1.DPI日本会議は10月15日、宮城県気仙沼市のキャンプ場と若木浜で、障害当事者が参加するユニバーサルデザイン調査を実施した。
2.車椅子利用者や視覚障害当事者3人が参加し、トイレ、炊事場、移動経路などの利用しやすさを確認した。
3.車椅子で海の近くまで移動できた経験から、自然体験への平等な参加と、当事者参画による施設整備のあり方を考える。

DPI日本会議は2026年10月15日、宮城県気仙沼市の気仙沼大島キャンプ場などで、障害当事者が参加するユニバーサルデザイン調査を実施した。調査には環境省の関係者と、車椅子利用者や視覚障害のある人を含む障害当事者3人が参加。三陸復興国立公園の一部である大島の休暇村キャンプ場と若木浜を訪れ、施設や移動経路の使いやすさを確認した。DPI日本会議は10月30日、常任委員の八木郷太さんによる現地報告を公開し、障害の有無にかかわらず自然を楽しめる環境づくりに向けた調査の成果と課題を紹介した。
国立公園のバリアフリー調査を継続
DPI日本会議は、障害者自身が社会参加や権利擁護に取り組む団体である。国立公園のバリアフリー化に関しては、2021年に当時の環境副大臣へ要望を行い、その後、環境省が実施する現地調査に協力してきた。
これまでに上高地、足摺岬、八幡平などで調査が行われ、今回は気仙沼大島キャンプ場などが対象となった。
休暇村キャンプ場では、シャワールームやトイレがあるサニタリー棟、調理を行う炊事棟を確認した。出入口の段差や流し台の高さだけでなく、手すりや点字の位置、介助者と一緒に使用する場合の空間の広さなども調べた。
これらは、建物に車椅子で入れるかどうかという単一の条件ではなく、実際の利用場面を想定した調査である。
例えば、出入口の段差が解消されていても、流し台が高すぎれば車椅子利用者には調理が難しい場合がある。手すりが設置されていても、移乗する際の身体の動きや介助者の立つ場所に合っていなければ、使いにくさが残る。
施設を利用できる状態と、安心して目的の活動を行える状態は、必ずしも同じではない。
若木浜で車椅子が海の近くまで移動
今回の調査で八木さんが特に印象に残ったと報告したのが、若木浜での体験である。
若木浜は小さな石が多い海辺で、波が寄せて引く際に石同士が擦れる音がする。調査前には、約30年前に整備された芝生エリアは車椅子で走行するのが難しいとの説明を受けていた。
しかし、実際に車椅子で移動したところ、芝生の沈み込みを抑える「土床」という仕組みによって走行できるルートがあり、海のすぐ近くまで進むことができた。
八木さんは、ほかの参加者と同じ場所で潮風を浴び、波の音を聴けたことが、取り残されることなく自然を体験できたという実感につながったと報告している。
ただし、車椅子で通行可能なルートの場所は分かりにくかったという。物理的に通れる道があっても、その存在を利用者が知らなければ、実際の利用にはつながらない。
この事例は、施設の整備だけでなく、利用できる経路を知らせる案内表示や情報提供も、アクセシビリティの一部であることを示している。
バリアフリーとユニバーサルデザインの違い
バリアフリーとは、障害のある人や高齢者などの移動や生活を妨げる障壁を取り除く考え方である。
これに対してユニバーサルデザインは、年齢や障害の有無、身体的な条件などが異なる人々も、できるだけ利用しやすい環境や製品を設計する考え方をいう。
両者は対立するものではない。既存施設の段差を解消することはバリアフリーの取組であり、初めから多様な利用者を想定して経路や設備を設計することは、ユニバーサルデザインにつながる。
障害者権利条約第30条は、障害のある人が文化的生活、レクリエーション、余暇、スポーツに平等に参加する権利を定めている。キャンプや自然観察などの余暇活動も、この権利と関係する。
自然体験への参加が難しい場合、その原因を本人の障害だけに求めるのではなく、道路や施設、情報提供などの環境にも目を向ける必要がある。
当事者参画が施設改善につながる
今回の調査後には意見交換会が開かれ、確認された課題や改善方法について話し合われた。
八木さんの報告には、環境省の関係者が、八木さんが海の近くまで行けたことを喜んでいたと知り、自分もうれしかったと語った場面も紹介されている。
施設の改善を考える際、障害当事者の参加には、設備の問題点を指摘することに加え、どのような体験が可能になると利用者の満足につながるのかを伝える役割がある。
障害者差別解消法では、行政機関や事業者に対して合理的配慮の提供が義務付けられている。ただし、今回の調査は施設による法令違反を認定するものではなく、利用環境の改善を目指して課題を把握する取組である。
DPI日本会議は、今回の調査で確認した事項を整理し、具体的な整備計画につなげていくとしている。気仙沼大島キャンプ場と若木浜での調査は、障害当事者と施設管理に関わる人々が、自然体験への参加機会を一緒に考える実践例となった。
DPI日本会議「みんなが行けるキャンプ場を目指して~気仙沼大島キャンプ場のユニバーサルデザイン調査~」
URL:https://dpi-japan.org/blog/workinggroup/traffic/kesennuma-ud-camp/

