビジネスと人権』の視点によるNHRI研究会を立ち上げました」
URL:https://acejapan.org/info/2026/07/356357
