1.博報堂がDE&Iを学ぶカードゲーム「さあ、なんていう?」を無償公開し、職場や学校などで利用できるようにした。
2.育休明けの同僚への言葉など、日常の場面を通じて無意識の思い込みや立場の違いを考える。
3.参加者のプライバシーやアウティングの防止にも配慮し、安全な対話のためのルールを示している。

カードゲーム「さあ、なんていう?」を公開
株式会社博報堂(東京都港区、代表取締役社長・名倉健司)は2026年10月30日、DE&Iについて考えるコミュニケーションカードゲーム「さあ、なんていう?」を無償公開した。社内プロジェクト「博報堂キャリジョ研プラス」の知見を活用し、株式会社TIEWAの協力を得て開発したもので、企業、団体、学校などでの利用を想定している。
ゲームは数人のチームで進める。参加者はカードに描かれた場面を読み取り、登場人物の立場になって相手にどのような言葉をかけるかを考える。意見を共有した後、チームとして改めて言葉を選ぶ仕組みである。
カードには「育休明け」「ギャン泣き」「ピンクは嫌い?」など、職場、友人関係、家庭で起こり得る場面が用意されている。博報堂は、カード本体、回答用シート、ゲームの説明資料を公開し、利用者が無料でダウンロードできるようにした。
アンコンシャス・バイアスを学ぶ
このゲームで扱う中心的な課題の一つが「アンコンシャス・バイアス」である。日本語では「無意識の偏見」や「無意識の思い込み」と訳される。
例えば、育児休業から復帰した人に対して、本人の希望を確認せず、責任の大きい仕事は望まないだろうと判断する場合がある。配慮する意図であっても、本人の意思や能力を確認しないまま役割を限定すれば、働く機会を狭めることにつながる可能性がある。
無意識の思い込みは、性別だけでなく、年齢、障害の有無、家族構成などにも関係する。人権上の問題となるのは、個人の属性から性格や能力、希望を一律に推測し、不利益な扱いにつなげてしまう場合である。
博報堂のカードゲームは、こうした考え方を正誤問題として学ぶのではなく、参加者同士が異なる意見を持ち寄る形式を採用している。マンガ表現を用いることで、登場人物の表情や感情を読み取りながら考えられる点も特徴となっている。
「相手の気持ちを想像する」ことの限界も理解する
相手の立場を想像することは、コミュニケーションの入口となる。ただし、想像した内容が必ず本人の希望と一致するわけではない。
例えば、同じ育児休業からの復帰であっても、仕事の負担を減らしたい人もいれば、従来どおりの職務を希望する人もいる。本人の状況を理解するためには、周囲の思い込みで判断せず、意向を確認することが必要となる。
ゲームによって得られるのは、相手の本音を正確に言い当てる能力というより、自分の判断が唯一の答えではないと気づく機会である。博報堂も、正解を競うクイズではなく、参加者が意見を交換しながら学ぶことを重視している。
同社によると、過去1~2年にわたって社内の研修や交流会などで活用し、参加者の意識変化を確認してきたという。ただし、公表資料だけでは、長期的な行動変化や差別防止効果の程度まで判断できるものではない。
アウティングや二次加害を防ぐルール
博報堂はゲームを公開するに当たり、参加者が安心して対話できるよう、実施時のルールも明示している。
主な内容は、他者の発言を否定・評価しないこと、属性を決めつけないこと、話したくない内容はパスできること、ゲーム中に聞いた話を外部に漏らさないことである。
特に注意が必要なのが「アウティング」である。これは、本人の同意なく性的指向や性自認などの情報を第三者に明かす行為を指す。本人が自ら話していない情報を、善意や会話の流れを理由に共有してしまうことも、プライバシー侵害につながり得る。
ゲームにはSOGIに関するハラスメントにつながり得る場面も含まれている。SOGIとは、性的指向と性自認を意味する言葉であり、特定の少数者だけではなく、すべての人に関係する概念である。
参加型研修では、当事者に自分の経験を説明させることを前提とせず、架空の場面について考えられる環境を整える方法もある。博報堂が示すルールは、こうした安全な対話の運営を支えるものとなっている。
学校や企業が無料で導入できる教材に
博報堂は、カード本体などの無償ダウンロードに加え、研修担当者向けの詳細な進行ガイドや解説資料も、問い合わせに応じて無償提供する。希望する企業や団体に対しては、有償の出張研修も実施するという。
企業内研修だけでなく、教職員研修や地域の学習会などでも、話し合いのきっかけとして活用できる。ただし、参加者の年齢や理解度、取り上げるテーマによって適切な進め方は異なるため、教材の説明資料と利用上の注意を確認することが前提となる。
博報堂キャリジョ研プラスは、こうした利用者向けに詳細資料を提供し、無意識の思い込みやコミュニケーションの違いを学ぶ機会を広げる。
博報堂「DE&Iについて考えるコミュニケーションカードゲーム『さあ、なんていう?』を無償公開」
URL:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001250.000008062.html
博報堂「さあ、なんていう? カード本体」
URL:https://files.hakuhodo.co.jp/files/user/2026/10/20261030_cards.pdf
博報堂「さあ、なんていう? ゲーム説明資料」
URL:https://files.hakuhodo.co.jp/files/user/2026/10/20261030_guide.pdf
外務省「ビジネスと人権に関する行動計画の改定」
URL:https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/pressit_000001_03165.html
アンコンシャス・バイアス
URL:https://jinken-news.com/glossary/unconscious-bias/
アウティング
URL:https://jinken-news.com/glossary/outing/

